国際連帯税は時代錯誤の無用の長物、日本の果たすべき真の役割とは何か


(NHK)

河野太郎外務大臣が「国際連帯税」を税制改革大綱に明記することを明言

河野太郎外務大臣が都内で開かれた国際連帯税に関するシンポジウムで、国際連帯税の導入検討について発言を行った、とのこと。

国際連帯税は開発途上国支援のために国民に新たに課税を強いるものであり、既に導入している一部の先進国を見習うべきだと言う趣旨である。

背景としては、先進国の援助(ODA)疲れで金額が減少し、それを転換させるために、国の予算に依存せずに資金調達するための方法が必要、としている。

そして、来年度の税制改革大綱に国際連帯税導入に向けた具体的な道筋を明記して有識者会議を発足させることに言及した。

既に世界の貧困率は大幅に改善し、残されたアフリカへの責任主体は欧州である

筆者は、このような「最低の課税」に対して真っ向から反対である。なぜなら、世界の貧困解消の進展と歴史的責任を無視した議論だからである。

世界の貧困率はグローバル化による市場結合を通じた経済成長によって急速に改善しつつある。世界銀行の試算でも世界の貧困層比率の減少は2015年段階で10%を下回る勢いとなっており、かつて1990年に世界の貧困人口のうち50%は占めた東アジアの国々の貧困層は世界全体の貧困人口の10%前後にまで減少している。いまや貧困問題の中心地は東アジアではなくアフリカに完全に移っている。そのアフリカでも一部地域は市場経済に接続した結果として徐々にではあるが経済成長を始めている地域もある。

日本は歴史的関係が深い東アジア地域への援助において多大な貢献を果たしてきたのであり、東アジアの国々は既に経済成長を遂げて自らの国の衛生環境改善に自ら取り組むべき段階に入っている。日本の援助の主たる対象地域が発展するという望ましい出来事によって日本の援助額が減ることはむしろ望ましいことだと言える。日本人は東アジアで中国を筆頭に「援助を必要としなくなった国」が増えたことで開発援助を控え気味になったのであり、それらの国々の「経済発展によって開発援助が不要になったこと」に伴う援助金額減少を「援助疲れ」と称することは「援助を行うこと自体が目的」となっている典型的な官僚的自家中毒の認識だろう。

河野外務大臣は一昔前までは行政改革に積極的とされた議員であったが、すっかり「外務省のロジックに飲み込まれた」ようで残念である。

また、残された最貧地域であるアフリカに関しては、日本よりも欧州の歴史的責任が極めて重く、むしろ欧州各国は東アジア地域を見習ってアフリカの発展に尽くすべきだ。日本は東アジアの経済大国であり、同地域には一定の責任があるものの、欧州列強に植民地化されて経済・社会が寸断されたアフリカへの責任を背負うべき主たる存在ではない。

欧州が更にアフリカのために開発援助を増額し市場結合を進めるということは理解できる部分もあるが、日本がアフリカを中心とした残された途上国のために「新税」を導入することに必然性は存在しない。

日本が行うべきことは「経済成長」と「東アジアの政治健全化」である

日本が取り組むべきことは政府開発援助ではなく経済成長である。東アジアの国々は貧困状態を脱したとは言えども、十分な中間層が育成できている状態とは言えない。中間層が育った健全な経済を実現するためには、現在よりも更に市場経済を通じた経済成長を実現できる環境が必要となる。したがって、東アジアの経済大国である日本は市場結合を通じて東アジア諸国の経済成長をけん引する役割があり、経済成長を鈍化させるような「新税の導入」などは求められている役割に逆行するものと言えるだろう。

また、東アジア諸国にはいまだ十分に良心的な政治体制を持っていない国が多数存在している。経済成長をしたものの国民の自由が制約を受けている地域や依然として独裁的な政府によって貧困にあえぐ国民が存在する地域も存在している。日本政府にとっては、これらの国の国民を抑圧から解放するための国力を持ち、また敵対的な国の脅威から日本国民を守ることも当然の務めと言える。そのためにも余計な増税によって経済的な競争力を落とすのではなく、力強い経済成長のために「むしろ、外務省の無駄な予算を削って減税に回すべき」である。

国際連帯税は日本にとって全くの時代錯誤の無用の長物であり、むしろ日本として果たすべき役割を阻害するものでしかない。

 

 

 

 


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

渡瀬 裕哉の記事一覧