組合立小学校って何???~「圏域」論争一考察


「圏域」

複数市町村で構成される行政主体で、それを新たな行政単位に位置付ける議論を本格化させているらしいのです。第32次地方制度調査会第1回専門小委員会(7月31日開催)での議論が話題になっており、メディアでも「圏域を新行政単位とする議論が柱の一つとなる見通し」「都道府県や市町村とは異なる実質的な第3の自治体構想」との指摘がされています。

地方自治体の事実上の廃止、合併などにつながるとの懸念があるようで、反発の声もでてきています。公共施設の共同利用くらいしか、自治体の枠を超えた連携が進まないことが背景にあるようです。

たしかに、自治体で一緒にやってもいいじゃねえの?という施設やサービス、事務事業は山のようにあります。しかし、これまでの事情や経緯を踏まえると、なかなか一歩を踏み出せないのも事実かと思います。

組合立小学校???

しかし、現場では、自治体を超えた「組合立小学校」というものもあるのです。
国立、都立、府立、県立、市立、町立、村立、私立・・・でもない「組合立」とはなんでしょうか。

「組合」とは、地方自治法284条2項により設置される一部事務組合(自治体を超えて一緒にやる的なもの:ごみ収集とかがおなじみ)です。複数の市町村が共同で学校を立ち上げ運営しています。

その数、なんと全国に10以上もあるそうです!。

あなたの家、実家の近くにもあるかもしれません。

八戸市階上町組合立田代小学校(八戸市・階上町)
布施学校組合立布施小学校(いすみ市・御宿町)
辰野町塩尻市小学校組合立両小野小学校(辰野町・塩尻市)
岐阜県揖斐郡養基小学校養基保育所組合立養基小学校(池田町・揖斐川町)
牧之原市菊川市学校組合立牧之原小学校(牧之原市・菊川市)
相楽東部広域連合立笠置小学校(和束町・笠置町・南山城村)
相楽東部広域連合立和束小学校(和束町・笠置町・南山城村)
相楽東部広域連合立南山城小学校(和束町・笠置町・南山城村)
播磨高原広域事務組合立播磨高原東小学校(たつの市・上郡町・佐用町)
南あわじ市洲本市組合立広田小学校
高知県宿毛市愛媛県南宇和郡愛南町篠山小中学校組合立篠山小学校(宿毛市・愛南町)
日高村佐川町学校組合立加茂小学校(日高村・佐川町)
益城町及び御船町中小学校組合立袴野小中学校(益城町・御船町)

やればできるのです。というか、やらざるをえなかったのかもしれませんが。
なんと驚くべきことに、県境を超えて、高知県宿毛市と愛媛県南宇和郡愛南町の取り組みもあります。
知ってましたか?

「定住自立圏」「連携中枢都市圏」いろいろあるが・・・

「圏域」に似たものが、すでにたくさんあります。

【出典】総務省 

定住自立圏」:簡単に言うと人口5万人程度以上の都市が「中心市」になって、生活・経済面で関わりの深い「周辺市町村」と協定を締結し、インフラ整備や生活の確保などを一体となってやっていこうというもの。

「連携中枢都市圏」:簡単に言うとある市が「連携中枢都市」となり、周辺市町村と連携協約を締結、「連携中枢都市圏」を形成し、圏域の活性化をすすめるというもの。経済成長を考えましょ~というような感じ。

域内の人口に応して普通交付税として措置される面もあり、これまでも総務省を中心に動いてきました。

しかし、こうした自治体同士のなかなか進んでいないことも確かです(総務省の方は頑張っていると思いますが)。

そりゃそうですよね。小さい自治体にかかわる、ある特定の人々にとっては、メリットがありません。また、将来、「そうせざるを得ない」「仕方がない」とわかっていても、人間は「変わる」ことには心理的抵抗があります。

事態を打開するチャンスとはいえ、平成の大合併時に起きたことを踏まえるとその気持ちも理解できます、

なので、この仕組みを広めようとする側も苦労するかと思います。相手の事情とプライドを鑑みない一方通行での「命令」、餌をぶらさげることやソフトな脅しを含めた「お願い」では感情的反発しか残らないとも思いますし、相手の感情や利害もあり「誘導」するのは非常に難しいものです。

こうしたジレンマがあります。

求められるのはまず「利害」の可視化

行政改革にかかわってきた身として最近感じるのは、誰にメリットがあるのか、デメリットなのか、利害関係を「可視化」し、将来がどうなるかを本音で未来を見据えた議論をしていくことしか答えはないのかという気がしています。

行政や議員はその活動を進めていただければ幸いです。

お互い様の精神で、少しでも譲り合うことで何かいい方策を見つけていきたいものです。住民にとっては自治体という「看板」が大事なのではないのです。

「大人の事情」「感情」「しがらみ」「主導権争い」といった権威主義的な問題を乗り越え、未来のために丁寧な議論をすすめられるかが問われることになるかと思います。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、事業創造大学院大学 国際公共政策研究所 研究員・ディレクター、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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