【マッドなチャイナ政治経済論考~極東のビッグブラザーとの踊り方~】第1回:マッドサイエンティストがみる巨大な紅船(あかふね)


模倣パクリ天国、毒ギョーザ事件、反日デモ、言論統制、不動産バブル崩壊、恐ろしや中国共産党独裁体制っ!といったネガティブイメージのオンパレードとして日本国内大衆レベルで語られてきた21世紀初頭のチャイナ。2012年には民主党政権時代の尖閣諸島国有化に端を発して、我が国とチャイナ両国の外交関係も一気に冷え切りました。
ところが、2014年11月に北京で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)での安倍・習近平会談が行われたのをきっかけに、「中国崩壊論の崩壊」とも揶揄されたように、両国の関係は雪解けムード風味。でも対中包囲網は?米中貿易戦争大爆発だし・・・(今ココ)。といったところです。

というわけで、今回からとりあえず(?)数回にわたって執筆させていただく中川コージのチャイナ分析。当たるも八卦当たらぬも八卦・・・とまでは申しませんが、読者のみなさんが超巨大な紅船(あかふね)をウォッチするための豆知識になっていただければ幸いです。
いや、真面目に申せば、チャイナがデカすぎる上に、政治がベールにつつまれすぎているんです(情報公開度が極端に低い)。独立した研究者らフリーランスのチャイナウォッチャーが一次情報にあたろうにも局所的すぎて手に負えず、組織的に動けるハズの大手のマスコミ記者も「北京総局」やら「記者(証)」という権限をチャイナ当局から付与されているカタチですからいろいろと報道に制限がかかるわけです。1万ピースのジグソーパズルに数百個のピースを集めても、まーったく全体像がつかめないわけです。とにかく巨大・・・。

そんなわけでして、こちらの連載は、ひとりのマッドサイエンティストのサイケデリックなチャイナ分析として流し読みしていただけると幸いでございます。

チャイナ的「自由」とは

政治を語るにも経済を語るにも、まずは総論から、ということでまいりましょう。
チャイナに一般市民の「自由」がないということはありません。日本人の誤解がおおいところです。例えば、「中華人民共和国公民は、言論、出版、集会、結社、行進、デモの自由を有する。」と中華人民共和国憲法第三十五条に明文化されています。ところが、民主集中制という中国共産党指導部から下方に伸びる完全なピラミッド型の上意下達権力構造の肯定が同憲法第三条に記載されています。これによって、あらゆる中国国民の活動は、「(中国共産党指導部が許可する限りにおいての)自由」が保証されているということになります。
そう、この民主集中制下における自由というものが、すべてのチャイナ国内外力学の源流です(!)。チャイナに関わる経済活動はチャイナ政治(≒中国共産党指導部)による肯定をうけてなされなければならないし、チャイナ国内統治機構も中国共産党指導部によって規定されるものです。超絶権力!

で、中国共産党指導部というのは、ご存知の通り習近平総書記を最高指導者として、政治局委員25名(うちトップの常務委員が7名)、続いて中央委員・中央候補委員が約400名、党大会代表約2000名、中国共産党員全体は約9000万人となります。いわゆる指導部というのは政治局常務委員の7名で、「チャイナ(パワー)セブン」と呼ばれています。9000万人の党員ですよ!中国人の友人曰く、「世界最大の○フィア組織だよww」ですって。1名ないしは7名が14億人という世界最大の組織を動かしています。こわっ!

あーやっぱ、チャイナって庶民の自由がないなぁ、キッツいよなぁ、と思われる方もおおいでしょう。ところがそれもまた違っていて、「上に政策あれば下に対策あり。」のお国柄。長いこと皇帝や宦官(官僚)が取り仕切る政(まつりごと)と庶民生活がうまく分断されていたものを、そのまま現代にもスライドしてきたようなもんなんです。庶民は庶民でうまいことやっている。
確かに、現代チャイナはガチガチな「民主集中制下の自由」なわけですが、一方で中共指導部も大衆のあらゆる欲求・活動を抑えつけたら、革命につながるということを歴史で知っている。だから、あえて法律や行政指導で白黒つけずに一般大衆(ベンチャー企業の創業期事業も含む)の脱法行為やらを泳がせているところがあるんですね(これが、かつて模倣大国・海賊版コピー品をチャイナ政府が取り締まらなかったことの一因でもあります)。
法治国家内の意図的グレーゾーン。プロレタリア独裁アナーキズム風。完全無欠のディストピアに設計されたアノマリー・・・。

今般、日本の政治で流行った「忖度構造」を何百歩も先にすすめたような、この中共指導部と一般庶民の「阿吽の呼吸」みたいなもの、そして強烈な「民主集中制下の自由」を混ぜ合わせたものがチャイナ社会全体の空気感です。決して抑圧の雰囲気だけが蔓延しているわけではない。これが、本連載で言いたいことすべてに通じる本質になっています。(続く)


中川コージ
中川コージ

戦略科学者
SF愛好家で非電源ゲーム(ボードゲーム・カードゲーム・トランプなど)コレクター。ゲームの本質を見極めるため「ゲーム≒戦略」研究の道へ。慶應義塾大学卒業後、英国・中国に留学。北京大学院で日本人初の経営学博士号を取得。日本・中国・米国を中心に世界のAI・ロボット産業、コンテンツ産業、宇宙産業、安全保障サイバー戦略を研究する。中国人民大学国際事務研究所客員研究員。経営学博士。

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