東京大改革の今・第1回 都政改革の成果を君は見たか?~大事なのはスピードではない


「小池は終わった」「小池都政の成果は出ていない」との批判がかまびすしい。公明党が連携解消の結論先送りとの報道もあったが、その後報道でどうなったのかを聞かない。どうやら、政局好きな大手メディアの関心は薄れてしまったようだ。

東京都は予算規模で13兆円、国家で言うとスウェーデンと同レベルであるにも関わらず、あまりニュースで見かけない。情報を得る機会があっても何が行われているのかがわからない。結果、イメージで判断してしまうというサイクルに陥ってしまうなのが大多数の都民であろう。

実際のところ都政改革はどうなっているのか。

東京都では都政改革本部を中心に、28年度は自律改革、29年度は見える化改革が進んでいる。

自律改革の成果はけっこうある

28年度各部局は「自律改革」を進めてきた。外部から言われるより自分たちでまずやってみようという基本アプローチである。平成29年5月の段階の都政改革本部での報告によると486取組事項がリストアップされ、現在200近い内容がすでに「実施済」である(【注】取組事項は複数の内容から構成)。
http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/kaigi09/jiritsukaikaku/02_sankoushiryou.pdf

具体的に言うと、

○図表やイラストを用いた分かりやすい予算発表資料に
○都における電子マネー収納の導入
○取組姿勢にばらつきがあった外国人や障害者等に配慮した案内表示・職員対応に
○レク資料に微細なミスがあった場合、資料の作り直しを行うケースをやめた
○同席する職員の数が多く、超過勤務につながっていた幹部レクに要する時間の見直し (参加者を厳選することで)
○昼休み時間帯は職員が不在となることもあるので受付窓口を有する職場においては休憩時間の分散化
○自律点検・改革提案ボックス (データベース)の設置・お客さまの声収集フォームの新設
○若手職員の意見を施策形成・業務運営に反映
○特に情報公開では開示請求が多い案件について、請求前に積極的に開示し、情報を提供
○公文書について非開示又は一部開示とする場合には、条例を厳格に適用し、黒塗りを最小限とするよう徹底、それによって議事録の非公開割合が29.6%(28年4月)から15.0%(29年4月)

等々、数え上げればたくさんある。

プロから見ればどうかと思うものもあるものの、短期間に、都民目線、風通しのいい組織になったことは言うまでもない。しかも、実行中のものはこれよりも数多く、内容もしっかりしたものである。

その中でも、「環境局」は成果を出した。

【環境局の取組】事業・制度・働き方の見直し
◆所管の部署において、事業の必要性等を再点検
◆政策課題検討チームにおいて、組織横断的に事業を検証
◆働き方についても幅広い職員の提案を受け、検討

【環境局の見直しのポイント】
①事務費等について単純に前年同額とするのではなく、積算内容や 執行状況を再点検
②関連・類似の事業は、相乗効果の期待できる事業に集約・一本化
③前例踏襲や慣例・慣行を改め、 都民ファーストの都政を実現

【環境局の見直しの結果】
○廃止した既存事業 24事業 約16億円 (前年度環境局総事業費の3.2%)
○事業費を5百万円以上削減した事業 26事業(約46億円)
○前年同月比で約2割の超勤を縮減(10月)
http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/kaigi07/03_jiritsukaikaku.pdf

なんと、これだけの効果を出してしまった。つまり、政権交代をすればこうした効果が得られるということだ。よほどこれまでの都知事が見直しをしないできたか、前例踏襲で進めてきたのかの証左ともいえる。

大事なのは改革のスピードではない、着実性

各局の取組の詳細は「改革事例集」に詳しい。
http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/kaigi09/jiritsukaikaku/03_jireishuu.pdf
また、小池都政は、「2020年に向けた実行プラン」事業実施状況レビュー結果として進行管理をしている。
http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/actionplan_for_2020/review.pdf
こうした事実を見ないで、「改革のスピードが遅い」という「有識者」もいたりする。

彼ら・彼女らに言っておこう。

改革の本質を理解しているのか、と。

利用者数人の市民バス補助金を削減するのがいかに大変なのか、と。

三重県での行政改革以来、意識の高い・改革の志を持った首長が現れては、既得権益や事業に切り込み、先進とされる経営手法を振りかざして立場を終われる結果となった(次の選挙で敗北する)ケースがいかに多かったか、と。

そもそも行政の改革は、民間企業のように「ばっさり(事業費を)切ったり」とはしにくいものなのだ。ある事業を切る、事業費を削減すれば「多数派の専制」「多数者の横暴」との批判を受ける。しかも、そうした事業の方向性は、首長選挙や議会選挙で争点にはならない。

事業を廃止するにせよ、相手(都民、団体)があるため、まずは相手に理解、客観的な「事実」を示して納得していただく必要がある。これまでの恩恵・利益を今後、我慢してもらうためにも。

利用者の声や気持ち、頑張ってきた(or得をしてきた)関係者の事情や感情を取り扱わなければならない結構しんどい作業である。そのため、大事なのはスピードではなく、多面的に分析し、費用対効果や社会への貢献度などの結果を明らかにして、じっくり対話し、意思決定すること、そして、改革案を着実に実行することなのだ。

改革は時間をかけてやらないと反発や弊害を引き起こす。物事はプラスがあればマイナスもある。いかに不公平とも外部からいえるような、一部の人だけに恩恵が偏っている事業は除くと、それなりに意味や時代的背景があってのことも多い。

だからこそ、オープンにすることが前提である。情報公開を推進していくのは、その意味で間違っていない。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、オムニメディア代表、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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