「インターネットの歴史から考えるインターネットビジネスの本質」<第8回>「グーグル」-「Don’t be evil.」 - (その3)


【出典】フリー素材ぱくたそ

前回、前々回では、グーグルの企業DNA、検索エンジンによるインターネット進化への貢献などについて述べてきました。

今回はグーグルのビジネスモデル(どのように稼いでいるのか?)を支えている「広告ビジネス」について述べます。検索エンジンとして、世界の大半の国で9割以上のトップシェアを誇っているグーグルですが、検索エンジンだけでは企業として食ってはいけません。利用者にとっては無料で使え、かつ高性能の検索エンジンの利便性で「集客」を達成し、集めた利用者によってビジネスを展開しなければ持続的な成長は出来ません。

グーグルが時価総額で世界屈指の評価を獲得しているのも、自動運転、AIを始め未来に繋がる技術開発(逆に言えば、直ぐには収益に繋がらない技術開発)への莫大な資金を投入できるのも、年間2兆円を超え、年々増加している利益のお蔭なわけで、それを叩き出している広告ビジネスを開発したことが、検索エンジンに続くグーグルのイノベーションということになります。

本連載はインターネット業界の方たち向け、というより、インターネット業界の外の方たちを想定読者としていることもあり、インターネット広告の仕組みに疎い方々のために、多少わかりやすくグーグルが開発した2つの広告手法を説明します。

①AdWords~広告主(パブリッシャー)に対するインターネット広告サービス
②AdSense~広告掲載先(アドバタイザー)に対するインターネット広告サービス

例えば、「パソコン」という検索キーワードでグーグル検索を行うと、

というように画面上には検索結果と共に広告が表示されます。本文の冒頭にある 広告(Mac)と、画面右側の「スポンサー」枠がAdWords により利用者がクリックしたりしたときに広告主に課金される仕組みのものです。この「パソコン」という検索ワードが、表示されているのは、「パソコン」という言葉に対する入札の結果Dell が勝って、誰でも「パソコン」という言葉でグーグル検索したときに、Dell の広告が表示されることになっていることを示しています。

パソコンという言葉で検索した人は、当然パソコンに興味があるわけであり、購買意欲についても高い可能性があります。画面で表示されたこの広告がクリックされたときに始めて、広告主(この場合はDell )に課金が発生します。逆に言えば、クリックがなければ課金が発生しないわけで、合理的な仕組みと言うことができるでしょう。

一方、TV広告など不特定多数に対して莫大な広告料で出稿した場合には、もちろん世間的には広く話題にはなります。しかしながら、本当にターゲットとする潜在顧客にリーチ出来ているかというと、極めて疑問です。

こうしたクリック連動広告は、検索履歴などグーグルが保持している顧客情報を使った「ターゲティング」により、ターゲット顧客に直接リーチできそう、という意味での合理性だけでなく、HP閲覧時、閲覧後の顧客の購買行動の分析が出来る点にも合理性があります。

近年盛んなマーケティング理論に中のAIDMA理論、即ち
 ・A・・・Attention(注目)
 ・I・・・Interest(興味)
 ・D・・・Desire(欲求)
 ・M・・・Memory(記憶)
 ・A・・・Action(購買行動)

という消費者のクリックから購入に至るまでの購買行動のプロセスについて、HP遷移の各段階のデータ分析(上記AIDMAのプロセス)、確率把握によってPDCAを利かすことが可能となるわけです。例えば、パソコン販売者のHPから、商品種類を絞り込んでいったり、注を参照したりというプロセスを分析することによって、商品の強み、HPの巧拙などが判断でき、改善に役立てることも出来るわけです。そして、広告主にとって、左記分析の入り口となるAdWords の採用可否、採用後の継続可否についても、きちんと数字で、その有効性、採算性を分析することが出来るのです。

本年3月の「わが国の 2017年の総広告費、6 兆 3,907 億円のうち、インターネット広告媒体費は、1 兆 2,206 億円(前年比 117.6%)となっており、順調に成長を続けている」という電通の発表にもあるように、既に総広告費の約2割を占め、それ以外の広告媒体が減少する中、インターネット広告は順調に成長しています。これまでアンケート程度の効果測定方法しかなく、曖昧な巨大産業であった従来の広告産業が、インターネット広告の出現によって様変わりしようとしているのです。

もう一つのグーグルが開発したAdSense を理解するために、一世を風靡したピコ太郎のYoutTube画像を見てみましょう。

AdWordsがグーグルの検索ページで、検索のキーワードに対して紐づく形で、広告が表示されるのに対し、AdSense は、「コンテンツ」提供者(アドバタイザー)に対する広告サービスであり、YouTubeやHPやブログページなど、コンテンツ提供者のページ利用者(閲覧者)が見に行ったときに、広告が表示される仕組みです。

見ている利用者の画面上にどの広告が表示されるのかを決定するのは、ネット検索をベースとした膨大な顧客情報を持っているグーグルです。グーグルが、そのコンテンツの内容に相応しい広告を掲示してくれるので、アドバタイザー自身は、広告を出すことを申込み、「ただ待っているだけ」で閲覧者がクリックしてくれさえすればチャリンチャリンとお金が入ってくることになります。

このAdSense、凄い仕組みだと思いませんか?

上記のピコ太郎のケースでは、ブレーク直後の広告収入は月、億円を超えたというので話題になりました。そしてYouTuberという職業が憧れの職業の一つとなりました。これまで日陰者だった「オタク」の人々も、コンテンツをネット上に公開するという自己表現によって、とにかく閲覧者が増えさえすれば、収益チャンスが拡大し、「食える」可能性も出てきたわけです。

AdSenseがメジャーになる前の、バナー広告のような「クリックしてくれるか、してくれないかわからない」広告媒体と比べると、閲覧者の検索履歴を活用することによってグーグルによって表示される「クリックする可能性の高い広告表示」であるAdSenseの有効性は、天と地ほど差があるわけですよね。

同じような広告の仕組みで、検索エンジンを展開するヤフーやマイクロソフトも、広告ビジネスを行っています。しかし、「Don’t be evil.」 で圧倒的に優れた、そしてより多くの人々に支持されている検索エンジンであるグーグルの優位性は盤石であると言わざるを得ません。
YouTube という動画サイトのガリバーを買収したことも、グーグルの優位性を高める好手だったと思います。

筆者は、検索エンジンを高度化することによって、グーグルは「インターネット空間をゴミの山から宝の山に変えた」と以前書きましたが、同じように、グーグルは「インターネット空間を『食える空間』に変えた」と表現しています。

そしてまた、コンテンツ提供者、つまりクリエイティブに文章や映像や動画を創造する人々の立場に立ってみて見ると、そうした人々の存在に光を当て、食えるようにしたという社会的、文化的な功績というものは、良く考えてみれば非常に重要なことではないかと思うのです。

但し、この広告の仕組みによって、「炎上」を目的とする輩、人々の耳目を集める「フェイクニュース」を意図的に流す輩の跋扈という現象をも生んでしまったことも事実です。炎上しても、集客さえ出来れば官軍というわけです。
現在問題になっている、こうした陰の副作用について、インターネット広告全体で6割の利益を分け合っているグーグル、フェイスブックの2大IT巨人の今後の対応が注目されるところです。

次回はグーグルの4回目、グーグルについての最終回となります。
アルファベットを持株会社として、検索を中心とする現行サービス以外のぶっ飛んだ新事業・開発について、少し考えてみます。


小寺 昇二
小寺 昇二

埼玉工業大学人間社会学部情報社会学科教授、大学院人間社会研究科情報社会専攻教授
2014年より埼玉工業大学人間社会学部情報社会学科教授、大学院人間社会研究科情報社会専攻教授。授業担当は「e-ビジネス論」「財務管理論」「スポーツ経営」「地域経営論」「現代経済論」「現代経済史」等。ラグビーチーム一般社団法人横河武蔵野アトラスターズ監事、埼玉県深谷市総合計画策定審議会委員。NPO法人日本公共利益研究所コンサルタント。

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