「パブリックリレーションズ~プロパガンダを打破するパブリックリレーションズとは」レポート


日本政策学校インターンの渡邉萌捺です。
ユースデモクラシー推進機構さんによる定例勉強会に参加させていただきました。

主催団体公式サイト☞ http://youth-democracy.org/

第19回となる今回のテーマは、

「パブリックリレーションズ」
プロパガンダを打破するパブリックリレーションズとは
~自由主義と民主主義に必要不可欠なPRの本質~

日本のPRをけん引してきた㈱井之上パブリックリレーションズからPRのプロ、尾上執行役員にパブリックリレーションズの本質についてレクチャーしていただきました。

㈱井之上パブリックリレーションズ執行役員 尾上 玲円奈さん

以下講義内容です。

PRとは

PRという言葉は、日本でも日常的に使われる言葉ですが、誤用されている場合が多いです。広告・宣伝的なものと同じように扱われることがほとんどですが、実際は全く違うものなんです。

PR(Public Relations)とは、一般社会全体との繋がり・関係性を考える、その考え方であり、そういったスキームのことをパブリックリレーションズと言います。

個人や組織体が目標や目的を達成するために行う活動のことを指し、【倫理観】に支えられた【双方向性コミュニケーション】と【自己修正】をベースとしたリレーション活動のことであります。

【双方向性コミュニケーション】というのは、時代が表されていますね。
昔は一方的で、相手側からやり取りが返ってくるなんてことは想定していなかったわけですが、いまではオンラインが発達して、双方向でコミュニケーションができ、むしろそれが主流になりつつある。一個人も、すごく影響力を持つ時代になってきています。

たとえば、SNSやソーシャルメディアを通して「自社は誤解されているな」「自社のサービスは改善すべきところがあるな」といったことが組織内で明るみになり、それを取り入れて、自分達が変わっていこうとする一連の活動、また社会とのつながりの中でどうしていくかを考えること全体がパブリックリレーションズです。
ターゲット・ステークホルダーとの関係構築、その活動全体を指すということですね。

今回のタイトルにある【プロパガンダ】とは、ここから【倫理観】を抜いたものです。
パブリックリレーションズとやり口は全く同じで、メディアを使って喧伝するなどの手法・スキームのことです。特定の考えを押し付けるような宣伝など、特に政治的意図を持つものを指します。

NHKで記者として働いていた時、「メディアの人は情報の出し手でもあるが、受け手でもあり、その反対側にいる人たちがまさにPRの人なんだ」ということを初めて実感しました。
私は記者を辞めて、現在PRのサイドにいますが、これは検事をやめて弁護士をしているような感覚でもありますね。

キャリアとしては、これから日本で増えていってほしいと思うパターンです。OECD加盟国であればどこでもそうですし、発展途上国の人達でも、コミュニケーションを生業にしている方たちは私のように「こちら側のサイドにいたけど、あちら側のサイドにいく」といったことは日常茶飯事だと思います。

PRが誤用されやすいワケ

やはり「PR会社のコアコンピタンスはメディアリレーションズだから」ということですね。
広告代理店の中にPR部門がある、といったことは日本ではまだまだ多いです。広告のビジネスの方が先行していて「大きなビジネスをやっている」という強いイメージからだと思います。

しかし広告というのは、PRから位置付けた時のほんの一部でしかありません。PRのスコープはもっと広いものです。
たとえば、首相の演説原稿を作成したり、企業の謝罪会見での謝罪方法をご指南したりするのも我々の仕事です。

「IR広報」なんてワードを耳にすることがありますが、広報=PRだとすると、IRが先にくるのはかなり違和感があります。こういったものが英語で書いてあったりすると、海外の方からすると「なにを言っているんだ?」という感覚になるので要注意ですね。

〇〇リレーションズというものは、パブリックリレーションズという大きな傘の中の1つの概念に過ぎないのです。

【出典】当日風景、筆者撮影

PR事例

エンプロイーリレーションズ
従業員たちとの関係、その家族との関係をどう結んでいくか、というものです。
最近増えているM&Aで言うと、マージされた側の社員は発表されるまで全く知らない場合もあります。すると、

マージされた側
「社長はなにを考えているんだろう?」
「この会社もうダメになるんじゃないか?」
「俺の出世はここで止まるんじゃないか?」

転職

買収した側
買収した時点の価値を維持できない!

案件がスポイル

なんてことが起こります。
そういったことに注意して、アフターMAをあらかじめ決めてきちんと実行していきます。

領土・領有権問題
日本国民の立場で言えば「竹島も尖閣諸島も日本固有の領土だ」という意識ですが、韓国・中国は世界に対してどういったコミュニケーションをしているでしょうか。もちろん敵方の日本に対し「これは韓国・中国固有の領土を日本が盗っているんだ」という話をしますが、彼らがスコープにしているのは日本だけではないんです。

例えば中国政府は、尖閣諸島の話をパリ/ロンドン/ニューヨーク/ワシントンで記者会見を開いて説明しています。日本政府は、なにか有事の際に1度くらいは記者会見を行いますが、定例会見で毎度話すようなことはありません。

パリの人達からすると「尖閣諸島が中国のものか日本のものか」なんて興味がないと思います。しかし、耳に入ってくる情報として、中国政府の「日本が盗んで勝手に支配している」という話を何度も聞けば、日本人に出会った時に「尖閣諸島って日本が盗っているんでしょ?なんで返さないの?」なんてことになってしまうんです。

この事例は「尖閣諸島は中国の固有の領土だ」と信じている人からすると、PRなのかもしれませんが、我々の立場からすれば明らかなプロパガンダであります。

しかし、コミュニケーションの力では圧倒的に負けているというのが日本の状況です。戦争で決着をつけようとは中々ならない現代、情報戦で負けているというのは非常に由々しき事態だと、専門家として私は思います。

アメリカ大統領選 イメージ戦略
トランプさんとヒラリーさんは、実際に並ぶと相当な身長差がありますが、同じくらいにみえる写真があります。
これは、ヒラリーさんがトランプさんと同じポディアム(演台)を使うと首から上ほどしか出ないので、かなりカッコ悪いし大統領としてふさわしくないんじゃないかということで、ヒラリー陣営がポディアムの足を切って特注したんです。

さらに、健康問題が心配されていたヒラリーさんは、青みがかった背景のなか真っ赤なスーツで登場しました。一方トランプさんは、背景と同系色である紺色のスーツに青いネクタイでした。これは完全にイメージ戦略をミスっているな、という印象でしたね。ということで、この時の演説会はヒラリーさんが勝ったんじゃないかとアメリカメディアで報道されていました。

サラリーマン領収書問題
実は、アンケートによると日本のサラリーマンは
「平均して生涯52日間を丸々経費精算につかっている」
「そのうち12日間は、のり付けだけをしている」計算になるんですね(笑)

OECD加盟国のほとんどが電子化して保存できていれば良いとされている領収書ですが、日本では未だに「7年間の原本保存義務」があります。

ある上場企業の例だと、原本を保存するにあたり
・人件費6000億円
・管理費3000億円
・監査費1000億円
計1兆円のムダが試算されました。

そこで、規制緩和の実現に特化したメディアリレーションズを行いました。
・メディアの方々にインタビューしていただく
・「日本は規制があるから生産性が低い」というプレスリリース
・競合会社と協力した記者会見(コンペティターリレーションズ)
・個別取材
などを通して、計91本もの記事を出していただくことができました。

その他にも
・お客様に実際の利点を話していただく カスタマーイベント(リレーションズ)
・業界中でどうしていくかという インダストリーリレーションズ
・一見関係ないけど恩恵を受ける所にも話を通す アソシエーションリレーションズ
・財務省に働きかける ガバメントリレーションズ
など「規制緩和をしないから生産性が上がらない」という世論をつくりつつ、どの角度からも後ろ指を指されないようなスキームを目指し、実際に領収書は電子化されました。
このプレゼンテーションは、日本PR協会で一昨年グランプリをいただいた案件でした。

終わりに

講義後の質問タイムでは多くの参加者が相談をしていました。
模範的な事例だけでなく、それぞれの置かれている現状に合わせた具体的なソリューションをアドバイスいただき、その場に来た価値があったと実感できる勉強会だったと思います。

ここに出ている他にも、たくさんの事例をわかりやすく紹介していただきましたので、参加できなかった方は是非、後日配信される動画をチェックしてみてください。
配信される動画では、質問の内容・返答も見ることができるのでオススメです!

☟動画配信はこちらから☟


政策 太郎
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