【2020年の私たちの病院選び】第3回 医療ホームページの裏側に隠されている運営者の思惑



物事には必ず「思惑」があるようです。
今回は「医療ホームページの裏側に隠されている運営者の思惑」についてお話しします。

まずは、ホームページによって医療情報が発信され始めた頃の「運営者の思惑」を振り返ってみましょう。

「病気の重大さを知って欲しい」「一刻も早く検査を受けて、適切な治療を受けて欲しい」

多くの医師の一途な想いで始まったのがホームページによる医療情報発信です。
多くの医師による行動により、副次的な効果として「治療への好影響、優良人材の確保、そして集患につながること」が認知されはじめ、ホームページ制作業者以外のさまざまな業界が医療ホームページのサービス提供を始めることになりました。
そのおかげで「医療ホームページ」は発展してきました。
一方で、患者と家族にとっては、幸せな状況だとは言い切れないこともでてきた・・・。

というお話しをしました。

では、医療ホームページがどのように枝分かれして発展していったのか?を見てみましょう。
そこには、医療ホームページの裏側に隠されている運営者の思惑が見えてくることがあります。

今回は、医療ホームページを次の3タイプに分類してご紹介します。
(1)事務案内型ホームページ
(2)病気・症状・治療法の解説型ホームページ
 (タイプA)医療機関や医療従事者による発信
 (タイプB)研究者による発信
 (タイプC)医薬関連サービスを提供する企業による発信
(3)販売促進型(集患型)ホームページ

(1)事務案内型ホームページ

多くの病院ホームページが、このタイプです。
簡単に言うと「病院の案内・説明をする、受付・事務スタッフさんの代わりとなる」ホームページです。

病院のホームページをよく見てみますと、組織説明、診療科紹介、受診方法、医療設備、実績、入院・お見舞い等の案内、事務手続き方法の説明、地域医療連携への取り組み、地域での医療連携といった項目が並んでいます。これらは、病院規模の大小に関わらず、掲載されている項目が「ほぼ同じ」です。
誤解を恐れずに言えば「医療施設の利用の手引きがホームページの形で提供されているもの」です。

内容的には、平成19年4月1日より施行された改正医療法により創設された医療機能情報提供制度(医療情報ネット)という都道府県の医療機関情報を、施設それぞれが深堀りしたようなもので、言葉の表現は柔らかいですが単語・内容はカタイものとなっていることが多いです。

病院側としては、患者と家族が「自分で読んで理解してくれる」ので、事務・案内業務の効率化が期待できます。パンフレットと同様に事務スタッフの方が制作の主体となって進めることが可能なので、このタイプの情報発信はどんどん充実していった歴史があります。

また、ホームページであれば、手軽にいつでも情報を知ることが可能になりますので、患者や家族にとってもメリットは大きいです。「便利」で「親切」な病院だと感じられることでしょう。

ですから、「親切」で「便利」で「いつでも見ることができる」ネット上の「利用の手引き」を作ることが運営者の目的となります。
ですから、医療機関を「選ぶ」というよりも、利用の前後に使い方を「調べる」という類のホームページになります。

問題があるとすれば、地方の個人クリニックです。

病院と横並びで考えて「事務・案内情報を中心に掲載している」ことが散見されますが、そもそも規模が小さい医療施設には事務・案内情報がそれほどありません。
患者や家族が知りたい「治療等の医療情報」がなければ、治療の選択肢の少ない医療施設としか見えず「患者や家族が選ぶ理由が乏しい」と思われても仕方がありません。

昨今は「いきなり病院に行かずに、まずは地域のかかりつけ医に行きましょう!」と奨めたいようですが、ネットで調べてみたら、きちんと診てくれるか心配になったというホームページでは、患者も家族も不安になってしまうことがあるかもしれません。
地域の市民にとって身近な存在として地域医療を支えているのですから、その取り組みを理解していただき、かかりつけ医として選ばれることは、地域医療全体にとっても大事なことだと思います。

(2)病気・症状・治療法の解説型ホームページ

そもそも、「病気の重大さを知って欲しい」「一刻も早く検査を受けて、適切な治療を受けて欲しい」という、多くの医師の一途な想いがホームページの原点ですから、基本となるタイプかと思います。

発信している運営者によって3つに分かれます。

(タイプA)医療機関や医療従事者による発信

ネット創生期からあるタイプのホームページです。
とくに、先進的な医療機器・医薬品を利用する治療、保険適用外の自由診療の分野では、ますます活発な情報発信が行われています。
しかし、後述するタイプCのホームページが増えていることもあって、とくに保険診療分野では、医療施設からの情報発信が活発でない印象があります。全体としては存在感が小さくなってきているのは、少し残念な気がします。

(タイプB)研究者による発信

大学医学部、研究機関で行っている研究内容や資料を見ることができます。
私も、ホームページの制作をお手伝いしている分野ですが、患者と家族としては、内容を理解するのは難しそうだと感じています。

(タイプC)医薬関連サービスを提供する企業による発信

病名、症状名、治療名等の語呂合わせで親しみやすいサイト名も多く、モダンでわかりやすい(お金のかかった)ホームページという印象です。検索すると広告なども多数表示されています。利用している市民も多いのではないかと思います。
ホームページを運営している会社を見てみると(多くは運営会社の紹介ページがあります)、病気・症状・治療法に関係がある「医薬関連サービスを提供する企業」によって運営されていたりします。悪い表現かもしれませんが「マーケット形成のためのホームページ」という側面もあることを感じます。
また、関連している病気・症状・治療法についての解説に医師が登場してくることが少なくないので、市民としては信憑性が高い情報として認識するのではないかと思います。
しかし、私たち市民としては注意も必要です。
医療広告ガイドラインP3「2 実質的に広告と判断されるもの」には、以下のように記載されていることから、医師による解説を読む際には、市民としてもしっかりと判断することが必要だということがわかります。

ウ 治療法等を紹介する書籍、冊子及びウェブサイトの形態をとっているが、特定(複数の場合も含む。)の病院等の名称が記載されていたり、電話番号やウェブサイトのアドレスが記載されていることで、一般人が容易に当該病院等を特定できる等のような場合には、実質的に上記1に掲げた①及び②の要件をいずれも満たす場合には、広告に該当するものとして取り扱うことが適当である。

(3)販売促進型(集患型)ホームページ

先進的な医療機器・医薬品を利用する治療、保険適用外の自由診療の分野によく見られるホームページです。
基本的な構成は、以下の通りです。

A)課題(症状)と解決方法(治療法)を詳しく解説する
B)ライバルとの違い、優位性を詳しく解説する
C)実績を(術前術後写真などで)詳しくお伝えする

医療サービスを受ける私たちとしても知りたいことばかりですね。

医療機関が「市民に選ばれるために」かなり詳細な情報を提供しており、私たち市民にとっては「医療機関を選ぶための情報」が豊富にあり、その医療サービスを積極的に受けてみようと考えるきっかけにもなります。

一方で、インターネットによって情報が「容易に」得ることができて「手軽に」医療サービスを受けるきっかけになることで、治療トラブルも増えてきたことが、今回の医療広告規制につながったとも言えます。

しかし・・・・・
過度な規制は、患者の「知る権利」を阻害することになります。

そのため、ホームページに関しては「一定の条件」においては、これまで通りの情報発信が許可されています。
情報を発信する医療機関は「規制が始まった!大変だ!」と萎縮することなく、しっかりと情報発信に努めることが、患者と家族のためにもなるという側面を忘れてはならないと考えます。

自由診療のホームページに見習うべき点がたくさんある!

販売促進型(集患型)ホームページには課題も見受けられますが、保険診療を中心に行っている病院や個人クリニックは、見習うべき点がたくさんあると考えています。

私自身は都市部の医療施設を中心に仕事をしてきましたが、支持の高い医療施設の医師・スタッフほど「選ばれ続けること」に一生懸命です。選ばれて、治療を受けて頂くための努力も医療の一部なのかもしれません。

稀に「宣伝(情報発信)が上手いだけでしょ?いい医療を提供しているか疑問だね!」などという20世紀を生きているような医療施設の方がおみえでしたが、「良質な医療情報を発信し続ける」ということは、結局は「提供する医療そのものの質を維持・向上し続けること」だと気が付いてほしいものだと思うことがありました。

今回の医療広告ガイドラインの改正で「誇大」「虚偽」の情報発信をさせないための規制が強化されています。とくにインターネット上の広告にも厳しいチェックがされる体制となっています。

情報発信を20年お手伝いしている私が「誇大?」「虚偽?」と感じるのは、どのような時かを今後お話ししていければと思います。


山内真一
山内真一

Webディレクター/コト・デザイナー
1998年テットコム創業。医療・保育・健康・士業等の制約が多い業界を編集し、新しい市場・顧客・人材を創り出す。また、地元のエリアリノベーション事業、茶畑・企業用地・中山間地での自転車レースイベント開催等のサイクルスポーツ推進事業も手がけている。

山内真一の記事一覧