共和党大苦戦、オハイオ州12区補欠選挙結果が示す2018年・中間選挙情勢


8月7日オハイオ州12区補欠選挙は共和党候補が辛勝することに

8月7日、共和党の現職議員が任期満了前に離職することに伴う補欠選挙がオハイオ州12区で実施された。同選挙区は基本的には共和党にとっては金城湯池であり、共和党候補者が民主党候補者を下院議員選挙では毎回1.5~2倍の得票差をつけて下している選挙区である。

同選挙区は1980年半ばから共和党が常に勝利を続けてきており、2008年の大統領選挙時にオバマがマケインを破った時に一度だけ数字がひっくり返った時ですら、下院選挙区は共和党現職が危なげなく当選を果たしている。(トランプもヒラリーに11%差をつけて勝利している。)

しかし、今回の補欠選挙では両者の差は僅か1754票(0.9%)しかなく、共和党・民主党候補者はほぼ互角の戦いを演じることになった。左派系の緑の党の1127票が民主党側に流れていれば更に際どい僅差の戦いとなっていたことだろう。(なお、8月18日まで暫定投票3435票、不在者投票5048票のカウントが残されている。)

僅差の原因は「共和党支持者の動員失敗」にある

前回「2018年米国中間選挙(下院)を巡る共和党・民主党の攻防」という記事でオハイオ州12区も接戦選挙区として取り上げたが、ここまで共和党が苦戦したことは極めて示唆深い傾向を示していると言えるだろう。

そこでまず、同地区における大統領選同時選・中間選挙の本選挙・予備選挙参加者の数字を見てみよう。*()内は予備選挙参加者

2010年(中間)共和党150,673 (60,932) 民主党110,307(uncontested)

2012年(同時)共和党233,869(93,170)  民主党134,605(20,477)

2014年(中間)共和党150,573(46,186)  民主党61,360(18,259)

2016年(同時)共和党251,266(128,173)民主党112,638(48,537)

2018年(補選)共和党101,574 (68,802)民主党99,820(45,011)

今回の選挙は人々の関心が薄く投票率が激減する中間選挙の年、しかも補欠選挙であるため、両党の支持者の出足は当然に鈍くなるものだ。しかし、実際に投票率は今回の補欠選挙で大幅に下がったのは共和党支持者だけであり、むしろ民主党支持者が積極的に投票に行っていることを示している。

民主党支持者は同選挙区では元々予備選挙に参加しない傾向(そもそも予備選挙参加者が1名しかいないか、泡沫がもう1名出てくるだけなので盛り上がらない)があり、共和党現職議員相手の捨て選挙区扱いなのでわざわざ予備選挙に足を運ぶ人は少ない。

一方、今回の補欠選挙では共和党側も新人候補者が出てくることから、共和党も民主党も多くの人間が予備選挙に立候補して盛り上がりを見せることになった。

ただし、実際に本選挙まで盛り上がりが続いたのは民主党側だけであり、共和党側の盛り上がり方がイマイチであったことは数字が示している。共和党側は予備選挙の盛り上がりを補欠選挙本選の動員に繋げることに失敗したと言えるだろう。

オハイオ州12区は共和党の内部分裂を象徴する選挙になってしまった

オハイオ州12区は離職する現職の前はケーシック州知事(現職)の地盤であった。ケーシックは共和党主流派に属する人物であり、反トランプの旗を現在でも降ろしていない政治家である。ケーシックも自らの地盤で候補者を落とすわけにはいかないので、補欠選挙に向けて必死に選挙区を走り回ってきた。ケーシックは「本来は楽勝だったはずなのにトランプのせいで苦戦した」という趣旨の発言をしている。

今回の共和党候補者はTroy Baldersonというオハイオ州議会の上院議員であった。この人物は経歴を見ればわかるように、ケーシックの懐刀であり、主流派、つまり反トランプ系の候補者である。一方、共和党予備選挙にはMelanie Leneghanという女性の保守派の候補者も出馬していた。彼女は自らを「護憲派保守、キリスト教保守、そいてトランプ保守だ」と明言しており、予備選挙で激しいバトルをTroy Baldersonと繰り広げた。(実際には、Melanie Leneghanは財政保守派のフリーダムコーカスからの支援を受けており、本質的な意味でトランプ支持者と言えるかどうかは不明だが。)そして、選挙結果を見る限りではこの両者の間の亀裂はかなり深かったように推察される。

米国では一般的には保守派・トランプ支持者ではなく主流派候補者が本選の候補者として接戦州では有利と言われている。しかし、そのような見解は低投票率の中間選挙において、州全体を相手にする上院選挙では正しいかもしれないが、選挙区が限定される下院選挙では必ずしも正しくない。今回の補欠選挙は低投票率時に強みを発揮する保守派のグラスルーツ(草の根動員)が機能しなかったことは明白であり、中間選挙に向けた深刻な党内分裂を象徴する結果となったと言えるだろう。

いずれにせよ、共和党内の分裂傾向は激しさを増すばかりであり、反トランプで結束する民主党にかなり苦戦することは確かなようだ。11月の中間選挙に向けて共和党は重い課題を背負ったと言えるだろう。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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