イスラム教の戒律から考える、行政への過剰な期待の戒め



日本でイスラム教というとストイックで時には過激な宗教というイメージが先行していますが、筆者は、イスラム教は、ローマ帝国の行き過ぎた官僚主義のアンチテーゼとして登場し、自由主義的な性質をもっているという仮説をもっています。

ローマ帝国は、巨大な行政組織が市民に生活の隅々までサービスを提供する、いわば官僚国家でした。しかしその結果市民は行政に生活のすべてを依存するようになり、慢性的な財政難と重税に悩まされ、滅亡の一因となりました。
こうした歴史の教訓から不平等の是正を行政に依存させず、富裕層が自らのモラルで不平等を是正し、行政への過剰な期待を抑止しようとした形跡が、イスラム教の戒律に見て取れます。

①豚食の禁止

養豚は穀物を犠牲にして、飼料を育成する必要がありますが、豚食を禁じることで、飼料育成を穀物にまわし、食料格差を是正する狙いがありました。

②偶像崇拝の禁止

偶像物の建造は、直接経済活動の拡大に結びつかない公共事業であり、財政の浪費につながるだけでなく為政者=行政の強化につながります。公共事業は道路の整備や土木工事などを優先し、経済の拡大に還元される使い方を目指しました。

③一夫多妻

男性は女性に比べ、平均寿命が短いだけでなく、戦死する者も多かったので、慢性的に男性過少社会でした。未亡人を富裕層の妻とすることで、貧困救済の手段としてきました。

④女性の露出制限

ヨーロッパ貴族や日本の大奥の例にもれず、富裕層の奢侈品の中で最も視覚的に訴え、反感を持たれるのは、特に女性の装飾品です。女性のおしゃれそのものを制限し、貧困層の反感を防ごうとしました。

⑤断食

所得に関係なく一体となって空腹を経験することで、貧困層の富裕層に対する敵意をやわらげようとするイベントです。

世界恐慌後のドイツや日本のように、行政へ不平等感の是正を要求する声は、貧困層が富裕層への敵意が現れたときに正当化されます。
しかし、行政の介入は慢性的な財政難と重税という危険を伴いますが、日本では「行政万能主義」の意識は根強く、行政の介入に対する警戒心はあまりありません。
社会の不平等感を行政に頼らずに自ら是正していくという姿勢は、無駄な行政支出やその財源のための重税から自らを守るもの、という選択肢であるということを、イスラム教の厳しい戒律は示しています。


保坂康平
保坂康平


早稲田大学社会科学部社会科学科卒業。在学中から地方議員へのインターンシップや選挙ボランティア、自治体からの委託業務に携わり、地方行政の現場を経験。卒業後はシークス株式会社(一部上場大手EMS商社)に入社。グローバルに展開されていく最先端のビジネスに携わる。一児の父、共働き家庭として、会社員生活の中で改めて感じた地方行政と市民との意識のずれを問題意識に提言を続けている。

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