「権威主義社会ニッポン!」【第4回】中央官庁~障害者雇用率水増し問題


実態と建前

先日、厚生労働省は中央省庁の8割にあたる27の行政機関において、3460人が水増しされていたことを発表しました。中央省庁でのしょうがい者雇用率の水増しが示した現実。ルールを制定し、民間に数字の達成を強いていたわけで、相当の「スキャンダル」といっても過言ではありません。
The Urban Folksでは私も明智さんもその実態をレポートしてまいりましたが、今回は別の視点から考えてみたいです。

現状の政権が悪いわけではありません。42年間続いてきたということですから、最初の政権に責任はあると考えます。

なぜか。

おそらく最初の段階で、

・必要な確認をせず、勝手に算入
・「プライバシーへの配慮」を理由に、障害者手帳の有無を確認しない
・医師の診断書を確認しない

といった運用をしてしまったことが原因の1つかと思われます。

そもそも現状を踏まえた目標数値だったのか?

法律制定時に、そもそも達成が困難だったのではないでしょうか。法律を作る前に現実の数値を確認し、達成が可能かのフィージビリティスタディ(実行可能性調査)はどこまでしたのでしょうか。

今回、色々と調査しましたが、当時の状況はなかなか見えませんでした。

さらに、「法律でこの障害者雇用については義務付けられているのですよ。民間企業は義務付けられているのですが、国の方は実は適応除外というか対象になっていない」と高橋洋一さんがniftyニュースにて語るように、当初の段階で、適用除外にしてしまったことも要因の1つでしょう。

なぜ改善は進まなかったのか?

そもそも自分たちを疑わない性善説で制度が設計されていることが問題ですが、先日の私の拙稿で示したように、

<行政>
現場から「数字は守れない」「現実的ではない」という声がでなかったのでしょうか?
実態と建前の差を「おかしい」と議論が出てこなかったのでしょうか?
これまでの専門的な審議会で議論されたことはなかったのでしょうか?
管理部門が数値をチェックしたりすることはなかったのでしょうか?
なぜ企業に働きかけをするときに自分たちを確認してみようと思わなかったのでしょうか?

【出典】「厚生労働省に提案!~しょうがい者雇用率の水増しの抜本的な対策はここにある?」

おそらく、こうした議論は人事部門内で本当になかったのでしょうか。

多分あったと思います。しかし、改善をすれば、実態と建前の差が明らかになり、対応が面倒で、となり誰も取り組まなかったのが現実ではないでしょうか。

でもそれを責めるわけにはいきません。現実的な目標を法律で課したことそのものに、原因があるからです。

しょうがいしゃ雇用枠の採用を

解決策としては、しょうがいしゃ雇用枠の採用が現実的でしょう。AIやRPAなどの活用など、比較的しょうがいしゃの雇用もしやすくなっていると思います。

今回の「事件」はまさに「権威主義」だと思っています。自分たちに甘く、他人には厳しいとは、かいよりはじめよ!と誰もが思ってしまったという意味で、そして、行政の取り組みの信頼を棄損したという意味で、行政府にとって大きな禍根を残しました。

行政を批判するのは簡単ですが、原因を徹底的に追及し、新たな現実的な運用を進めていった貰いたいものです。厚生労働省には頑張ってほしいものです。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、事業創造大学院大学 国際公共政策研究所 研究員・ディレクター、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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