インドのシェアサイクルビジネス最新事情


欧米に始まり中国、日本でも立ちあがりつつあるシェアサイクルビジネス。インドでも2018年に入り、多くのプレイヤーの参入が相次ぎ注目を集めています。今回はインドのシェアサイクルビジネス事情に関してご紹介します。

インド市場でのプレイヤー

世界的に有名な中国のmobikeとofoの2社いずれもインド市場へ進出しています。しかしながらofoは、2018年1月にサービス開始し7都市に展開したものの、7月にはサービスの停止・拠点の閉鎖を発表し、進出後わずか6ヵ月でその撤退を決定しています。一方でmobikeは2018年5月にプネを拠点にサービスを開始しています。

2社の撤退・進出の背景にあると考えられるのが、プネ市政府(Pune Municipal Corporation – PMC)との関係です。ofoは2018年1月に、プネ市政府とプネサイクルプランの覚書(MOU)締結を発表していました。しかしながら、その後5月にmobikeがプネ市政府とプネサイクルプランの契約を締結したことを発表しており、この間にプネ市政府がofoとの覚書の内容を破棄しmobikeと最終的に契約を締結したことが推察されます。その後、プロジェクトの後ろ盾を失ったofoは、インド市場からの撤退を決意したということではないでしょうか。

【出典:Mobikeホームページより】

ローカルプレイヤーとしては、Mobycy(グルグラム)、Yulu(ベンガルール)、 PEDL(ベンガルール)、Ola(ベンガルール)などがシェアサイクルビジネスへ参入しており、ITハブのベンガルール企業が中心となっています。

【TechCrunchより転載Yulu創業者 Amit Gupta】

インドのシェアサイクルビジネスの課題

中国でのシェアサイクルビジネスは、その爆発的な普及とともに投資家からの資金をひきつけ拡大してきました。現状インドではそのような成長を阻害するいくつかの要因が存在しています。

①自転車のイメージ
街中で自転車に乗っているインド人は大きく2種類に区別できます。一つは低所得者層もしくはワーカー、もう一つは所得が高く健康意識が高い層です。日常において自転車に乗っている人口は圧倒的に前者が多く、後者の人口は非常に限られています。また後者は移動のために自転車に乗るというよりも、ファッション・健康志向のために乗っているだけであり、普段の移動については自動車が基本です。このような現状から、自転車に乗るイメージはあまりよくありません。

②舗装道路の少なさ
最近は舗装された道路も増えつつありますが、インドでは未だ段差や未舗装の道も多く、車道以外にスムーズに自転車で移動可能な道は限定されています。

③過酷な天候
デリーであれば、真夏は45度を超える高温になり、冬には5度以下の気温と深刻な大気汚染があり、年間を通して自転車で快適に移動できる期間は限られています。

④自転車を誰かがこいでくれるという選択肢
主要なメトロ駅周辺では、サイクルリキシャという運転手付きの自転車リキシャが存在します。多少の金額を払うだけで運転手が行先まで自転車をこいでくれるため、ラストマイルの移動のために自身で自転車をこぐ必要性が低くなります。

シェアサイクルビジネスへの追い風

一方で、都市化の進むインドではシェアサイクルビジネスの追い風となる状況があるのも事実であり、それが新しいシェアサイクルビジネスのプレイヤーの誕生のきっかけともなっています。

①スマホユーザーの増加
インドのスマートフォンユーザーは3億人を超えており、2020年までに6億5千万人を突破すると言われています。また、4G接続エリアやデータ回線速度も上がってきており、スマホユーザーが気軽にアプリ経由でシェアサイクルなどのサービスを利用できる環境が整いつつあります。

②メトロ駅の増加
現在インド国内7都市でメトロが運行されており、延伸や新線の登場などで順調にそのカバー範囲を広げていいます。メトロ駅が増えるにつれ、その周辺地域や住宅地との接続が重要となり、ラストマイルをカバーする交通手段の必要性が高まっています。

③都市部での渋滞・環境問題の悪化
自動車台数の増加・都市部での環境問題の悪化から、環境負荷の低い交通手段の必要性が高まっています。特に自治体レベルでは、環境対策の一環として電気自動車やシェアサイクルの普及などを推進しており、今後自転車の専用道の整備なども進んでいくことが予想されます。

インドではインフラ整備に伴って、公共交通機関(地下鉄等)を利用して通勤する人が増えることは間違いありません。その際に、駅と住宅地を接続するラストマイルの交通手段の一つとして自転車も普及していくことが予想されます。一方で、中国と比較した場合、現状抱える課題から市場の拡大スピードは緩やかであることが予想され、そこを各シェアサイクルビジネス運営企業がどのような仕組みで解決していくのか、市場が成長するまでの期間資金を継続的に供給できるかなどが注目されます。


鈴木慎太郎
鈴木慎太郎


米国公認会計士。SGC(スズキグローバルコンサルティング)代表。2010年5月よりニューデリー(インド)在住。40社以上のインド拠点設立、100社以上のインド・会計税務にかかるコンサルティングに従事。2016年よりスズキグローバルコンサルティングを設立し独立。日本企業向けにワンストップでインドの拠点設立・会計・税務・法務をカバーする総合コンサルティング事務所を経営。 URL: https://www.suzuki-gc.com

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