持続可能なまちづくりとは?~南アルプス市の場合


【出典】北岳等雪をかぶった南アルプス連峰、筆者撮影

山梨県の甲府盆地西方に位置する人口約72,000人の南アルプス市は、15年前に6町村が合併し誕生したまちである。南に霊峰富士、北に八ヶ岳、東に奥秩父連峰、そして西に市名由来の南アルプス連峰がそびえ、市の平地の大半を占める御勅使川扇状地は果樹栽培がとても盛んで、春から秋にかけサクランボ、桃、李、葡萄、柿、キウイフルーツ等美味しい果物が豊富に実っている。

一方、2014年6月には、南アルプス市を中心に山梨、長野、静岡3県にまたがる6市4町村の広大なエリアがユネスコエコパークに登録された。以来、ユネスコエコパークの理念に基づきこの地域の豊かで多様な自然を保全し、ここで織り成す歴史・文化を守り発展させ、次世代につなげていくことがまちづくりに欠かせないものになってきている。

しかし、登録から4年以上経ってそのことが市民にどれほど知れ渡っているのだろうか。

市は、決まり文句のように「ユネスコエコパ―クをまちづくりの根幹にしている」と言っているが、肝心の市民に十分そのことが伝わっているとは思えない状況である。

まあこのことには、これ以上言及せず、又、別の機会に話したいと思う!!

さてそれでは、南アルプス市にとってユネスコエコパークを土台としてのまちづくりとは、南アルプス市らしいまちづくりとはどんなまちづくりであろうか?

様々な切り口はあるが、一口に言えば「南アルプス市にしか無く、内外に誇れる資源を使って活性化を図る」のが得策ではないかと!! 既に北岳を中心とした山岳観光やサクランボ狩り観光は、雄大な自然と美味しい果物が好評で本市の観光振興や市の活性化に貢献している。

【出典】さくらんぼ狩り、筆者撮影

しかし、登山は通過型観光に終始し、果物狩りも観光客の減少等で低迷しているのが実情である。山岳と果樹観光をもっと充実したものにするため、農協や観光協会の関係者も検討してきたが、なかなか打開策は生まれてこない。したがって、一方で新たな観光施策を考えていかなければならない。

新たな観光資源として山とフルーツ以外に本市独自のもので且つ内外に誇れるものが有るのだろうかと考えた時、「一つだけ思い浮かんだ!!」それは「水に泣き、水に笑った歴史・文化」である。

日本三大扇状地である御勅使川扇状地は、太古の昔より御勅使川の氾濫を繰り返し、人々は何度も水害に苦しめられ、武田信玄はそれを防ぐため治水技術を駆使し堤防や堰堤等をいくつも造った。

現在は、その一番提、二番提等の石積み出しと水害から水田等を守った将棋頭等が国指定の史跡として現存している。

【出典】武田信玄流治水事業の石積み出し(一番提)、筆者撮影

一方、利水面において1670年(江戸時代前期)に完成した徳島堰(これも日本三大堰) は、俗に「月夜でも焼ける!!」と言われた扇状地に今でも水を供給している。

明治から戦後にかけては、タバコ栽培と養蚕が盛んだったが、現在、同堰はスプリンクラ―を通じて1700ヘクタールにも及ぶ畑を潤し、一大果樹地帯を誕生させている。徳島堰が無かったら、この地に豊富なフルーツは実らなかったと言っても過言ではない。更に言及すれば、徳島堰を私財を投じて完成させたのが、同堰の近くに住んでいた名主「矢崎又右エ門」である。

【出典】徳島堰を開設した矢崎又右エ門の生家住宅、筆者撮影

その住宅は築350年以上経過し、民家としては甲府以西で最も古く文化財としても非常に高い価値を持つ。このように水の歴史(治水・利水)と共に、それにまつわる史跡や建造物は、この地域独自のものであり全国いや世界にも誇れるものである。文化財保護と共に観光振興においても現存するこれらの治水・利水施設や建造物と水の歴史を果樹観光等とコラボして活用していくこと(例えば、果物狩りに来た観光客に、今食べている果物の水のルーツを探検してもらうetc)等も一つの方法である。

これらの地元資源を活用して着地型観光(ツーリズム)やインバウンド観光に繋げていき、本市の活性化を図ることは、自然と共に文化的にも経済的にも持続可能な発展を目指すユネスコエコパークの理念と合致し、正に南アルプス市らしいまちづくりに繋がるものであることを強調しておきたい!


有野一成
有野一成

南アルプス市議会議員
南アルプス市議会議員。南アルプス市役所、南アルプス市雇用創造協議会を経て現職。 認定NPO法人フードバンク山梨理事(元)、南アルプス市サッカー協会長、南アルプスエコ旅企画会員などを歴任する。

有野一成の記事一覧