フィンテック最前線・第6回 仮想通貨における偽ニュース


伝統的な資産クラスである株式や債券、さらには通貨や商品を素材にした各種デリバティブといった金融商品は、少なくとも日本においては金融商品取引法という法整備が施されている。

株式や債券といった有価証券は資金調達を目的とするため、世界中ほとんどの国で法整備があり明確となっている。一方で、今世紀初頭から整備され始めた各種デリバティブは、開発国においては禁止であったり、自由であったりと法の運用はまだら模様な様相である。

伝統的な資産クラスである株式や債券は、その販売方法などがある程度規制されており、「絶対に損しません」、「元本は安全です」や「値上がりします」という煽った販売手法は違法とされている。

各種デリバティブは、法整備がある国は伝統的な資産クラスと同様、法整備がない国は原則禁止、そして、法整備がなくて自由という国は野放図な販売手法が依然としてまかり通っているのが実態だ。

では、仮想通貨はどうであろうか?各国の法規制は全く統一されておらず、物と判断されたり、通貨同様の決済手段であったり、有価証券に準ずる金融商品であったりする。

現時点において、このように法整備がなされていない資産クラスの場合、ただ「儲かりそうだから」とか「変動があるから」という理由だけでは、投資家の資産を預かるような機関投資家が参入する段階ではない。

しかしながら、特に表現の自由という切り口で、「著名投資銀行出身者が160倍にもなるという仮想通貨を使った資金調達を支持している」や「大手運用機関が仮想通貨建の金融商品に投資配分を行う予定」などといった煽り記事、偽ニュースが、身元不明の媒体から瞬く間に拡散されている。

こういった偽ニュースはなぜ発生するのであろうか?実は、広告収入という偽ニュース発信者特有の収入源が存在する。

この分野は、金融商品などともほぼ無縁で、「表現の自由」によって保護され、さらにオンラインにおいては、日本語の報道であっても、海外からのサーバーにより、国内法規制というものからはるか遠い場所から発信されている。

また、こういった煽り報道は、日本の代理店を複数介在させる形でいつの間にか海外の主体によってなされ、海外においては「守秘」という厚いベールで守られている。

広告主を規制すべしという意見もあるが、広告主には、どれくらいの層に発信できるのかという数字しか見えてないため、広告主への厳しい規制は不均衡かと思われる。

これらは恐らく止められないし、規制によって効果がある部分とは思わない。広告という切り口で、人々がその記事を踏めば、収益が発生するという事業モデルはメディアにおいて根深く存在しており、もどきを含めた金融関連だけを抜き出すことはもはや不可能であるからだ。

結果として、これらの煽り記事に関しては、それを見る人々の自主的なリテラシー向上による抑制でしか対応し得ないと小職は考える。


鬼澤礼志
鬼澤礼志


明治大学卒業後、英National Westminster銀行(現RBS)にて当時最先端の金融工学に基づくトレーディングにてメッセンジャーとしてキャリアを始める。以降Swiss Bank Corporation, UBS, Deutsche Bank, Credit SuisseにてLondon, Singaporeなどでの勤務を経験。その間、日本に外国為替の電子商取引を導入し、当時のFX(外為証拠金)業界へのマーケットメイクを行う。これにより金融における電子化並びに効率化が高まった。引退後は豪州での資産管理会社などを通じ、ブロックチェーン関連業界に金融技術を導入している。

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