日本ボクシング連盟の経営分析:歴史の男、カリスマ山根さん【延長戦】


【出典】日本ボクシング連盟HPより

「切腹する」
「山根明を差別しているんですか? スポーツ庁長官! 五輪大臣!」
「私は、歴史に生まれた、歴史の男でございます」
「僕は世界からカリスマ山根と呼ばれてる男ですから」

ついにボクシング連盟終身会長の山根明さんが辞任した。

カリスマ、ついに世間の左ストレートにダウン!

反社会的勢力との関係を認めてしまったことがその失敗の原因だろう。
明石家さんまさんが「あれには負ける」という個性の強さ。喋り方、雰囲気、態度など、とっても情があって仲間には優しそうだが敵には対決姿勢という部分も垣間見れた得意なキャラクター。

組織の代表としては世間的にはアウトであろう。

ボクシング経験のない、ヤクザの舎弟が辣腕を振るい、権力を握り、出世階段をあがる。一大会で複数メダルを獲得するという成果を踏まえ、権力を拡大し、その過程で「私物化」が進む。その過程で、スポーツにとっては存在意義を疑わせるような判定を覆しかねないプレッシャー(「奈良判定」「山根マジック」)などを経て、終身会長に!

そんなストーリー。筆者の知り合いから、済州島出身でとっても魅力的な人物とは聞いているが、世間はそれを許さないこともまた確か。

「複雑奇怪なアマチュアボクシング界が、彼のような人物を必要としていたのも事実なのだろう」
「国際ボクシング協会(AIBA)のアジア圏のリーダーの地位を築いた」

【出典】岩崎大輔「辞任表明・山根会長の「剛腕と功罪」~プロボクシング界重鎮が明かす」
との意見も。

ただし、告発側も「元暴力団の集まり」「前科モンの組織」などと言われているので、まさに権力闘争。

泥仕合のゴングはなったのかもしれない。

会計面を分析

さて、このボクシング連盟の財務データを見てみよう。
27年度以降オープンになっていないが(【編集部注】文章公開時、28年度の会計報告データがアップ)、27年度の「正味財産増減計算書内訳表」「貸借対照表内訳書」を見てみた。

・経常収益:1億1147万円、なかでも4200万円がJOC助成金
・雑種益:977万円、なかでも選手手帳(の収入)で390万円

・経常費用:9950万円、なかでもナショナルチーム強化合宿費が2289万円、チーム派遣費1592万円
・ちなみに、人件費支出は1315万円、うち給料834万円、賞与360万円

という財務状況である。JOCの助成金が4割程度と、アマチュアボクシングの苦しい状況が明らかになる。

・会費/会員数
・人件費/職員数
の指標で見たいところだが、正式な数値がわからないので、推測だが、職員数についても、もめている職員、「山根さんはいい人」といった職員で2名いたと仮定して、考えてみても、それほど「ヤクザ組織」というイメージではなく、常識の範囲内である。

ちなみに、理事会開催は、新大阪ワシントンホテルプラザ毎年のように開催されている。それほど高級なところでもない(失礼)が、そのほかを見ても、苦しい現状が推察される。

まとめると、財務面では意外にも、よく頑張っているように思える。
私腹をこやすどころか、お金に相当苦労しているのではないか。

人事面を分析

副会長は東大ボクシング部出身の弁護士である吉森さん。個人的には弁護士は聖人だとはまったく思いませんが(笑)、この方が副会長でこうした組織が回ってしまうのが恐ろしいところ。

組織で見ると
副会長5名
常務理事7名
理事12名

である。全国的な組織であるので、それほど多いとも言えない。

会長の任期だが、過去の会長の任期を計算したが、
7代 小沢佐重喜:14年
8代 山田光成 10年
9代 柴田勝治 15年
10代 小久保勘太郎 年
11代 川島五郎 8年

である。山根さんは「終身会長」という割にはそれほど長い権力というわけでもない。ちなみに小沢佐重喜さんとは元衆議院議員であり、あの小沢一郎さんのお父様である。

定款を見てみよう。普通にまとも。テレビで「通報と相談の制度はある」と吉森副会長は発言していたが、それなりの制度もあるようだ。

ただし、この副会長、「最も大事なルールが守られているのか怪しい」
という存続自体危ぶまれる理念を守れない組織的危機を放置していたという面もある。333人もの反対が出てくるくらいの問題、知らないわけないだろう。

多くの人が「ルールが機能していない」状況への危惧を持っている状況をルールの番人がその状況を放置していたといっても過言ではない(厳しいかな)。内部通報、告発もつぶすのもまた弁護士でもある。

組織としてそれなりに運営。しかし・・・・

組織としては、それほど「やばい組織」ではないことがわかった。会長の問題はおいておいて、まともに運営されていることがわかる。

ただし、筆者が問題視ししてるのは、「山根マジック」「奈良判定」についてである。もしそんなことがあったら、スポーツの正当性を棄損してしまうからだ。そこを常に問うていかなければならない。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、オムニメディア代表、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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