「Edtech連載・第2回」「100円のコンピュータ」が5,000万回/秒計算できる時代、求められる教育とは?


Edtech特集の第二弾は、大ヒットしたフルブラウザアプリ「jigブラウザ」でも有名な株式会社jig.jp代表取締役社長福野泰介さんとの対談記事をお届けします。
福野さんは、1,500円のこどもパソコン「IchigoJam」を生み出し、「PCN(プログラミングクラブネットワーク)」、鯖江市内の小中学校の全教員へのプログラミング研修などにも取り組まれてきた、まさにEdtech業界のパイオニアでもあります。

伊藤
子どもたちを対象にした取り組みをはじめられたきっかけを教えてください。

福野
10年ほど前から、毎年夏に子どもたちに向けた会社説明会を行っていました。ただの会社説明会では面白くないので、プログラム作りの体験をしてもらおうと考えました。タブレットを使ってはじめたところ結構ハマる子も出てきました。
家でも学べるようにしてあげたいと思ったのですが、タブレットだとプログラムだけに集中できません。もっと寄り道できないようなものがないかと思いました。小三の時に買ってもらいゲームを作ったMSXを思い出しました。MSXっぽいものを目指してIchigoJamを作りました。

伊藤
IchigoJamで子どもたちも気軽にプログラミングを学ぶことができますね。主にどのようなところで活用されていますか。

福野
実は、最初は子どもたちではなく、MSX世代から反応がありました。その後、地元の鯖江でお祭りがあるので体験会を開いて子どもたちに使ってもらったところ、「もっとやりたい!」と言ってもらって非常に反応が良かったこともあり、定期的にイベントを開くようになっていきました。そして、子どもたちに教えるコンテンツをオープンにしたところ、PCN金沢、PCN三重と広がってきました。

伊藤
2020年はプログラミングが小学校で必修となりますが、どのようなプログラミング教育が行われるのが良いと思いますか。

福野
1回でもプログラムに触れて、プログラミングがどういうものかってわかってもらう機会をいかにつくるかが大切です。大学生にIchigoJamの話をすると、「これを子どもの時にやりたかった!」ってみんな言います。きっかけを小学校のうちに提供できればと思っています。
2017年度の取り組みとしては学校の先生にプログラミングの教え方を教えました。そこで、先生たちが子どもたちにも教えていけそうだと思いました。

伊藤
現場でも先生がプログラミングを教えられないのではないか、あるいは仕事の負担を増やすことになるのではないか、と問題視されることがあります。鯖江市では先生方からの抵抗はなかったですか。

福野
確かに少しはそういう話がありました。まずは、私が教えている様子を見てもらいます。子どもが目をキラキラさせて楽しそうに学んでいる様子を見ちゃうと、「教えなきゃ」と先生たちも前向きに変わっていきました。

伊藤
プログラミング教育は押しつけられるものではありませんね。学校の先生こそ楽しく学ぶことが必要です。

福野
中学校で講演をしたことがありますが、勉強が好きな人と聞いても、誰も手をあげません。嫌いな人と聞くと、みんな手をあげました。勉強嫌いな大人が教えて、子どもが勉強嫌いになるのは当たり前ですよ。
あらゆる業界でイノベーションが必要じゃないですか。その業界だけではなく、新しいものを発見し実践することでどんどん良くなるという楽しさを、もっと大人が味わったほうが良いと思います。

伊藤
プログラミングに初めて触れる先生方も、新しい発見をしながら楽しく学んでいただきたいですね。子どもたち全員がエンジニアを目指す訳ではありませんが、プログラミングが必修となる意義についてはどのようにお考えですか。

福野
誰もが何かしら、コンピュータを使う機会はあります。これからの時代、ブラックボックスだから触らないでおこうというわけにはいきません。少なくとも、コンピュータを知っていれば、何が起こるか想像することができます。
「情報モラル」って言葉は大嫌いです。道徳と分けてしまっていますが、一緒じゃないですか。わざわざ、「ネット社会は…」とか言うのは最悪です。社会は社会ですから。

伊藤
本当はリアルやネットも一つの社会、同じ世界なんですよね。さて、ここで対談のテーマでもあるEdtechについてお伺いしていきたいのですが、Edtechについてどのように考えていますか。

福野
Edtechも「テック」とつけることが微妙です。人間は技術とともにありますが、わざわざ鉛筆技術とは言わないわけじゃないですか。コンピュータも鉛筆と同じように技術の一つで、普通のものなので、単に新しい教育ですよ。

伊藤
鉛筆も含め、昔からテクノロジーが教育をより良いものへと変えてきました。世の中でEdtechとして注目されているサービスでは、インターネットで学校よりも良質な講義が無料で受けられたり、コストをかけずに自ら学べる社会になっていますね。

福野
子どもの頃、学校の先生の話ではなく、進研ゼミをやったことでテストでも点数が取れました。それで、自分でどう学ぶかに気がつけました。
学びは、社会人になってからが本番です。子どもだって大人と同じ条件でWebが使えれば、自分でいくらでも勉強できるわけです。ネットで「この問題わかりません!」と情報発信すると、誰かが答えてくれるかもしれません。英語さえ勉強すれば、良質な教材が無料で山ほどあります。
自分に合った方法で試行錯誤しながら勉強するのが大人です。それを子どもたちに隠す必要はありません。だから、フルアクセスできるパソコンを子どもにいち早くあたえることが必要です。

伊藤
子ども達がコンピュータを使って自分でいくらでも学べる環境になってくると、学校の教員に求められることも変わってきますよね。

福野
まず、コンピュータの本質を大人がまったくわかってないですよね。「100円のコンピュータがどれくらい計算できる?」という質問をほとんどの大人が間違えます。(5,000万回/秒)
1キロ先のコンビニか100キロ先のコンビニかという桁以上に、間違えるわけですよ。
コンピュータについて表面的な理解だけで教えることには、結構危機感を持っています。
プログラミング教育に熱心な校長先生が「子どもはランドセル担いてタイムスリップすることだ。」とお話されていました。それはかわいそうですよね。

伊藤
私がいた頃と今と、学校の本質的なところは大きく変化していません。では、学校の役割はどのようなところだと思いますか。

福野
仲間と出会えるというところです。人間関係も学ばなければいけないので、たくさんのことが経験できるようになったら良いと思います。PBL(プロジェクト・ベースト・ ラーニング)のようなものをガンガン取り入れていった方が、より実践的な学びになり、子どもたちも楽しく学校に通うと思います。
昔の子どもは、学校行きたくてしょうがなかったようです。本も満足に手に入らない時代は、教科書や先生の話は超新鮮な情報として子どもに伝わったのでしょう。今ではWebに情報があるので、先生も辛い立場だと思います。そこを無理して先生とは言わずに、子どもたちのメンターになった方が良いですね。

伊藤
公教育のあり方自体、見直す必要がありますね。福野さん、本日はありがとうございました。

福野
ありがとうございました。


伊藤陽平
伊藤陽平

新宿区議会議員
30歳最年少の新宿区議会議員。立教大学経済学部経済政策学科卒業。大学在学中にIT企業を設立し、代表取締役に就任。Webアプリケーションの開発やWebマーケティング事業を展開。 ブロガー議員として365日年中無休でブログを更新し、多数のメディアへ寄稿する。また、日本初のAI議員として機械学習を議会活動で活用している。

伊藤陽平の記事一覧