「自治体広報の未来」レポート


日本政策学校インターンの渡邉萌捺です。
ユースデモクラシー推進機構さん主催、定例勉強会に参加させていただきました。

第20回となる今回のテーマは、

「自治体広報」
自治体広報のミライ
~広報はまちに恋するラブレター~

講師は佐久間智之さん。
自治体広報誌のイメージを一新した埼玉県三芳町の広報誌「広報みよし」の制作をたった一人で担い、2015年には広報コンクールにて内閣総理大臣賞を受賞されました。シティープロモーションの分野でも高い評価を得る佐久間さんに、そのノウハウや極意について伝授していただきました。

以下講義の要約です。

読まれない広報誌は税金のムダ

2011年頃、ゴミ箱に捨てられていた広報誌を見て「税金のムダだ」と思ったことがターニングポイントでした。

町長が変わり「広報をつくりたい職員はいないか」という公の募集が行われたので、ここで立候補して広報に関わることになりました。

「三芳町でないとつくれない特集」
「読む価値のある内容」
を意識してつくるように変化させていきました。

若い人に読んでもらうには

・まず、手に取ってもらうために「みよし」を「Miyoshi」に変えました。表紙は脳裏に焼き付く写真。インパクトのあるものを使用することに今でも注力しています。

・デザイン的には、写真を多用する。

・ほとんど読まずに写真で判断されることも多いので、あえて写真を多用します。文字数はかなり少なくなるので要約する語彙力が必要になりますが、要点が絞られていて頭に入りやすいものを提供する工夫をしています。

例えば選挙であれば、漫画チックにすれば若い人にも読んでもらえるかなと考えました。強調するために同年代の学生にも出てもらい、文字数もかなり減らしました。

他にも、住民の方に誌面に出ていただいて訴えかけることもしています。

広報みよしには特徴があって、誌面に登場する住民の方みんなが正面を向いている写真を使います。僕はドラクエ方式と呼んでいるんですが、住民と読者の目が合うようにしているんです。

ドラクエのモンスターって、みんなプレイヤーと目が合うじゃないですか(笑)

ヘンにカッコつけた写真ではなく、みんながこっちを向いて訴えかけているというデザインにしています。

「こんなにデザインを変えたらお高いでしょ」とよく言われますが、全て自分でやるので

平成11年 → 1000万円超え
今年 → 537万円

だんだんと下がってきて、今年は半額以下になっています。

「ものすごく残業しているんでしょ」
「専門知識を持っているんでしょ」

とも聞かれますが、ほぼ定時帰宅です。

嘘だと思われるかもしれませんが、今年の2月なんて残業0でした。

常にタスクを可視化させることが重要で、朝のうちに優先順位を決めて分刻みでタスクマネージメントを行っています。

専門学校に通った経験もありません。インデザインやフォトショップも使ったことがなかったですし、一眼レフに触ったこともありませんでした。プログラミングやソフトをつくることに関しても未経験でしたが、全部独学で、僕の先生はGoogleさんで間違いないです。

若い人に注力したら70代にも読まれるようになった

広報みよしは若い人に向けているから読まれていない、なんてことはないんです。

直近3年前のグラフを見ると、以前に比べて70代がすごく増えています。20代も70代も増えているんです。

高齢者の方に配慮したものばかりだと若い世代は下がってしまいます。しかし、若い人向けにシフトしても高齢者の方が下がっていないということは「分母が増える」ということです。その方が全体的な総量が増えると思っていたので、やって間違いじゃなかったと実証できました。

「みよし」から「Miyoshi」に表記を変えたこと、写真に穴が開かないようにパンチ穴を無くしたことには、たくさんのクレームがきましたが、一銭でも安く皆さんに良いものをお届けしたいと説明することで納得していただけました。

スライドも一目でわかりやすいものばかり。さすがです。

広報誌がブランド化すると

広報みよしは24の広告枠が12ヶ月全て埋まり、年間230万円の収益があります。

広報誌がブランド化すると広告を入れる価値が出るので、収入にも繋がります。

アプリを通して町外にも発信していて、位置情報の登録をすることで三芳町以外でも読まれていることが確認できます。閲覧時間に加え、ヒートマップで「どのページの、どの部分が、どれだけタップされたか」を把握することも可能です。

世界にも発信するために、現在出向しているモリサワさんの9言語対応「UDフォント」を取り入れています。後ほど詳しくお話しますが、読み上げも出来るので幅が広がりますよ。

住民が主役の広報誌

「住民と一緒に広報をPRしよう」という取り組みの一つで、毎年スナップ撮影会を行っています。

「フォトプロップスを持って、皆さんで写真を撮りませんか」というもので、写真のデータとA4の広報みよしの表紙にしてプレゼントをします。

ちなみに、これも予算0円です。

フォトプロップスは段ボールに糊で貼って、持ち手は割り箸や100均の太いストローを使用しています。

町外向けとしては、イベント時にブースに来てくれた方に写真をプレゼントしています。

タレントさんにサインしていただいたフォトプロップスを持ってもらい、誌面にも写真を載せます。そうすると、イベントが終わった後でも広報みよしを調べてくれて関与人口が増えていきます。

選ばれる町になる

関与人口を増やすことが、町のファンを増やすことに繋がるんじゃないかと思っています。

住民の方や町外の方にも誌面に出ていただくことで、その時点で無関係の人ではなくなるんですね。その人がさらに拡散することで「三芳ってなんかおもしろそう」と知ってもらったり、検索してくれたり、最高地点では住んでみようとかってなってくると思います。

例えば、さつまいもが三芳町の特産品なんですが、同じ値段で茨城県産と三芳町産があったら、今日この講演を聞いていただいた皆さんならたぶん三芳町産を選んでくれると思うんです。

こういうことが関与人口であって、僕が「三芳町は素敵な町なので来てください」と言わなくても三芳町に関心を持ってもらうことに繋がります。

住んでいる人を大切にする町づくりが第一、それに関係する外の人たちは関与人口で、その人たちが共感してくれて住んでもらえたら良いな、と思ってプロモーションをしています。

広報力は仕事力

誰にでもわかるような配慮が大切です。

相手に理解していただけるものが考えられればムダな問い合わせは減るんです。

例えば、知らないワードが多く、自分が何に当てはまるか分かりづらい納付書を送っても、理解できなくて問い合わせが来ます。

理解してもらうために送っているのに、読んでもわからないから問い合わせが来る。

そこで「あなたはこの所得段階なので、今回の納付金額はこの金額です。」と個別に説明書を入れたんです。これだけで一切苦情がなくなりました。

こういった作業をボタン一つで出来るようにソフトもつくりました。このソフトを作成したことで、長男の時も次男の時も育児休暇を取得することができました。

伝わるものをつくるために、しっかりとした内容とデザインをすることは非常に重要です。それが仕事の効率化に繋がる。だから広報力は仕事力に繋がると思っています。

クロスメディア化

広報みよしにスマホをかざすとARで動画が再生されるようになっています。

例えば、ベビーマッサージの写真にかざすと実際の映像が流れて、さらにワンタップすれば申し込みフォームに飛べるようにつくりました。

電話番号が書いてあってわざわざ電話して申し込むよりも確立は増えると思います。

他にも、特別号の作成、町に来てくれた人へ絵ハガキのプレゼント、作成したPR動画を15秒スポットとして映画で上映、幅12mのポスターを秋葉原に一週間貼るなどしました。

そのどれかから三芳町を検索してくれると、町の他の情報も知ってもらえます。
これらがクロスメディア化です。

こういったことをすると「お年寄りはスマホ持ってないよ」などと言われますが、ベビーマッサージの場合であれば、お母さん世代がターゲットであって、おばあちゃん・おじいちゃん世代にARやQRを見ていただく必要はないと考えています。

しっかりターゲティングをしないとブレてしまうので注意ですね。
持ち帰りたい内容ばかりで皆さん一生懸命にメモしていました!

持ち帰りたい内容ばかりで皆さん一生懸命にメモしていました!

点数が上がるフォント

デザインとは、わかりやすく理解してもらうための手段です。

その一つとして先ほどお話したモリサワさんの「UDフォント」があります。

読みやすい書体になっていて「UDデジタル教科書体」というフォントは、ディスレクシアという学習障がいを持つお子さんや先端恐怖症でハネが気になって文字が頭に入ってこないというお子さんにも配慮されています。

ある学校での実証実験では、テストの点数が上がったそうです。読む時間がかからなくなり、考える時間が増えたためだと言われていて、今後さらにエビデンスをとっていくそうです。

例えば「S36」

これってお年寄りになると滲んで見えて全部「8」に見えることがあるんです。
「UDフォント」だと切り込みが大きくなっていて見分けやすくなっています。濁点や半濁点も同じように工夫されています。

これは地味に大事なことで、お年寄りの方が薬を3錠飲むところ、読み間違えて8錠飲んでしまう…なんてこともあり得ますよね。

ちゃんと伝える手段として、フォントも重要だと思っています。

広報みよしも、このフォントを使用したところ「文字が小さい」という苦情が0になりました。

パッと見で伝わる

人は0.3秒で興味の有無を判断します。
ここで「自分に関係あるな」と思ってもらうことが大事です。

直感的に情報を伝える工夫をするというのがユニバーサルデザインの考え方で、トイレマークは「トイレ」と書いていなくてもわかりますよね?色とマークだけで男女の判断もできますね。

文字を読まなくても、お年寄りから子どもまでストレスなく情報を与えることができています。広報みよしでもピクトグラムを使って、パッと見てわかるようなアイコンを多用しています。

シビックプライド

広報が変わると住民が変わります。

「三芳町の広報ってなんかいいじゃん」とみんなが言ってくれることで「読んでみよう」と、まずゴミ箱行きだったところが変わっていきます。

住民の方にしっかりと情報を伝えることで町の新たな魅力に気付いてもらい、町に誇りを持っていただくことが重要です。行政発ではなく、住民の方が自発的に話したくなる町づくりが町のブランド価値の向上に繋がっていきます。

想いを届けて恋をしてもらう。広報はラブレターです。

おわりに

会場では、実際に佐久間さんがデザインされたものとそうでないものを比較したスライドをいくつか見ることができました。

記載されている情報量は同じでも、デザインによって「パッと見た時の印象」がガラっと変わることを目の前で体感させていただきました。会場からは思わず「おお~」と声が漏れるほど、同じ内容とは思えない仰天チェンジでした!

佐久間さんが執筆された「公務員のデザイン術」

大好評につきネットで買えない状況でしたが、会場で直接ゲットされた方が多くいらっしゃいました。講演を聞けるだけでなく様々なチャンスのある勉強会となっていますので会場に足を運ぶことをオススメします!

左:渡邉萌捺・右:佐久間智之さん

気になる次回は、8月7日19時から!

「ブロックチェーン・レボリューション」で転換する私たちの未来
~ブロックチェーンで私たちの生活と政府はどう変わるか~

他ではあまり取り上げられない、身近な生活を含む「公共」の視点からブロックチェーンの仕組みと、その可能性を学び、今後到来する未来を構想します。

チケットはこちらから
https://yd-lab21.peatix.com


政策 太郎
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