サマーハウスで避暑?


1.森のサマーハウス

いよいよ夏休みシーズンも終わった。今年も暑かったが、2022年東京五輪でも猛暑が心配されている。前回までの記事で紹介した対策が間に合わなくて猛暑が緩和できないなら、避暑が次善の策である。東京も、今すぐニューヨークやロンドン並みには届かないにせよ、働き方改革で夏休みが取りやすくなれば、優秀な人材が世界中から集まることにより世界的な競争力が向上するであろうか。仮に夏休みが取りやすくなったとして、東京近くの高地の森林に近い空き家をサマーハウスとして貸別荘にすることを提案する。

2.東京の地の利:森林地帯の中にある

「世界の大都市の中で、東京の地の利もしくは特色は何か?」と地理的に比較してみると、前々回と前回紹介した「千m深の海洋深層水が近くにある」ことは唯一無二だが、それ以外にも「森林地帯の中にある」ことが挙げられる。東京の緯度では森林地帯が稀である( http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/22hakusyo_h/all/h32_01.html )。世界的に、森林を開墾して耕作地化し、農村が集約されて都市化した歴史がある。新期造山帯に属する日本では、急峻な地形が耕作地化を阻んだ結果、耕作地に適した緯度であるにもかかわらず森林地帯が遺され、森林地帯に囲まれた大都市東京が発生した。

【出典】三浦半島の付け根の住宅地の森の夕焼
、筆者撮影

3.森林地帯にある先進国

他方、先進国で国土面積に占める森林の割帯の高い国といえばフィンランドとスウェーデンが代表的である。両国では、冬の日照時間が短い反動か、夏休みは都会から車で1~2時間程度離れたサマーハウスで過ごす文化がある。例えば、スウェーデンでは、サマーハウスの保有率は人口の20%、自分のみならず親戚などが保有するものも含めて自由に利用できる率は人口の30%に上り、インターネット経由でのレンタルも一般的である。森林地帯なので木材で建てた木の家である。日本よりも低温で降水量が少ないので、木の家を何ヶ月も空き家にしても、黴が生えたりして家そのものが痛むということもない。ヘルシンキ(フィンランド)とストックホルム(スウェーデン)では、降水量がそれぞれ東京の半分弱と三分の一である。気温はどちらも東京より約10度低いため蒸発量が少なく、従って少ない降水量でも森林生態系が維持できる。余談であるが、ストックホルムでは今年7月15日の日最高気温が33℃を超え、16日に日平均気温が約28℃(平年値:約19℃)という異常気象となった( http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/monitor/weekly/ )。
このような気候の違いがあるとはいえ、日本も森の国なので東京近辺の空き家をシェアしてサマーハウスにできないものか? 降水量は致し方ないとして、東京近辺でも標高の高い地域であれば、気温もフィンランドやスウェーデンほどではないにせよ低くなる。軽井沢など標高約千mなら都心よりも約6度涼しい。なお、夏に都心と同じ程度暑くなるニューヨーク市も森林地帯に囲まれているが、近くに標高千mの避暑地はなく、高々500mまでである。

4.長野県の例: 空き家を賃貸?

平成27年度の長野県の「職員による政策研究」成果報告書グループNo.14「二地域居住促進について~豊かな自然を活かした都市部との交流の活発化~」によると、飯山市の例ではセカンドハウス用に戸建賃貸の希望はあるが、実際の空き家の物件で販売はあっても賃貸が少ないので、賃貸(特に戸建)の供給促進策として、不動産屋との間のサブリース契約を必要条件とした家主に対する各種補助が提案されている ( https://www.pref.nagano.lg.jp/career/shokai/taike/seisaku27.html )。また、空き家を夏休みの間だけ賃貸するのであれば、住人不在の季節は家主の責任で保守・管理することになり、多湿でサマーハウスが痛む心配もない。現状で、何週間も夏休みが取れる日本人(渡来系平成人を含む)は少数派なので、同じ空き家を日程が重ならないようシェアする貸別荘的な運用から始めるのが現実的であろう。

5.森林管理に一肌

「休みがあっても、おカネが・・・」という向きには、夏休みに森林保守作業のアルバイトで副業解禁することをお勧めする。日本の森林で林業経営が大規模に循環して成り立っているのは九州だけであり、それ以外の地方では林業以前の国土・環境保全としての森林管理が脆弱である。そこで、手入れが行き届いていない私有林の管理を林業者や企業に市町村を介して集約化する新たな森林管理制度を創設する「森林経営管理法」が2018年5月26日に可決された。
なお、北欧諸国でもインターネットの普及によりサマーハウスで在宅勤務をする人々が現れているそうだ。

【出典】筆者撮影


角田晋也
角田晋也

マクロエンジニア(http://www.jame-society.jp/)。国立研究開発法人海洋研究開発機構地球情報基盤センター調査役。
東京大学教養学部基礎科学科第二(システム科学)卒業後、東京大学大学院在学中に米国シカゴ大学大学院Department of Geophysical Sciences留学(修士)、現在の職場に就職1年後博士(東京大学)。気候変動研究として北極海・インド洋他、国連海洋法条約の「海洋の科学的調査」、及びベクトル型スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」の利用推進等を経験した。環境データの流通促進に取組中。

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