ずさんなブロック塀調査から見える教育行政の問題点


6月18日に大阪市北部をおそったマグニチュード6.1の大地震で小学生が学校のブロック塀の下敷きになり、亡くなられました。謹んでお悔やみとご冥福をお祈りいたします。
ブロック塀の危険性は事前に指摘されていたにも関わらず、教育委員会が専門知識のない職員による目視のみで問題なしと判断したことで、事故を防げなかったことに批判が集まりました。
確かに教育委員会の対応は批判されて然りでありますが、なぜこのようなことが起きてしまったのか、教育行政の構造的な問題を見ていく必要があります。

建築物の危険性を発見し、予防のための責任を負うべきは当然知見を有する組織の長であるはずですが、教育委員会が適切な判断をできなかったのはなぜでしょうか。
教育行政は、行政、教育委員会、学校とそれぞれ権限と責任の所在が分散されています。例えば設備一つとっても、設備の管理は学校長、整備は教育委員会、予算の執行は市町村長の権限となっており、責任の所在は不明確になりがちです。
こうした分散体制が、各組織間の認識の共有を難しくしてしまったことに原因があると考えられます。学校運営をめぐって、別々の組織がそれぞれ権限を持つということは現場の混乱につながります。

企業統治では、実務は社員がおこない、社外役員や株主の意向は、株主総会などを通じて間接的に評価され、企業運営に直接指揮命令が及ぶことはありません。こうした役割分担の下、スムーズな業務運営が確保されます。
これに対して教育行政は、社外組織である行政や教育委員会の意向を、直接業務の中で反映していこうとものであり、企業で例えれば、社員が社外役員や株主に業務上の確認を求めながら、業務をすすめていくようなもので、これでは現場のスムーズな運営には支障をきたします。

現在の教育制度は、戦後の民主化の流れの中で、教育行政に地方自治を反映させることを目指しスタートしました。住民と行政の架け橋となるべく教育委員会も、住民の代表を委員とし、民意を反映する組織として行政から広範囲の権限を与えられました。その結果、いわば教育行政は三重構造(行政・教育委員会・学校)となり、権限と責任が分散される状況を招いてしまいました。
文科省もこうした現状に問題意識を感じており、2015年には大幅な教育委員会法改正がありました。
しかし、こうした努力にもかかわらず、多重構造が解消されない限り、スムーズな学校運営に支障をきたすということが今回の事件で証明されてしまったといわざるを得ません。

ブロック塀だけにとどまらず、教育行政の権限と責任の分散はさまざまな問題を生んでいます。
2014年に実施した文科省した調査で、行政や教育委員会からの調査やアンケートへの対応が教職員の負担感率の1位となっていました。行政や教育委員会は住民からの要望があるたびに、現場を把握するため、学校に細やかな調査やアンケートを求めます。実態調査は必要なことですが、調査に忙殺され指導に時間を割けなければ本末転倒です。
これも現場(学校)とは別の組織(行政や教育委員会)で住民への要望に対応しなくてはいけないという、多重化した組織が生む混乱の一つといえます。


保坂康平
保坂康平


早稲田大学社会科学部社会科学科卒業。在学中から地方議員へのインターンシップや選挙ボランティア、自治体からの委託業務に携わり、地方行政の現場を経験。卒業後はシークス株式会社(一部上場大手EMS商社)に入社。グローバルに展開されていく最先端のビジネスに携わる。一児の父、共働き家庭として、会社員生活の中で改めて感じた地方行政と市民との意識のずれを問題意識に提言を続けている。

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