場当たり的な外国人労働者受け入れ、日本に必要な「人材基本戦略」


政府がにわかに、外国人労働者の大量受け入れへと舵を切りました。

筆者は5年前から、国会の予算委員会や法務委員会で、外国人材を含めた国家の人材戦略について質疑を重ねていましたが、「まず明確にしておきたいことは、安倍政権として、いわゆる移民政策をとる考えはないということであります!」と答弁していた時代から考えると隔世の感があります。

昨今の人手不足は、急に政策を方向転換しなければならないほど、突然起こったことなのでしょうか?


【出典】衆議院予算委員会(筆者撮影)

そもそも日本には人材基本戦略がない

例えばプロ野球では、どういうチームを目指し、現状と近い将来どのポジションに人材不足があり、その穴を外国人助っ人で埋めるのか、他球団とのトレードやチーム内のコンバートで埋めるのか、社会人選手をドラフトで獲得するのか、高校生を2軍から育てるのか、選手の過不足を俯瞰しながら育成と獲得を行なっています。

ところが日本政府は「人材が唯一の資源」と言いながら、何十年も前から分かっていた少子化に手を打たず、STEM(理系)人材が必要と言いながら若手研究者の処遇を悪化させ、介護や建設は人手不足の状況をわざわざ作り、工場や店舗の自動化を進めず、外国人に頼らざるを得ない状況を招いてしまいました。

今後も起こる人材不足の問題を解決する第一歩として、人材基本戦略を立てることが必要です。

まずは人材需給の将来予測を

人材基本戦略で、まず行うべきは将来予測です。

いつ、どの分野の人材がどれぐらい必要になるのか?その頃には、その分野で働く人材がどれぐらい供給できているのか?何年後に、どの分野の人材がどれぐらい不足するのか?など時系列で予測を立てます。

外国から単純労働者を大量に入れるのであれば、これまで皆無だった、外国人を日本社会に馴染ませる社会統合政策を実行するための人材も同時に必要となりますし、自動化を推進するならそのための人材が必要になるなど、個別の政策が全体に影響を与えます。

長期的な人材不足は教育で

その上で、10年後~20年後に必要な人材については、教育政策で対応します。

もちろん、教育の目的は国家にとって都合の良い人材を作ることではありません。しかし、将来の社会に必要とされる分野をあらかじめ見通し、そこで活躍したいという人材を育てるのは悪いことではないはずです。

例えば中国は、2030年までのAI産業のロードマップを描き、今年から高校で人工知能の教育を始め、小中学校にも展開しようとしています。

筆者はもっと大きなくくりで、オックスフォード大学の論文で「20年後も無くならない仕事」に従事する「クリエイティブ人材」を、日本でも増やしていくべきだと考えています。


【出典】Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne「THE FUTURE OF EMPLOYMENT」より(注釈は筆者)

中期的な人材不足は、労働政策・外国人政策と自動化で

今後10年以内の中期的な人材不足は、労働政策・外国人政策と自動化で対応することになります。

まず、職業訓練や労働条件の改善で、必要とされる分野を目指す社会人や学生を増やします。

それでも足りなければ、外国人材を集めることになりますが、ヨーロッパの二の舞を避けるために社会統合政策を真面目にやれば、相当のコストがかかることが予想されます。

自動化技術の研究開発や、自動化投資へのインセンティブに税金を使って人材不足を防ぐことと、長所短所を比較検討する必要があります。

筆者は、単純労働力よりもクリエイティブ人材を海外から呼び込むべきだと考えていますが、日本の高度人材ポイント制は、十分にその効果を発揮しているとは言えません。

目先の人手不足は労働市場の調整で

目先3年以内の短期的な人手不足は、労働市場の調整で解消していくことになります。

政府は再就職支援、補助金によるインセンティブ、規制緩和を組み合わせて、必要な分野に人材が集まるようにします。

そもそも、急な人手不足で慌てないように、中長期で早めに人材を確保していくのが、人材基本戦略の目的です。

また、目先の一時的な人手不足なのか、今後10年続く構造的な人材不足なのかの見極めも重要です。

例えば、一時的な人手不足を外国人労働者で解消しようとすると、人手がいらなくなった時に大きな問題が残ります。

期限付き外国人労働者が定住してしまったのが、今のヨーロッパの移民問題で、「要らなくなったら全員を強制送還」などという乱暴なことは不可能です。

経済・労働・教育・外国人政策の根幹として

「10年も20年も先のことが予測できれば苦労しない」と言われるかも知れませんが、日本が人材立国を目指すのであれば、人材に関して将来を俯瞰も予測もしないまま、場当たり的な対応を繰り返して良いはずがありません。

予測はAIの得意分野で、今後飛躍的に精度が上がっていきます。

政府は「人材基本戦略」を立案し、社会の進展に合わせて毎年アップデートするという、経済・労働・教育・外国人政策の根幹となる仕事に着手すべきです。


井坂 信彦
井坂 信彦

前衆議院議員。行政書士井坂事務所代表
京都大学総合人間学部を卒業後、神戸のコンピューターソフト会社にて企画開発。25歳で神戸市会議員に全国最年少当選。全国若手市議会議員の会・会長などを務め、2012年から衆議院議員2期。予算委員会と厚生労働委員会に所属し、同一労働同一賃金法や危険ドラッグ禁止法など、野党ながら数々の議員立法を実現。国会活動量を評価するNPOより「三ツ星議員」を4年連続受賞。行政書士として年間4千社の会社設立を支援しながら、次の衆院選に向けて活動中。 www.isaka-nobuhiko.jp

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