東京大改革の今・第2回 「見える化」改革~現状分析こそ、改革のカギ



小池百合子のHP

削ればいい
減らせばいい
を主眼にした「切った貼った」の行政改革ではない、現場に根差したボトムアップな、若手や現場の職員の声を活かした、柔軟な発想で進めていく改革。

これらが29年度から東京都で始まった「2020改革」の基本的な考え方である。これをもとに、都政改革本部では3つのアプローチから都政改革を進めている。

①しごと改革:職員の働き方に関する意識や行動、仕事の仕方、能力開発などを見直し、都庁の生産性向上と職員のライフ・ワーク・バランスを確保
②見える化改革:各局等の主要事業について、適正な予算、人員、サービス水準なのかを分析・評価
③仕組み改革:「制度」や「仕組み」の改革を進め、管理団体などの経営改革も進める

進め方は、事業ユニットの抽出→現状整理→分析→課題整理→仮説の提示・検証という流れである。ポイントは、都庁の機能強化という目的、予算や事務事業の単位ではない「事業ユニット」という単位設定、期間設定を設けないのが特徴的である。

見える化メリット1:実態が浮き彫りになり、そのことが共有できる

都政改革本部会議では、いくつかの事業ユニット分析が報告されているが、その中から教育庁「学校運営・支援」の取組みを取り上げよう。

色々なことが明らかになっているが、区市町村立学校の現状・課題として取り上げられているのが「教員の働き方」である。教育庁は「教員の多忙化は、極めて深刻であり、新たな教育課題への対応や、授業準備等に十分時間を割くことが難しくなっている」との現状認識を示している。以下図1で示したように、1月当たり時間外労働は相対的に大きい。

【図1】

(出典)教育庁「学校運営・支援」参考資料(報告書) P55

教員の多忙化は、極めて深刻であることがこのグラフで明らかだ。文部科学省も「次世代の学校指導体制にふさわしい教職員の在り方と業務改善のためのタスクフォース」などの取組を進めている。筆者も「学校現場における業務改善のためのガイドライン」などの関係資料を見てきたが、この図1ほど衝撃的なグラフは見たことがない。圧倒的な超過勤務時間である実態が浮き彫りになった。

この背景の1つに、
○法教育 ○憲法教育 ○主権者教育 ○租税教育 ○消費者教育 ○金融教育(金銭教育) ○住教育 ○シティズンシップ教育 ○情操教育 ○日本の伝統・文化理解教育 ○領土に関する教育 ○国際教育 ○健康教育 ○食育 ○人権教育 ○性教育 ○がん教育 〇薬物乱用防止教育 ○いじめ防止教育 ○安全教育 ○防災教育 ○環境教育 ○持続可能な開発のための教育(ESD)○森林環境教育 ○海洋教育 ○プログラミング教育 ○再生可能エネルギー教育 ○放射線に関する教育 ○情報モラル教育 ○ICT教育 ○メディアリテラシー教育 ○オリンピック・パラリンピック教育 等
といった教育について社会からの強い要請がある→対応しようとする→専門性を持った職員を配置できない→既存の職員が頑張って対応する→残業発生といった悪循環の構造がそこにはある。

これに関連して、以下図2が示すのは、この7年で激増したいじめ認知件数とこどもの相談状況である。同時に「いじめ認知件数が増加している中、スクールカウンセラーが非常勤であることもあり、学級担任への相談が多く、教員の多忙化の一因となっている」との認識も明らかになっている。

【図2】

(出典)教育庁「学校運営・支援」参考資料(報告書) P48

いじめに関しては「小中学校とも出現率が上昇しており平均と比較しても高い状況であるため、 専門人材、関係機関とも連携した学校の対応力の向上が必要」とのこと。働く人が疲弊している状況でいい教育ができるのか、という意味で、深刻な問題提起ともいえる。

見える化メリット2:複雑な全体構造が整理され、皆が理解できるようになる

福祉保健局の事業ユニット分析「福祉人材の養成・確保」で明らかになったのは、

・(東京都)離職率 15.7%、3年未満で離職した者が7割以上を 占めており、いかにして定着させるかが課題
・(全国)介護職員が介護関係の仕事をやめた理由「職場の人間関係に問題があったため」が25.1%、「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」が23.6%
・(東京都)2020年度には約2万3千人、2025 年度には約3万6千人の介護職員の不足が見込まれる

といったことだ。介護については市町村中心に行われるため、東京都の権限が限られているものの、以下の図3のように役割分担が整理された。

【図3】

(出典)見える化改革報告書「福祉人材の養成・確保」 P24

さらに、以下図4で都の取組みの構造が明らかになった。

【図4】

(出典)見える化改革報告書「福祉人材の養成・確保」P43

ここに示したのは一部にしか過ぎない。しかし、これだけのことすら、各計画や予算書、事業概要といった都の発行物を見ているだけだとわからない。専門的な用語が多く、よほどの知識と経験がない限り、それらを理解するのは困難である。一例を示しただけだが、こうした「見える化」による全体構造・全体像が明らかになったことは意義があるといえよう。

さらなる改革の推進で一気に巻き返すか?

今回の「見える化」改革によって、東京都は都道府県のなかで出遅れている状況から一気に巻き返す可能性を秘めている。他道府県でここまでの「見える化」改革をやってきたのは大阪府など少数。

予算書を見ても、事業概要を見ても、各種計画を見ても、さっぱりわからない東京都政。そこに風穴を開けていく、その取り組みに期待したい。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、オムニメディア代表、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

西村健の記事一覧