フィンテック最前線・第8回 フィンテックブームにおけ最大のる受益者②


フィンテックブームの受益者として、アフィリエイターを含む広告やマーケティング業界、開発受注を受けるIT業界を紹介してきた。今回はさらに、フィンテックという言葉からイメージされるオンラインとは距離感すら感じるオフラインにおける受益者を紹介してみようと思う。

それはセミナーやイベントの主催者である。小職は広告やマーケティングの専門家ではないが、オンラインとオフラインを組み合わせたマーケティング戦略は、随分前から常識となっている。

オンラインでの勧誘行為が、規制当局を含めた不特定多数の記録に残りやすいのに対して、オフラインでの勧誘行為は、口コミなどを中心に、予め人的ネットワークなどで確保している顧客のうち、さらに嗜好などで絞り込んだ特定の層を対象としており、決して不特定多数を対象にした勧誘は行っていない。

既にオフラインの世界でもビックデータによる解析は行われている可能性があり、名簿やリストを有している側は非常に強い。

例えば、「9月 仮想通貨セミナー」とGoogle検索してみると、「仮想通貨、初めての購入勉強会」などと称されたおびただしい数のセミナーやイベントがヒットする。

参加費が2桁万円の大型イベントとして、例えば、①日本経済新聞と金融庁が主催で、丸の内周辺で、4日間連続で行われる“日の丸主導”のフィンテック・サミットや、②米国籍を捨てたビットコイン・ジーザスはじめ日本国籍・日本居住に止まらないインフルエンサーが一堂に会したブロックチェーン・サミットがある。②については、流石にこれには一般人は参加しないだろうと思いきや、こういった大型イベントに参加し、著名インフルエンサーと写真に収まったり、名刺を交換し連絡先を確保しておいたりするという方々もいる。

この手のセミナーやイベントではどのようなことが行われているかを、WEBを手がかりに確認してみると、プロジェクト・スピーチというのがやたらある。それではプロジェクトは何であろうかとみると、どうやら各自が発行するトークンの説明であったりするようだ。ご存知のように日本でのトークン・セールスは仮想通貨事業者が何らかの形で介在して始めて行えるものである。

また、海外の主体が発行しているトークンを説明するだけであれば、確かに表現の自由の範囲内であり、決して現行法令に抵触するものではないかもしれない(法的助言は弁護士等にご確認ください。)。しかし、今、海外のトークンでも日本語でセールスをしている場合は、本邦の行政から日本語での営業や日本からのIP接続に制限をかけるように国境を越えて問い合わせがあるし、少なくとも銀行を介しての法定通貨の送金は制限され始め、残されている仮想通貨事業者を通じてのトークンの送金にも何らかの制限がかかろうとしている。今は合法でも流れは規制されようとしている。

今回のイベントを主催する企業はカジノコインを発行し、日本にも拠点があるようだ。このイベントを開催し、知名度を上げ、広告効果としての無形のベネフィットを得るのだ。当然ながら、参加者からのチケット収入や協賛などの興行費用も売上になっている。このように、新進気鋭で話題性のあるフィンテックの一つである仮想通貨関連は、オフラインのセミナーやイベントにおいても高い頻度で売上貢献をしているコンテンツであるようだ。

セミナーやイベントの主催者は、定例化させることでその地位を築こうとしている。
インフルエンサーは、名を上げることで出演料を高めようとしている。
発行体は、特にオフラインで販売してくれる有力な基盤を探している。
販売網を有する参加者は、次週以降話せるネタを探しにきている。
このように各者様々な思惑が乱れる中で、唯一欠けているのは、そのオフラインでのイベントで共有された情報が、そこに参加していない第三者にとって何らかの役に立つのであろうかと言う観点であり、この部分は実は不確かである。

ちなみに行政が主催しているセミナーやイベントは、広く行政の考えていることを事業者に伝える「啓蒙」が目的とされている。この目的では、事業者以外で費用を払って教えてもらう利点を小職は見出せない。唯一あるとすれば、違反・違法事例は公開されるであろうから、そのノウハウは知っておきたいが、できればそれは公共の利益として無料で公開して欲しい。


鬼澤礼志
鬼澤礼志


明治大学卒業後、英National Westminster銀行(現RBS)にて当時最先端の金融工学に基づくトレーディングにてメッセンジャーとしてキャリアを始める。以降Swiss Bank Corporation, UBS, Deutsche Bank, Credit SuisseにてLondon, Singaporeなどでの勤務を経験。その間、日本に外国為替の電子商取引を導入し、当時のFX(外為証拠金)業界へのマーケットメイクを行う。これにより金融における電子化並びに効率化が高まった。引退後は豪州での資産管理会社などを通じ、ブロックチェーン関連業界に金融技術を導入している。

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