フィンテック最前線・第7回 フィンテックブームにおける最大の受益者


フィンテック(英語:FinTech )という言葉を聞くと一体どんなことを想像するだろうか?手間の掛かる金融取引がIT技術で格段の利便性を提供する。おそらく、このようなイメージになるのではないだろうか。

具体的な例では、細かい話では、既に実装されている通帳不要のインターネット・バンキングや未だ実装段階ではないが生体認証に基づく決済などがある。また、国境をまたいだ商取引に関連する決済を営業時間に関係なく同時決済することで決済関連のリスクを削減したり、銀行口座を介さずブロックチェーン技術により企業の全ての財務活動をリアルタイムで記帳し上場会社以上に透明性のある変更不可能な財務情報を提供したりするような技術まで極めて広範にわたる。

既に身近に利用できている例から、夢のような分野にまで極めて広範囲になってしまうのがフィンテックという言葉だ。今では、銀行の窓口業務は縮小し、営業もどんどん削減されつつある。フィンテックの中でフィン=金融は大きな変貌を遂げている。

小職はこのフィンテックという言葉が現時点においてどのようなものになっているかを個人として解析してみた。下の図は、NTTデータの決算説明資料である。

これによると、システムベンダーであるNTTデータにおいては、金融とそれ以外と大別され、金融部門での売上が極めて高い。同様な分析は他のシステムベンダー例えばシンプレクスのように金融特化型から、新日鉄住金ソリューションズや富士通・IBMといったメガ資本システム企業などの場合も同様である。結論として、システムベンダーは、主に金融業界を顧客として売上を立てている。

今では、会計ソフトもフィンテックに分類され、更には今回のブロックチェーンというか仮想通貨ブームでフィンテック分野が急拡大し、売上規模の成長は激しい。特に、昨年末からの本邦の仮想通貨ブームでは、多数の発行体は「草コイン」を発行し、今では明確に違法となったICO・トークンセールを行って、莫大な資金調達を行なった。集めた資金の多くは、販売した人たちにまず配分された。

次に、発行体に残った資金の内、実に多くの資金が「草システムベンダー」に支払われたのが実態だ。この点、商行為に基づく資金の受払であるが故に違法性は少ないかもしれないが、中にはマッチポンプのように、自社のシステム受注を拡大するため、もしくは極めて割高なシステム受注を目指して、発行体になるよう唆し、実際に販売までさせ、ホワイトペーパー作成、各種SNSなどでの情報拡散、トークン作成とパッケージ化させたサービスを提供しているシステムベンダーが実に数社存在している。

彼らを見分けるのは一重に、システム開発をしているか否かではなく、果たして出来上がったシステムやトークンが何らかの貢献をしているかに尽きる。彼らの目的は、永遠にシステム開発をし続けること、ないしはシステム改良という名目でシステム関連費用を徴収し続けることであり、少なくともトークンに投資した投資家のためではなく、あくまで自己の利益のために為されている。

この場合、発行体は買い戻しをしようにも既に、割高に購入してしまった「転売不可のシステム」というほぼ無価値の資産になってしまっている。これを、回収できるキャッシュフローがない限り、発行されたトークンの価値が回復することはない。

現状日本の仮想通貨取引業社が取り扱えるトークンにはそこまで酷いものは無いようである。しかしながら、トークンを買おうと考えたときに、果たしてこのトークンは、「何故値上がるのか」を今一度考えてほしい。分からなかったら、買わない。当然、チャートは信じない。まず、この二つで自分を守ってほしい。


鬼澤礼志
鬼澤礼志


明治大学卒業後、英National Westminster銀行(現RBS)にて当時最先端の金融工学に基づくトレーディングにてメッセンジャーとしてキャリアを始める。以降Swiss Bank Corporation, UBS, Deutsche Bank, Credit SuisseにてLondon, Singaporeなどでの勤務を経験。その間、日本に外国為替の電子商取引を導入し、当時のFX(外為証拠金)業界へのマーケットメイクを行う。これにより金融における電子化並びに効率化が高まった。引退後は豪州での資産管理会社などを通じ、ブロックチェーン関連業界に金融技術を導入している。

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