まちづくり再生の視点~身の丈再開発の実践


私が沼津市の産学連携の拠点「沼津産業振興プラザ」のシニアディレクターとして成果を上げている中で、沼津市中心街の商店街発祥の地とも言える町方町街区にある沼津アーケード名店街の再生を沼津市から委託され取り組むことになったのが2002年。

市内の11商店街のワースト1、70軒のうちの空き店舗率が35%、ここにメスを入れるためにはこの商店街に再生のための拠点を設け、市内の商店が全体の活性化を目的の事業を行う必要性を沼津市に提案し、その後法人化するNPOSIDAMの前身である「まちの情報館」を開設しました。

運営組織は産業振興プラザで培った人脈の中から都市経営に精通する学識経験者や有識者、それに行政や商店街連盟の会長にも入って頂きました。

未来のための地元への恩返し

まず着手したのが空き店舗の地権者交渉。

1950年代に一世を風靡し「商都沼津」とまで言われる歴史ある商店街の地権者ですから、衰退しているとはいえ鼻息は荒く法外な家賃を設定していました。坪単価で東京新宿の三越百貨店と同じ家賃を要求していたのですから容易に理解してもらえると思います。

しかし、交渉は難航します。

全盛期に殆どの地権者は所得番付に載り、中心街にビルを持ち不動産所得で明き店舗になったままでも何も困らない地権者ばかりだからです。約25軒の地権者の1人1人と膝つき合わせて話し合い「かつてこの地で商売をして今の財産を獲得したのだから、この地に恩返しをして欲しい。困っていないのだから新たに商売をする人たちにチャンスを与えて欲しい。」と訴え、若い人たちが入居できるように家賃の大幅なダウンをしてもらいました。

起業支援で空き店舗を0に

一方で当時商工会議所の会頭であった沼津信用金庫の理事長に、商店街で起業する若者に500万円まで無担保無保証で当時の金利としては破格の1%での融資枠を作ってもらい、その運営を沼津信用金庫内の経営支援課と一緒に審査し、入居者の運営がうまくいくよう指導する権限ももらいました。さらに沼津市の出展補助制度も活用しました。これが功を奏し、アーケード名店街は3年間で空き店舗0となり経産大臣賞を頂きました。

アーケード名店街では1955年から毎月1日に「1日市」を開催していて一時は良かったのですがこの時期は1日市の来街者が200名まで落ち込み存続が危ぶまれていました。
そこで生産者と商店街をダイレクトにつなげ、地域の人々のニーズに応える「朝イチ」を商店街の方々と作り上げました。

スタートは16件。生産者を1軒1軒直接交渉し出店してもらいました。

これは爆発的な効果を生み半年で出店者が60件になり、多い時は2000人を超える来街者になり、午前8時から正午までのこの朝イチの出店者の1件当たりの平均売り上げは8万円。

商店街の各お店も朝イチに併せて品揃えをし、この日の売り上げは各店舗10~20%の売り上げを確保するまでに成長し、始めて13年になりますが今でも客足は途絶えません。

民間主導・身の丈再開発へ

そんな時沼津市から新たな要請がありました。東海・東南海地震が起こった場合アーケード名店街が歩道にせり出してオーバーハングの建物です。そのため建物の倒壊により市民を巻き添えになりかねません。この危険回避のため再開発をしたいとの提案がありました。

当初行政から提案されたのは今はやりのタワーマンション。

商店街始め自治会の地権者の方々はこの提案に反対し、コミュニティの壊れない身の丈再開発を逆提案し、行政主導から民間主導の再開発事業に乗り出します。

さらに商業中心のまちづくりから生活に必要な機能を集積した新しいコンセプトのまちづくり再開発事業をしようとセミナーやワークショップを何度も開催し、持続可能なまちづくりのビジョンを作り上げました。視察も積極的に行い先進事例はもとより衰退している中心街にも行き根本原因を探りました。

人中心・大地が呼吸できるまちに

自分たちのまちは医療や福祉、新たなビジネスチャンスを活かせる場づくりはもとより、豊かに暮らせるライフスタイルを作ろうと言う事になりました。そのためには公共空間を緑豊かでお花にあふれ、車中心から人中心にするため海外のように車道の広場化を目指すと言う結論に達しました。

メインストリートである車道を広場化し、アスファルトをはがして大地が呼吸できるようにしよう、子供やお年寄りがくつろげる空間にしようと言う事になったのです。さらに土地建物の所有と利用の分離を図り、地権者の出資によるまちづくり会社がリーシング計画を立て業態が偏らないようにテナントコントロールをすることにしました。

当初沼津市が地震による建物の倒壊で歩道部分の一般市民を巻き込むことを回避するために提案されたことも踏まえて、災害時の緊急避難場所としての役割も担えるようにすることも計画の中に盛り込みました。環境エネルギーにも配慮した設計を事業協力者にもお願いしスマートタウンを目指します。

次世代のバトン~コミュニティと仕組み

まちが持続し活力を持つにはコミュニティの創出が欠かせません。若者の活躍する場、お年寄りが活躍する場の創出は地域課題と取り組む仕組みを作り商業一辺倒の再開発事業から次の世代にバトンを渡せるような価値を創造し続けられるようにしなくてはなりません。

そのためには社会的インパクトをもたらすような課題を掲げ、これに共感する人々を巻き込み文化芸術も視野に入れた経済活動が活発に行われる仕組み作りが必要だと考え、多様性のあるまちづくりをして行こうと考えています。


深澤公詞
深澤公詞

特定非営利活動法人駿河地域経営支援研究所  理事長
特定非営利活動法人駿河地域経営支援研究所 理事長として街づくりを進めている。 沼津市中心市街地活性化協議会委員なども務め、富士常葉大学、国立沼津工業高等専門学校な、東京大学、立教大学、法政大学、日本大学、静岡県立大学などでまちづくりの講師として講演を行っている。沼津市町方町街区の再開発のためのエリアマネジメントコンサルを行い現在都市計画決定に向けて活動中。

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