2022年問題、多摩地域の生産緑地の宅地化を進めるべきだ


(東京都HPより引用)

改正生産緑地法が1月1日に施行したことで、従来までは生産緑地として固定資産税などの優遇を受けてきた農地の適用下限面積が500平方メートルから300平方メートルに引き下げることができるようになりました。それを受けて都内約20市で下限面積の引き下げを意図し、更に小規模な農地が同制度の適用を受けられるように条例改正が行われようとしています。

1992年に改正された今回の再改正前の法律による生産緑地は指定から30年するまで宅地転用ができない、という優遇措置に対して農作業を義務付ける仕組みが組み込まれていました。その結果として、2022年に同法による期限が切れるために2015年の東京都調査では約4分の1の生産緑地が宅地転用される可能性が指摘されています。東京都内には東京ドーム・約700個分の生産緑地が存在するため、その4分の1である約175個分が宅地として供給される見通しです。

ただし、改正生産緑地法では市町村が指定し、10年間の期間延長を実施することができるため、農地持ち主の意向との利害衝突が発生する可能性もあります。さらに、改正生産緑地法では、農地の作物を利用する形でレストランの運営などが可能となっており(国家戦略特区での検証済)、農地の付加価値を高める工夫を実施することが可能となっていますが、レストランなどは固定資産税の減免措置を受けるわけではないので、どの程度まで効果があるかは未知数となっています。

筆者は、このような生産緑地への優遇政策は必ずしも必要がなく、限られた土地利用の付加価値を高めるために、生産緑地を廃止または適用面積下限を引き下げることなく、できるだけ多くの土地に適正な固定資産税の課税を実施するべきであると考えます。

たしかに、生産緑地が地域に対する住環境面でプラスになるという指摘も理解できます。しかし、現実には2011年に江戸川区で問題になったように税制優遇を受けているにも関わらず、労働力不足を理由に無断で耕作放棄をしていた事案も存在しています。都市部で農業を維持することを前提とした土地利用に無理がある可能性が高く、それであれば有効な土地利用を阻害する規制措置を設けることは間違いです。

生産緑地に指定されている土地が正規の固定資産税の課税対象となると、地主層がそれらの税負担を回避して売却または有効利用を行うように転換します。

その結果として、大量の宅地開発の候補地が提供されることを通じて、東京に新たに住もうという人々のための家が生み出されます。これは住宅コストの引き下げにつながるために非常に有意義なことです。

また、生産緑地を多く抱える多摩地域はニュータウン時代のツケによる急速な高齢化を迎えつつあります。生産緑地を新たな宅地として転換することは、若年世代の生活環境改善を重視する政策を打ち出すことで人口構成を反転させるきっかけになります。子育て事業者の参入規制緩和や子育て世代に対する政策減税の実施など、生産緑地の宅地化による固定資産税増加を有効に利用することを併せて検討すべきです。

生産緑地の適用面積の下限を引き下げて固定資産税減免と引き換えに土地利用を制限することは、生産緑地が存在している地域への新興住民の流入を抑制することに繋がるために都市としての発展を阻害することになります。

2022年、住宅の大量供給による供給過多が予測される未来において、若年人口を惹きつける魅力ある都市づくりの重要性は更に増すことでしょう。宅地開発による空き家懸念などについては宅地開発を制限することによる事前規制ではなく競争力がある子育て施策の実施などの前向きな施策によって対処すべき問題です。


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渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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