インターネットの歴史から考えるインターネットビジネスの本質」<第20回>「フェイスブック」-Web上の「ソーシャル」という空間の運営者-(その3)


FBの3回目は、ビジネス=インターネット広告についてです。学生の交流サイトから始まったFBですが、前回述べたようにネット世界に壮大な「社会」(ソーシャル)空間を構築してしまいました。その卓越さについては、ソーシャルグラフという理想を求めるチャレンジングな繋がりというイメージと共に示したつもりです。

広告ビジネスについては、グーグルのところで少し触れましたが、改めて業界の全体像から見ていきたいと思います。

電通が2月に発表した、毎年恒例の「2017年 日本の広告費」のデータについて描いた下記グラフをまずはご覧ください、


出所:https://1manken.hatenablog.com/entry/advertising-costs-in-Japan-2017 

広告媒体の王者であったテレビを追走するようにインターネット広告の発展は続いており、試算では、2019年にはネット広告がテレビ広告を凌駕する見込みとなっています。

フェイスブックもこの恩恵を受けていて、売上、利益共にこの4年間で凄まじい成長を遂げ、2017年の売上では約4兆円、営業利益では約2兆円に達しています。


出所:フェイスブック Annual Report より作成)

インターネット広告の世界では、グーグルとFBが両雄と言っても良いメジャーな会社です。上記グラフは日本の事情であるのに対し、下記は米国内での話なので、きちんと整合はしませんが、グーグルが1位、フェイスブックがこれに続き、その後は大分シェアが落ちてマイクロソフトやアマゾンなであると大雑把に言ってもそう間違いではないようです。


【出所】Global Adtech

シェアの大小については、広告ビジネスへの進出時期の違いも大きな要素であると考えますが、今後を占うためには、その機能や特徴の違いも重要です。

検索エンジンが広告ビジネスの基盤であるという点では、グーグルとマイクロソフトに大きな違いはなく、またアマゾンでは、アマゾンのサイトの中での利用者によるチェック、購入などの履歴情報が広告ビジネスのためのデータが基盤となっています。

それに対し、FBでは、まずは利用者自らが入力する本人自身のプロフィール情報が他のIT巨人のサービスにはないビジネス上の大きなメリットとなっています。プロフィールには年齢、性別、居住地域、卒業学校、転職歴、引越歴、好きなものなど自己紹介(本人が自らを分析し、他人に示したい内容)が多数含まれ、広告ビジネス上の「ターゲッティング」を容易にしてくれます。

さらには、投稿、「いいね」「シェア」「友だち」など、本人の嗜好や興味の分析のために有効な情報が利用者のアクティビティには満載となっており、広告ビジネスにおける使い勝手の良さ、そして今後のさらなる発展を予感させてくれます。

グーグルが、利用者の検索履歴をもとに、AIのような分析ツールで利用者の興味を推測してターゲティングしていくのに対して、FBはより直接的、そして大量のデータによって広告ビジネスを展開しているのも大きな違いです。
またサイトでの滞在時間という点でも、グーグルの方が、最適な検索内容を出来るだけ早く利用者に示すのに対し、FBは、とにかくFBの使用時間中全ての時間が広告掲出のチャンスでもあるという点も大きな違いです。

但し、FBの大きな弱点は、FBをやっていない人にはリーチ出来ない、そしてFB自体が飽きられたり、あるいは様々な理由で利用者の支持が減ってしまえば、広告ビジネスの減少に直結してしまうということになります。

もちろん現在首位のグーグルだって、検索エンジンについて強力なライバルが今後出てくれば、同様に首位の位置も危うくなってしまうのですから、検索エンジンとしての優位性維持のために莫大な投資をしていることが合理的な選択なのです。

FBも同様に、SNSとしての魅力をアップさせ、飽きられないよう、利用者をがんじがらめに中毒症状にして、繋ぎとめる必要があるわけです。

そもそもFBは、それぞれの利用者に応じた「社会」→ソーシャルグラフを構築するという、正解のない、非常にチャレンジングなことをやっていることもあり、グーグルが様々な領域に進出し、投資し、道を切り拓こうとしているような資金的、時間的な余裕はないわけで、このソーシャルグラフ構築の探求は、FB唯一の事業であり、そしてそれに連なる広告ビジネスだけがFBの唯一の収益源と言ってもよいのです。ある意味潔いですが、一つの「社会」を構築し運営するのですから、膨大なことを考えないといけないわけです。

ただ、このソーシャルグラフというもの、良く考えれば目茶苦茶魅力的なものでもあります。自分の好みがあって、友だちがいて、イベントがあって、友だちとの交流があって、ニュースや知識をゲットして何かを感じる、気に入ったものをカメラで映す(インスタグラム)、友だちと情報を交換する・・・そうした人間の日々の生活=アクティビティがソーシャルグラフという名前でデータ化され蓄積されていくのです。ソーシャルグラフ=利用者の日々の生活そのものの記録、と言えないこともないと筆者は思っています。

広告ビジネスでグーグル、FBの2強を追走するマイクロソフト、アマゾンの内、インターネット広告を制覇するのはどこか?どこが有利なのか?という疑問をお持ちの読者もいるでしょう。「グーグルやFBは、『興味』でしかないのに対し、アマゾンは実際の『購入』履歴があるのだから、ヒット率を上げるという意味でアマゾンが有利」という人もいるようです。

個人的には、そう話は簡単ではないように思います。広告主の使い勝手、それぞれのプラットフォームそのもののサービス自体の将来、広告ビジネスにおけるサービスなどの要因(今後の投資による改善)など諸々の要素があるように思います。
「市場のことは市場に聞け」・・・実際の今後のシェア動向を注視する必要がありそうです。

しかしながら、SNSというこれまでの世の中になく、最近忽然と現れた「空間」(モノ)の覇者となったFBは、広告ビジネスの中でも、そう簡単にその存在価値がなくなるということはないように思います。それだけ、FBが作り上げてきたソーシャルグラフというものは人々にとって一度知ってしまえば捨てることが難しいような、魅力的なものなのではないかと筆者(FB中毒者ですが)は考えています。

ところで、個人的なことですが、実はここ1年、それまでは来なかった国籍、タイプの人からFBの友人申請が来るようになっています。基本的にFBを日本語のみのコミュニケーションツールとして使っているので、心当たりがあるのは、1年前にエジプト在住のアラブの人から、筆者の大学院の研究生になれないかとFB(より正確にはメッセンジャー)でメッセージと、同時に「友だち」申請が届いたことぐらいです。とりあえず申請を承認して基本データをチェックして・・・といった対応をし、結局研究生とはならなかったのですが、それ以来ターバンを巻いた何人もの方から友だち申請が来ることになったわけです。恐らくかのエジプト在住氏の友だちたちからの申請と思われ、何もメッセージがないままでの申請なので、(日本人からの申請と同じように)ずっとスルーしているのですが、最近ではターバンの人だけではなく、英米の軍事関係の人(尤も、ちゃんとした人物ではあるようです)からの申請も来るようになっており、FBのデータの広がりの大きさにちょっと戸惑うことも増えている次第です。

と言うことで、次回はFBの最終回、最近の個人情報データの扱いを巡るFBへの批判、そしてFBは生き残れるのか?といった問題について考えることにします。

ターバン氏の方はFBについての少しネガティブな方向での話でしたが、ポジティブなことが先日ありましたので、書いておきたいと思います。

1週間ほど前に、「知り合いかも」に、何と小学校の同級生が出ているのを発見しました。FBのヘルプデスクにある説明からすると、どうやら共通の友人が偶々一人いることで表示されたようです。
彼の名前は賀川良君と言い(本人には名前が出ることを了解もらっています)、小学校以来ですから、50年間まったく交流もなく、消息も知らずにいた同級生です。お父さんが画家で、本人も画家になりたいと言っていたので、「画家になれるといいなぁ」と子供ながらに思っていたことを思い出しました。
50年ぶりにメッセンジャーでチャットして、彼が大学を卒業して30年間統合失調症を患い、精神病院から社会に復活して、現在は数々の展覧会で入賞するような画家になり、同時にインターネット放送局でパーソナリティをやって活躍していることを知りました。
こんな驚くような素敵な再会を用意してくれたFBとインターネットに、「万歳」と言いたい気持ちで一杯です(賀川君のFBページはhttps://www.facebook.com/kagawaryoimaiki/)。

なお当連載も次回のFB最終回、そして次々回の「インターネットビジネスの総括、今後の展望」をもって一旦終了する予定です。永らくお読みいただいた読者の方には御礼を申しあげたいと思います。

「インターネットの歴史から考えるインターネットビジネスの本質」連載シリーズ

第1回 「インターネットの始まり及び、この連載の狙い-増殖する生命体
第2回 「マイクロソフト」-変貌するプラットフォーマー(その1)
第3回 「マイクロソフト」-変貌するプラットフォーマー(その2)
第4回 「マイクロソフト」-変貌するプラットフォーマー(その3)
第5回 「マイクロソフト」-変貌するプラットフォーマー(その4)
第6回 「グーグル」-「Don’t be evil.」.(その1)」
第7回 「グーグル」-「Don’t be evil.」.(その2)」
第8回 「グーグル」-「Don’t be evil.」.(その3)」
第9回 「グーグル」-「Don’t be evil.」.(その4)」
第10回 「アマゾン」-「システム屋による建設と破壊」(その1)」
第11回 「アマゾン」-「システム屋による建設と破壊」(その2)」
第12回 「アマゾン」-「システム屋による建設と破壊」(その3)」
第13回 「アマゾン」-「システム屋による建設と破壊」(その4)」
第14回 「アマゾン」-「システム屋による建設と破壊」(その5)」
第15回 「アップル」-「ブランド価値NO.1企業の栄光と苦悩」(その1)
第16回 「アップル」-「ブランド価値NO.1企業の栄光と苦悩」(その2)
第17回 「アップル」-「ブランド価値NO.1企業の栄光と苦悩」(その3)
第18回 「フェイスブック」-「Web上の「ソーシャル」という空間の運営者」(その1)
第19回 「フェイスブック」-「Web上の「ソーシャル」という空間の運営者」(その2)


小寺 昇二
小寺 昇二

埼玉工業大学人間社会学部情報社会学科教授、大学院人間社会研究科情報社会専攻教授
2014年より埼玉工業大学人間社会学部情報社会学科教授、大学院人間社会研究科情報社会専攻教授。授業担当は「e-ビジネス論」「財務管理論」「スポーツ経営」「地域経営論」「現代経済論」「現代経済史」等。ラグビーチーム一般社団法人横河武蔵野アトラスターズ監事、埼玉県深谷市総合計画策定審議会委員。NPO法人日本公共利益研究所コンサルタント。

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