インド初、公共サービスの宅配


行政サービス宅配の概要

デリー州政府が、40余りの行政サービス(8つの政府部門)を市民の自宅で提供できるよう準備を進めています。自宅で享受できるようになるサービスは、証明書の発行業務等ですが、市民はわざわざ行政窓口へ足を運び長時間待たされる必要がなくなる画期的な改善です。

今回対象となる主要な行政サービスは、各種証明書の発行(カースト証明書、死亡証明書、出生・死亡証明書、運転免許証)、婚姻届けの登録、車両所有権の移転、新規の上水・下水接続の開始等です。これらのサービスは、一旦コールセンターで必要情報の登録を受け付け、その後“Mobile Sahayak(ヒンディー語でアシスタントの意)”と呼ばれるスタッフが自宅へ訪問する。

“Mobile Sahayak”は、各種登録や証明書発行に必要な手続きを訪問時にその場(自宅)で行うことが可能です。必要書類を提出後、所定の証明書を即時発行します。手続きに必要な生体認証やカメラなどの各種機器もスタッフが持参します。

電子化が進むその他の行政サービス

私が日常で接する電子化された行政サービスは、会社登記局の各種申請・登記と税務当局の申告です。ほとんどの申告や登録が役所へ足を運ばないと完了しない日本と比較すると、大変利便性が高いと感じます。

会社登記局では、オンラインシステムを通じて、随時情報開示・アップロードが可能な仕組みになっています。まず会社登記の際に、全ての登記情報はオンラインフォームを通じて提出され、各種添付書類は全てPDF化してフォームへ添付されます。全ての情報が揃っている場合、会社登記完了までに要するのはたった数日で、日本よりも早いです。私が2016年に日本法人を登記した際には、法務局へ書類を提出してから1週間を要した記憶があります。

また、会社登記局では、登記のみならず取締役の変更や増資など、登記内容の変更についてもオンラインで完結する仕組みになっており、当局へ足を運ぶ必要はありません。各種手数料の納付や印紙などについても、オンラインで銀行からの引き落とし、もしくはカード決済可能になっており、申請者にとっては使い勝手が良いです。

税務申告に関しても、法人税番号を使ってオンラインのシステムから申告可能です。法人税番号と源泉徴収番号が紐づいており、企業側で源泉徴収した情報は随時被源泉側と共有可能です。企業側の源泉徴収番号と個人の納税番号(PAN、いわゆるマイナンバー)が連動しており、個人所得税申告(インドでは各個人での申告が義務付けられている)の際に、従業員側でも源泉徴収の情報が把握できる点が特徴です。

電子化導入による行政サービスの変化

一つ目の変化は、賄賂の減少です。役所の窓口で書類を受け付けていた際には、書類受付の際に賄賂を要求されたり、手続き迅速化の為に賄賂を要求されたりすることが少なくありませんでした。現在では、電子化され申請順に全ての書類が受理・処理されるため、賄賂が要求される機会が全くなくなりました。

二つ目の変化は、手続き処理の迅速化です。オンライン化以前は、内部での処理状況が不透明、かつ書類に不備があった場合には再度追加書類を要求される等、手続き処理に時間がかかっていました。オンラインにて申請手続きが行われるようになり、手続きの透明性が高まり迅速に処理がなされるようになりました。

インド政府は「デジタルインディア」のスローガンを掲げ、様々な行政サービスの電子化を推し進めています。今後も様々な手続きが電子化され、市民にとっては、よりよいサービスを享受できる環境が整っていくことが期待されています。日本では、行政手続き?の多くで電子化がされておらず、非効率な面が多いことは否めません。今後は民間とタイアップするなどして、日本でも市民サービスや納税者の利便性を高める仕組みが整えられることを期待しています。


鈴木慎太郎
鈴木慎太郎


米国公認会計士。SGC(スズキグローバルコンサルティング)代表。2010年5月よりニューデリー(インド)在住。40社以上のインド拠点設立、100社以上のインド・会計税務にかかるコンサルティングに従事。2016年よりスズキグローバルコンサルティングを設立し独立。日本企業向けにワンストップでインドの拠点設立・会計・税務・法務をカバーする総合コンサルティング事務所を経営。 URL: https://www.suzuki-gc.com

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