企業誘致の時代は終わった?


【出典】明石海峡大橋。筆者撮影

地方自治体にとっては、企業立地・誘致を進めることも大事である。ただし、最近の世界やサービスを見渡すと、そうもいっていられない状況がそこにはある。

地方創生で大事なのは「仕事」である。仕事がないと、いくら「地域が好き」な若者であっても、地域を離れざるを得ない。前からわかっていたが、多くの若者の意識も同様である。

従来型の企業立地、つまり、企業誘致をすすめているところも「まだ」見られる。「企業立地プロモーション」「企業立地促進へ税減免」といった取組だ。

しかし、年々環境が厳しくなっていると聞く。
地域の出身者に営業する、つてをつかってアプローチする、誘致によって税制優遇を掲げても、なかなか厳しい。

厳しい理由

厳しいのはビジネス環境の変化が背景にある。

それは第一に、グローバル競争だ。世界各地と競争しなくてはいけない。日本の多くの企業もグローバル化しており、日本の重厚長大産業でさえ、海外シフトをすすめてきた。東南アジアなどの工場には人件費では勝てない。

第二の理由は、大企業のもとに裾野産業が広がるという20世紀型の経済モデルが崩れたことだ。

第三に、モノづくり自体の変化だ。3Dプリンターでだいたいものは作れるようになった。

こうしたことが背景になっている。今後を展望するとすると、従来通りの企業誘致にはすでに限界がある。すでにいろいろとバーゲニング合戦になっており、法人税の優遇が進みすぎていること、雇用が以前ほど増えるとは限らないことだ。すでに工場のラインはロボットが導入されており、大型店でも正社員雇用ができるとも確実とは言えない。雇用増大の可能性は期待通りということが予測できない。

さらに、すべてがうまくいっても、思惑通りにその街ではなく近隣に住んでしまう可能性がある。育機会など、お母さま方は常にウオッチしている。子育て環境がどうなのか?かなりシビアな競争がある。

さらに、インフラ整備にお金がかかる。水道、道路・・・・。そこまで投資しても途中で出ていってしまっては元も子もない。そのリスクも高まっている。

徹底的な起業支援はできないのか?

こうした中、起業支援の必要性が増している。フィンランドのように、起業教育を徹底し、「スタートアップ」と呼ばれる新しい企業に支援をしていることが非常に注目を浴びている。

政府も自治体も「仕事づくり」「稼ぐ力向上」の取り組みをはかっていきた。起業支援に取り組み自治体も数多い。

人材紹介や医療関係で有名なベンチャー企業のポート社などが日南市で面白い取り組みが注目を浴びている。日南市で今後も進めていくらしい。担当者に話を聞いたことがあるが、経理部門などは都心にある必要がないと言っている。確かに、学歴の高い女性が仕事を探していて、ホワイトカラーの仕事がなくて、というケースも意外に多い。

10年前に、IT企業の社長に地方への本社移転の可能性を聞きまわったことがあったが、なかなか厳しかった。その時からまた時代は変わっているという印象だ。

しかし、RESAS(地域経済分析システム)で見ると、「稼ぐ」産業からというのが条件。岡山大学の中村教授によるとまずは外貨を稼ぐ産業が必要だというが、それは外からお金をもってくる企業。

ある産業に関し、地域中で全国産業構成と比べて集積度合が高い場合、その地域は・・産業に特化しているという。それを「特化産業」「基盤産業」という。
特化している分だけ域内に留まらず域外へも製品・ サービスを販売している可能性が高く、そのような産業は地域社会の所得の源泉を域外から獲得できる産業ということだ。

逆に、域内を販売市場として考えている産業が「非基盤産業」という。

まとめると

域外市場産業:基盤産業
域外を主たる販売市場とした産業で、移出産業といわれ、一般に農林漁業、鉱業、製造業、宿泊業、運輸業(特に水運)が該当するが、大都市では一部のサービス業も移出産業として成立
域内市場産業:非基盤産業
域内を主たる販売市場としている産業で、建設業、小売業、対個人サービス、公共的サービス、公務、金融保険業(支店、営業所)、不動産業などが該当。上の基盤産業によって外貨が獲得され、そこから派生需要で生まれる産業である

ここで分かってもらわないといけないことは「基盤産業」を誘致、起業しないとダメだということ。稼ぐ力が大事なのだ。しかし、以下の図をみれば相当難しいことがわかる。今治市の例だと・・・・

【出典】中村良平「地方創生 地域の視点 「稼ぐ力」持つ産業伸ばせ」


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自治体の仕事を開放して起業を促進してみよ!提案

ここで西村からの提案だ。

今以上に、徹底的な規制緩和と起業支援。ベンチャー企業を支援or投資する。とはいっても、公金なので、投資は難しい。そうなるとどうするか。

それは、もっと自治体の仕事を解放してはと思うのだ。自治体の仕事をアウトソーシングして、そこで新たなサービスを開発してもらうということ。

シティプロモーションとか、地方自治体がやらなくてもいい仕事はまだまだある。広報だって広聴だってホームページ運用だって、委託したっていいし、行政は地域の孤独対策、相談などの「行政が本来やるべき仕事」に特化してもらいたいと思うのだ。

議会や利害関係者がいて難しい面もあるが、地方自治体の在り方を変えるほどの挑戦を期待したい。やるかやらないかで、10年後には相当の差がつくだろう。


西村健


人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。 慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで行政・民間の業務改革、能力開発を支援してきた。独立後、プレゼンテーション向上、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。

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