表面的ではない日本の良さを、映像で伝えたい。イギリス人映画監督 James Latimerさんインタビュー


日本で活動するイギリス・ロンドン出身の映像作家のJames Latimerさんにインタビューをさせていただきました。Jamesさんは7年前に来日し、短編映画やCM、ミュージックビデオなどをこれまで日本で撮影されてきました。親子の絆をテーマにした短編映画「TWO」は複数の海外の映画祭でも上映されるなど、注目を集めています。また、現在はデジタルハリウッド大学院で社会人大学生としても学ばれています。今回は、ご自身の視点から日本の魅力を表現する数々の映像作品を作り上げてきたJamesさんに、日本の魅力をどう海外に伝えるべきか、お話を伺いました。

James Latimer監督 公式Webサイト
https://jemleykenato.com/

TWO – Trailer

TWO – Trailer from James Latimer on Vimeo.

※動画埋め込み

川島
本日はよろしくお願いします。
これまで日本で、どのような作品に携われてきたんですか?

James
私はもともと日本文化に興味があり、当初は日本文学を大学院で勉強しようと考え来日しました。映像やストーリーを組み立てることにこだわりがあり、映画監督を目指していました。これまでに5本の短編映画を撮影してきました。また、日本を舞台にした政府のCMやミュージックビデオの撮影にも携わっています。その他、写真、シナリオなど映像に関わる様々な仕事をしています。

現在、最新作である短編映画「TWO」がビバリーヒルズ国際映画祭に出品されたことをきっかけに、長編映画撮影に向けても動いている状況です。

「TWO」は日本の親子の話を描いたヒューマンドラマです。実は以前から周囲の人たちに「外国人なのに日本をよく知っているね」と言われることが多かったのですが、自分が外国人の視点で日本の親子を作品として描けたら面白いのではないかと考えるようになり、本作の制作につながりました。

川島
なるほど。私も「TWO」を拝見しました。日本の家庭や親子愛がとてもリアルに描かれていて感動したのはもちろん、本当に「よくこんなに日本のことを深く理解されているな」と驚きました。ビバリーヒルズ映画祭に出品されたとのことですが、海外の方々の反応はいかがでしたか。

James
映画祭に出品された唯一の日本の作品が私の作品ということで戸惑いもあったのですが、現地での反応は良かったです。制作時より言葉が通じない人にも、親子の絆や愛情を理解してもらえるような映像にしようと心がけていたのですが、その意図もきちんと伝わったようで安心しました。


そして、映像のお仕事をされながら、デジタルハリウッド大学院で学ばれているんですよね。

James
日本に来て映像を制作していく中で、映画監督として、芸術的な観点だけでなく、プロデュースの視点も学びたいと考えるようになり、入学しました。
ビジネス系の授業が充実していたのはもちろん、新しいものを受け入れる柔軟な環境に身を置けたことは本当に良かったです、大学院内には、新しいテクノロジーや、リリースされたばかりの最新のデバイス、コンテンツに真っ先にトライしている学生がたくさんいて、そういう姿勢に刺激を受け、新しいものを柔軟に受け入れる姿勢が未来のビジネスチャンスにつながっていくのだと感じていました。
あと実は、映像の仕事を始めたのは大学を卒業して数年経ってからで、スタートが遅かったんです。これ以上遅れを取りたくないと、効率的に勉強ができる場所を探していました。

川島
映像の世界では、遅いスタートだったんですね。

James
映像制作を始めるまでの様々な経験を通して、一番大切なのは美しい映像を撮影することではなく、違う視点で物事を見て、自分にしか撮れない映像を撮ることだと気づいたんです。
だからこのことを強みと自信にして、辛い時も前に進み続けることができました。

川島
日本のことを深く理解し、日本を舞台にご自身の視点で描くからこそ、Jamesさんらしい「自分にしか撮れない」作品になっているんですね。

James
日本のことをよく知らない外国人クリエイターが作る映像は、例えばお寺をかっこよく撮影するだけだったり、表面的な表現であることが多いんです。一見すると映像としてのクオリティは高いけれど、文化的な背景など日本の良さを深いところまで表現できていないんです。
私は日本の良さは可視化されにくいものだと思っています。例えばストレートにモノを言わずに間を大切にするところ、おもてなしや礼儀作法、思いやりの精神…このような日本独特の空気感や雰囲気は日本の良さで、周りの人々を幸せにするものだと私は思っています。目に見えにくいものだからこそ、このような日本の良さを映像を通して表現していきたいですね。

川島
なるほど。確かに、見えにくいからこそ映像で表現する、というのは素敵ですね。そのような空気感、雰囲気だったり、他にも見えづらいものも含めて、日本独自の文化や良さを、どうやって海外に伝えたら良いと思いますか。

James
海外の人たちに合わせすぎず、日本の良さをそのままに発信してほしいと思っています。私は日本のゲームとアニメが好きですが、一番特徴的なところは海外作品にはない独特のストーリー構成だと思っています。完璧ではない頑張る主人公がみんなで困難を乗り越えるというストーリーは多いですが、そういう主人公に自分の人生に重ねて共感し、明日に希望を持って頑張ろうと思えるからこそ、海外でも人気があるのだと思います。ハリウッド映画にもあまりそういう要素はないですよね。他にもそのような、そういうストーリーに触れられたり、日本ならでは文化を知れたり、日本のコンテンツ独自の良さがあるのですが、実は海外で売り出す際に海外用にシーンをカットされたりすることもあります。
例えばわかりやすい例ですと、私が好きな日本のゲームの1つである「龍が如く」の海外版では、以前、日本版にはあるはずのキャバクラやカラオケのシーンがカットされていました。様々な事情があり、「海外の人に馴染みがない文化だから」と判断されたのかもしれません。ただ、外国人としては、自分の国にない文化で日本にしか存在しないものだからこそ興味があるんです。日本人が思う以上に、外国人は日本の作品やその日本らしさを求めていますので、ぜひ日本の良さを殺さずに、海外に積極的に発信してほしいと思っています。

川島
なるほど。日本人でも気づいていないかもしれないところに、海外の方は共感してくれているんですね。
最後に、ジェームズさんは今後、どんな映像を作っていきたいか、教えてください。

James
これから撮影したいと思っている作品は、日本の社会になかなか馴染めない外国人と日本人の話です。日本への愛情がありながらそれぞれ違う苦労をし、国際化する日本社会で日本人と外国人の間でお互いに学び合えること、そして絆を築く方法が何かを表現していきたい。
背景にある可視化されにくい空気感を映像を通して醸し出し、日本社会は何を改善すべきか、日本にいる外国人として何をすべきか、双方に対して映像を通して訴えていきたいです。
どんな映像を制作する時でも、「自分にしか撮れない映像を撮る」という自分の軸を大切にして、従来の表面的な外国人向けの日本の映像とは一線を画す作品を世の中に送り出していきたいです。

川島
次回作も楽しみにしています。
ジェームズさん、本日は本当にありがとうございました!

James
ありがとうございました!


川島京子
川島京子


1989年東京都生まれ。デジタルハリウッド大学院メディアサイエンス研究所リサーチアソシエイト。Creative Smash株式会社代表取締役。2008年、明治大学在学中に インターネット上の仮想世界「Second Life」にて音楽ユニットをプロデュースし、企業とタイアップしたバーチャルイベントを実施。メジャー音楽レーベルに勤務を経て、24歳で独立。国内最大級の3Dプリンタメディア等ものづくりやクリエイティブに関わる事業を展開。

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