フィンテック最前線・第5回 ブロックチェーンと仮想通貨


本稿では、今まで、仮想通貨に対して悲観的であり続ける一方、ブロックチェーン技術に関しては楽観的であった。複数の読者からは、これは矛盾しているのではないかとの指摘を受けたので、この部分を明確にしたい。

ブロックチェーン技術とは、分散型台帳技術と定義されている。これは、商取引・価値・過程といった記録を、国、企業や団体など特定の主体が台帳として記録するのではなく、その情報を複数の主体が相互に共有するため、それらの記録が証拠として採用されるというものである。

端的に言えば、誰か一人が情報を管理しているものではなく、それに利害を有する複数の人がお互いにその情報を確認できる結果、誰かが管理してなくても、お互いにその情報を正とできるものとなる。

例えば、日本において、年金情報は行政が保有しているが、年金記録がなくなったり、改ざんされたりするのは、一主体が中央集権的(この言葉を仮想通貨関連の人は敵対用語として好んで使う)に管理しているからこそ起きるのである。しかし、ブロックチェーン技術を使うということは、こういったデータ(個人情報と分離は可能)が衆人環視のもとで、お互いが監視することで、このような喪失も改ざんも行うのが難しくなるというものだ。

また、この記録を管理することに対しては、現在に至るまで過去の情報が連鎖し累積されているので、これを改ざんしようとする場合は、衆人環視のもとで、情報を変更しなければならない。各地に事務所を展開し、そのデータを管理するための人員は不要になる。また無用な郵便物まで費用をかけて送る必要もないという、小さな政府には極めて有用な技術だ。なお、一つ一つの情報(ブロック)が鎖(チェーン)のように繋がっているので、ブロックチェーン技術といわれる。

ブロックチェーン技術を使うことで、医療データ(個人情報と遮断は可能)や通院などの履歴を提出した人に見られるようにすることも可能であるし、重複を避けることも可能であるから、社会保障費用を抑制できる。また、国民が納税した税金が果たして政府を通じて一体何にいくらどう使われたかも、各納税者単位で把握することすら可能である。これによる行政コストの大幅な削減や効率化のほどは知れない。透明性確保による、資金用途への抑制も期待できる。

一方で、仮想通貨は、このブロックチェーン技術のうち、どのウォレットからどのウォレットに動いたかということを確認できる機能を有している。これはビットコインにおいて確立され、イーサリアムのERC20というトランザクション(約定)の連鎖を確認できる技術で拡大したと言ってよい。

確かに仮想通貨にブロックチェーン技術は使われている。しかし、資金調達をしようという発行体(中央集権的)が存在することが、昨今の仮想通貨における問題だ。約定の連鎖こそ、非中央集権的に衆人環視できるものの、そもそも最初に発行する主体は不透明である場合もある。財務情報すら公開されていない。

2018年6月末時点で、日本の仮想通貨業者において取り扱いされている仮想通貨は、①取引所自らが発光体のトークン(COMSA、Qash)、②リップル社が発行体(?)、そして、リップル社を始め複数社での団体で約定連鎖を管理するXRPを除くと、非中央集権的なトークンが多数であるようだ。

特定の発行体の資金調達目的の手段としてICOやトークンセールスが数多くなされ、年始から「億り人」の膨張した資産を吸い上げていたが、99.99%は失墜した。

繰り返しになるが、仮想通貨は確かに約定の連鎖というブロックチェーン技術を使っているものの、本源的価値はそこに存在しない。では、仮想通貨の本源的価値は何であるのか?私はそれを説明できない。株も債券も配当や利息があるのでそれを理由にできる。しかし、仮想通貨は、説明できない。匿名性?であろうか?匿名性は日々成長する価値であると説明しがたい。

将来の夢物語で「値上がりするかも」という期待値だけとなると、単なる泡沫がその価値の根源になってしまう。

真摯にブロックチェーン技術を研究し実装する健全な土壌を維持するためにも、できれば仮想通貨とは本当に遮断して欲しい。先の年金情報、医療情報、納税の行方情報などは、ブロックチェーン技術を適用するには非常に効率的な分野で、怪しい仮想通貨と混在されてしまうと真っ当な試みすらも成立しなくなってしまう。


鬼澤礼志
鬼澤礼志


明治大学卒業後、英National Westminster銀行(現RBS)にて当時最先端の金融工学に基づくトレーディングにてメッセンジャーとしてキャリアを始める。以降Swiss Bank Corporation, UBS, Deutsche Bank, Credit SuisseにてLondon, Singaporeなどでの勤務を経験。その間、日本に外国為替の電子商取引を導入し、当時のFX(外為証拠金)業界へのマーケットメイクを行う。これにより金融における電子化並びに効率化が高まった。引退後は豪州での資産管理会社などを通じ、ブロックチェーン関連業界に金融技術を導入している。

鬼澤礼志の記事一覧