<東京大改革の今:第11回> 東京に深圳は作れないのか?


日本のモノづくりを超えたと言われる、中国の深圳(セン)。

日本の景気がいいとは言っても、日銀が国債と株式を購入して支えているだけともいえる状況(日銀のバランスシートが増加して今後のリスク)。多くの人は「東京五輪まで景気はもたない」「そのうち日本はやばい」的な観測が広がっている。

東京はというとその競争力を維持する政策があるのか、ないのかよくわからない状況だ。平成25年に東京圏国家戦略特別区域会議で計画案を作成内閣総理大臣の認定を受けたみたいなのだが、「都市再生・医療・創業・雇用・女性活躍の推進等様々な分野において、特区メニュ―の活用と新規規制改革の提案を行っております」と書いているだけで具体的なことがよくわからないのが現状だ。

小池都知事の示す「国家戦略特区による東京大改革~大手町から兜町地区における国際金融都市の実現」にしても20世紀型の都市開発に過ぎない印象だ。

そういう中、深圳はどんどん進んでいる。国家戦略特区か何かで深圳のようなモデルを東京に作ることができないのか?と思うのが今回の問題提起だ。

イノベーション都市・深セン

深圳の特徴をある勉強会で聞いたのだが、

・開業率は15%を超える
・20、30代の若い人が65%を占め、活気に満ち溢れている
・キャッシュレス決裁が(QR)、無人コンビニも
・社会インフラまでIT化(無人バス、ドローンの活用)
・バスは100%電気自動車
・大手企業の本社
・企業のオフィスの一部は観光案内所なども活用
・すぐ製品化、小ロットで生産できる点が日本と違う
・シリコンバレーと違って製造業に優れる

といった特徴がある。

そもそも深圳とはどんな都市?

この映像を見れば深圳の基礎がわかる。

基本的な情報を把握しよう。

・香港から電車で約 40 分
・戸籍人口 1,130 万人
・域内総生産2,940 億米ドル(約 31.8 兆円)
・経済成長率9%
・経緯:1980 年に改革開放の象徴として経済特区に指定⇒安価な人件費等を求めて日本などの製造業が生産拠点
・企業:BYD(電気自動車)、DJI(ドローン)、ファーウェイ(IT)、テンセント(インターネットサービス)等の中国経済をけん引するグローバル企業の本社

という状況だ。

街並みを体験してみよう。

誰もが驚くのはその熱気と活気。

都会にもかかわらず、東京のような冷たい隣人ではなく、カフェで隣に座った人ともコミュニケーションも取り合うそうだ。街中で支払いに困っていると誰かが助けてくれる。全体として「支えあう」文化になっているそうだ。

一攫千金を夢見てやっている若者、敗者には悲惨な結末があるそうだが、未来への希望が皆を駆動する。モチベーションが活気を生む、いい流れがそこにあるのだそうだ。

成功の理由と暗い影

やはり「アジアのシリコンバレー」と呼ばれるだけあって、もうとんでもないレベルに到達している。

深圳市政府もフィンランドのヘルシンキ市との友好提携に基づくデザインパークの共同設置、ドイツとの連携によるエンジニア育成のための技術大学の開校、香港貿易発展局との連携による創業支援施設の共同設置、理工系分野を中心に日本の大学生との交流など行っている。

若者が集まる「実験都市」といったところか。それを行政が支える構造。
その成功の背景としては
研究機関の集積、人材の集積とチャレンジする文化、サプライチェーンが集積・試作品製作がしやすいビジネス環境、都市機能が言われている。

他方、エレベーター事故や土地の陥没などの問題も起きていることも事実であるが、負の遺産に目を向けることよりも前を向くということでそれほどまでに大問題にはなっていない。

【出典】新宿、筆者撮影

真の意味の国家戦略特区を!?

そのうち深圳に行き、現場レポートをするつもりだが、経済都市東京は今後どうするのだろうか。このまま指をくわえたままにするのだろうか。

規制緩和をして、もっとエッジのきいた「国家戦略特区」を東京に作れないのか。深圳には今の段階では追い付けないにしても、違う分野で勝負できるようにしてもらいたいものだ。支持率や熱気を失った小池都知事の巻き返し策にもなるのではないか。

大田区は日本の経済成長を支えた工場があったわけで、IoTとものづくり特区として可能性はある。
中野区や練馬区は日本のアニメーションの聖地やクリエーターが揃うわけで、おたくクリエイティブシティとして世界に撃って出れる。

その他の自治体だて可能性がないわけではない。まだまだ可能性はある。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、事業創造大学院大学 国際公共政策研究所 研究員・ディレクター、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

西村健の記事一覧