スポーツ現場のリアル・最終回 指導者とは


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今年開始し、ワールドカップをまたぎ、続けてきましたスポーツ現場のリアル、今回で最終回になります。

今回、日本体操協会のパワハラ問題が明らかになっています。「全部ウソ」と18歳の少女に対して大の大人がいうのも大人げないですが、この背景として第一に指導者とはという問題、第二に、チーム移籍によって実績とスポンサー料獲得などが噂されている、「大人の事情」丸出しの悲喜劇がそこには見られそうです。

本日はこれらの要因を考えます。

指導者の存在がいかに大切なのか

指導者1つでイップスにもなってしまうし、たまに暴力行為する指導者であっても信奉してしまう、選手と指導者の関係は複雑なものです。それはスポーツだけではなく、多くの「道」につながるものかもしれません。

ある講演で、早稲田大学の彼末一之教授は
トップアスリートの要因は、
1.生まれつき(遺伝子)
2.環境(育ち、親、コーチ、チーム、トレーニング環境)
3.ハードトレーニング
であると述べられました。トップアスリートのレベルまで行けるかどうかは「どれくらいハードトレーニングに耐えられるか、モチベーションを持てるかにかかっている」とのこと。なかでも強調されたのは、指導者がいかに大事かを述べられておられました。確かに、優秀な指導者のもとには選手が集まります。

優秀な指導者は何が違うのか?最近のスポーツ指導者は大きくその要件が変わってきています。

□選手の能力を分析でき、選手にあった指導方法が企画できる
□選手にあったコーチング、ジャストなタイミングでの声掛けできる
□選手・チームの心理的なマネジメントができる
□自分の利益を優先せず、選手ファースト故に人間的に信頼できる
□子どもたちへの愛や熱意が深い
□自分なりの指導哲学を持っている

こうした条件が必要になります。プロ野球のヤクルトで「ID野球」で知性を示してくれた野村克也さん、私が尊敬するサッカーでいうと静岡学園サッカー部元監督の井田勝道さん、交流があり私に指導者論を教えてくださったファジアーノ岡山FC監督の長澤徹さん、高校野球で三重県の代表になった白山高校の監督などを見ればわかるかと思います。

武道では「3年かけて良い師を探せ」といいます。良い師に出会うことで、スポーツ人生が開けるわけです。

名指導者の言葉

「島原商、国見を全国屈指の強豪校に鍛え上げ、インターハイ優勝6回、全日本ユース(現・高円宮杯プレミアリーグ)優勝2回、高校選手権6回と、合計14回の全国制覇」を果たした名指導者の小嶺忠敏さん。

彼の「国見発 サッカーで「人」を育てる」の中に印象的な言葉がありますので紹介したいです。

選手の失敗を前に、コーチは何か言おうとする、しかし、小嶺さんはこう言います。

・ミスをしなければ選手は伸びない
・なぜ失敗したかを責めたら自分でトライしなくなる
・成功した時に誉めるとチャレンジし続ける

【出典】小嶺忠敏「国見発 サッカーで「人」を育てる」p72より抜粋

選手のアイデアとイマジネーションに任せる姿勢です。

また、静岡学園サッカー部元監督の井田勝道さんはこう言います。

真剣さのみが人を人とし、努力と汗のみが天才を創る

【出典】井田勝通「静学スタイル」p200より抜粋

こうした哲学と覚悟を持った指導者に人はついていくものなのです。それだけ指導者の存在は選手にとって大事かがわかりますし、協会や大人が立ち入れない領域もあるということでしょう。「信頼」「師弟関係」は一朝一夕には築けるものではありません。

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ボス政治から脱却を:少しの我慢が全体を繁栄させる

さて、そうした指導者と選手の関係をどこまで考えたのかというのが今回の体操協会の問題です。

「権威主義社会ニッポン」で連載してまいりましたが、今年は体育・運動関係の団体の問題が多発していますが、スポーツで圧倒的な実績を残したり、マネジメント面で実績を残した人が出世しやすい仕組みであることも背景にあるかもしれません。そして、スポーツで成功した方には「絶対に他人に勝つ」という好戦的な心理傾向が強いことも確かでありますので(それが勝利の元)、どうしても、権力闘争においても、イエスマンを周りに集め、ライバルをやっつけるような「ボス的」振る舞いをしてしまうのは仕方のないことだと思われます。今回問題になったスポーツは、体操、ボクシング、相撲と比較的個人競技が多いこともあります。

スポーツ選手の名選手には人格者が多いと個人的に思っていますが、今回話題になった方々はそうと言い切れないと思います。フォローしておくと、時代が求めている「先輩に従え」「理不尽だけど我慢しろ」といった日本軍の残滓的な精神が、時代遅れとなったことを認識できていないものだと思いますが。

個人的には「ボス」と呼ばれる権力者は、自分の利益や利権を少しの我慢するという行為がなぜ取れなかったのでしょうか?
ボス候補も知らない間に、ボスになってしまったんでしょう。権力は怖いものです。やはり、環境でコントロールするしかありません。組織運営のルール、オープンにすることなど、民主主義的な価値が大事でしょう。

1人がみんなのめに(ワンフォアオール)、戦いが終わったら仲良く(ノーサイド)・・・・
スポーツの精神がこれほど求められているときはありません。平成も最終年であり、東京五輪に向けてスポーツ界全体で改革していく時期かもしれません。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、オムニメディア代表、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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