【第2回】CoolTokyo~ヒートアイランド現象緩和策を提案する!


今年も夏本番となってきたので、前回に引き続き都心のヒートアイランド現象の緩和策について、突飛な2案を紹介させていただく。同現象の説明は国土交通省 ヒートアイランド・ポータル が解り易い。

ヒートアイランド対策

「各種のヒートアイランド対策がどの程度、屋外・地上での体感温度などの低下に効果があるのか」については、気温、湿度、風速、及び黒体放射(赤外線)などの物理をシミュレーションして評価する研究もおこなわれている(註:太陽光の反射については一回まではシミュレーションが実用化されているが、複数回反射するシミュレーションは実用化されていない)。なお、涼しく快適な都市環境の実現については、日本建築学会( https://www.aij.or.jp/ )によるクリマアトラス(都市環境気候図)に関する調査研究の実績が歴史的にあり、それを都市計画に活用する検討が行われている。さらに、日本に先行してドイツでもクリマアトラスに基づいた都市計画が市民参加型の作業を通して策定される

その1:海洋深層水による直接冷房

館山沖十数kmの水深千mから海洋深層水を大規模に汲み上げる案については前回紹介したとおりであるが、その深層水を一部、都心まで送水して、道路の下を通し、路面を冷やしたり、都心でのビル空調の冷房に直接的に利用することを提案する。

なお、冷房目的だけで深層水を汲上げて都心まで送水するのはコストがかかりすぎるが、火力発電所の低温側熱源として利用するために汲み上げた深層水の一部を冷房に利用するのであれば、発電効率の向上が深層水の取水・送水コストを上回る。

その2:再帰反射の日射への応用

夏に地表付近の気温が高くなるのは、太陽光が空気を直接暖めているのではなく、一旦、太陽光が地面を熱して、熱くなった地面が直上の空気を続いて温めるという過程を経ている(可視光は大気をほとんど素通りするが、温まった物体が放射する赤外線は大気に吸収される)

そこで、太陽光が地面に到達しない簡便な方法があれば、地面が温まらず、地表付近の昇温も抑えられる。さて、都心はビルが多く、太陽光は、鉛直な壁面や窓ガラスで反射され、下方の地表へ向かう。いわゆる照り返しである。太陽仰角が低い朝夕の時刻には、向かい合った鉛直な壁面や窓ガラス同士で合わせ鏡となって複数回反射した日射が地表に達するため、意外に陰にならない。

そこで、壁面に入射した太陽光をできるだけ太陽の方向に反射できれば、地上付近を加熱しないで済む。再帰反射を使えば、これが簡単にできる。再帰反射には複数の方式があり、それを応用した特許も多いが、最も単純なのは直角蛇腹形状であろう( https://doi.org/10.11286/jmr1988.20.17 )。図では二次元的に説明しているが、実際には三次元版に拡張できる。この他にも、交通標識に用いられているようなガラスビーズによる再帰反射を応用した再帰反射材や再帰反射塗料も市販されている。また、窓ガラスに張るタイプの熱線再帰フィルムも市販されている。

「もしも太陽の反射光の一部が光害になったら」と危惧する向きもあるかもしれないが、2013年に東京地裁で「太陽光発電パネルの反射光が受忍限度を超える」という原告の訴えに対し、「反射光の強度が、他の屋根材と比べてどの程度のものかが明らかでない」と棄却された例がある。したがって、複数の反射光が近隣の建物の窓の一箇所に重なって射込む等の特殊な条件がそろわない限り、太陽の反射光が光害と認定される惧れ(おそれ)は少ない。

なお、壁面に再帰反射を応用すると、路面の夜間照明も効率的・省エネになる。


角田晋也
角田晋也

マクロエンジニア(http://www.jame-society.jp/)。国立研究開発法人海洋研究開発機構地球情報基盤センター調査役。
東京大学教養学部基礎科学科第二(システム科学)卒業後、東京大学大学院在学中に米国シカゴ大学大学院Department of Geophysical Sciences留学(修士)、現在の職場に就職1年後博士(東京大学)。気候変動研究として北極海・インド洋他、国連海洋法条約の「海洋の科学的調査」、及びベクトル型スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」の利用推進等を経験した。環境データの流通促進に取組中。

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