アメリカの税務行政の5年計画。何を目指しているのか?日本は?


【出典】フリー素材ぱくたそ

日本で、確定申告をしたり、税金を払ったりするとき、その相手になる機関はどこでしょうか?税務署や国税局ですね。その税務署や国税局を全国的に束ねているのが、国税庁です。日本の国税庁は、英語でNational Tax Agencyと表され、頭文字をとってNTAと略称しています。

では、アメリカはどうでしょう?アメリカで、日本の国税庁に相当する徴税機関は Internal Revenue Serviceです。こちらはIRSと略称されます。IRSは、日本語では「内国歳入庁」という訳が一般的です。
そのIRSが、今年の5月に、今後の税務行政のプランとして5年計画を発表していました。それが、 The IRS Strategic Plan FY2018-2022 です。どんなことが書いてあるのでしょうね。

5年計画の概要

この5年計画のトップのページには、概要として「この計画はIRSの今後の運営のガイドとなるロードマップであり、米国の納税者とそれに対応する税務専門家の変化するニーズと期待に応えたもの」と説明されています。

IRSの内国歳入法局長(Acting Commissioner of Internal Revenue)であるDavid J. Kautter氏は、「納税者にサービスを提供することはIRSの重要な使命である。納税者が法律を自発的に守ることをサポートしていくことで、税の仕組みが維持・強化される。この5年間の戦略計画は、納税者のユーザエクスペリエンスの改善に役立つ6つのゴールにフォーカスしている」と述べています(詳細はこちら)。

では、この計画が焦点を当てている6つの目標を見ていきましょう。

①Empower Taxpayers
こちらは、「納税者の利便性の向上」といった感じでしょう。納税者が税の申告や支払いの義務をより簡単に理解し実行できるようにする、そのためのツールやサポートを継続して追加し、強化していき、納税者及び税務専門家とIRSとの交流をどのチャネルでも可能にしていく、としています。

②Protect the Tax System
こちらは、納税者の自主的な行動に基づいている「税の仕組みを守る」といったところでしょうか。米国の税制は自主的なコンプライアンスに基づいており、それが適切に実施されることで成り立っているため、潜在的なコンプライアンス違反を検出し、解決するための方策を追求していく、としています。要するに、税のルールをしっかり守ってもらうために、いろんな方法でアプローチしますよ(守らない人は許しませんよ)、ということです。

③Collaborate with Partners
これはそのまま「関係者との連携」ですね。ここでの関係者には、民間部門から他の政府機関、そして外国の税務当局まで含まれます。納税者サービスを行う業者やセキュリティに関する業者との関係から、多国籍企業の税務コンプライアンスを複数の税務当局が同時に評価するプログラムまで、いろんな関係構築の手段があります。

④Cultivate Our Workforce
こちらは「効果的な人材育成・管理」といったところです。イノベーション重視、多角的な視点、多様性といった方向で、ビジネスからのニーズも考慮して、将来を見通した人材の管理・育成を戦略的に行っていく、ということです。

⑤Advance Data & Analysis
ここは「データ活用と分析を進める」ですが、その効果として、意思決定の促進と業務成果の向上が挙げられています。この10年で、データ量もユーザ数も飛躍的に伸びていることを背景として、情報収集プロセスの更新、分析ツールの向上を進めるとしています。

⑥Drive Efficient Operations
そのまま「効率的な事務運営の推進」ですね。老朽化したハードウェアを更新し、システムの強化・統合を進め、サイバー攻撃から納税者のデータを守る、といった項目が挙げられています。
以上6つのゴールをまとめると、「IRSは、納税者の利便性を高めると同時に、税のルールを守らない者に対して対処していく、そのため外部関係者との連携をより一層強める、そして職員の育成や管理も戦略的に進め、効率的なデータ利活用を図り、事務運営を効率化していく」ということになります。

日本は?

日本の国税庁も、昨年の6月に「税務行政の将来像―スマート化を目指してー」を公表し、それから1年が経過した今年の6月には、「「税務行政の将来像」に関する最近の取組状況」として、1年間で具体的に実現した取組を紹介するとともに、これまでの検討の中で、施策のイメージが具体化したものを紹介しています。

個人の税務手続でいえば、スマートフォン等による電子申告ができるようになるとか、年末調整の手続きが簡単になるといったことが挙げられていますね。法人でも、電子申告に必要な手続きの簡便化などが図られるようです。
また、こういった利便性の向上の施策とともに、ICTやAIを活用して効率的かつ高度な調査・徴収事務を進める、とったことも書かれています。これによって、国税庁の重点課題である「国際的租税回避への対応」、「富裕層に対する適正課税の確保」、そして「大口・悪質事案への対応」に取り組む、としていますね。

まとめ

世の中の変化に対応していくために、日本の国税庁を含め多くの国の税務当局が、それぞれの国で、また国際的な協調によって、税の執行を円滑にするためのいろんな工夫をしています。国家を前提としない貨幣である仮想通貨が出現し、利用される場面も増えてきていますが、少なくともすぐに国家がなくなるわけではなく、もうしばらくは今のような国と企業や国民の関係が続くことを考えると、税が正しく公平に徴収されなくなってしまうことは、どのステークホルダにとっても幸せにはつながらないように思います。
たとえば「仮想通貨の利益にかかる税金が高い!」「仮想通貨の利益の計算が面倒だ!」など、税のルールや手続きには、細かいところを見ていくといろいろ不満もあり、それはそれでよりよいルールにしたり手続きを見直したりするところもありますが、いまのルールのもとでは、税務当局と納税者、関係団体が、協力してことを進めていくのが大事でしょう。そしてそのためには、当局側が考えていることを、このアメリカや日本の例のように、どんどん開示していくことも必要なことだろうと思います。


平山 哲二


仮想通貨マニア。三度の飯よりも仮想通貨を考えることが好き。10年ほど前から金融商品や海外投資に興味を持ち、リサーチしていたところ、3年前にビットコインに出会う。それ以来、ビットコインやその他の仮想通貨に強く興味を持ち、税務などの観点から仮想通貨を研究している。

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