「インターネットの歴史から考えるインターネットビジネスの本質」<最終回> - 超えて解決するもの -



6月から始めた本連載ですが、いよいよ最終回となりました。
21回に渡った拙い内容をお読みいただいた方々には心より御礼を申し上げます。

さて、インターネット、そしてそれを活用したインターネットビジネスの本質を、IT巨人の分析を通して考える、という本連載の最終回には、当然筆者自身が考える「本質」についての考えをお示しすることになります。

筆者が本連載のベースにした埼玉工業大学情報社会学科の授業「e-ビジネス論」でも、最初にインターネットの歴史を概観した上で、「インターネットビジネスの本質」についての仮説を受講生に作らせ、IT巨人の分析や、その他のインタービジネスの傾向等の授業を重ねた上で、年度末に仮説の検証を行わせ自分なりの「e-ビジネス論」を構想させるという体裁を採っています。最初は「便利」という言葉しか出なかったものが、考えていくうちには、

 ・プラットフォーム・ビジネス
 ・繋がること(connected)
 ・効率化の切り札
 ・中抜き(disintermediation)
 ・地理的な制約を超えること

など様々なアイデアが出てくることになります。

これまで散々好き勝手なことをかいてきた連載の最終回でもあり、「正解は一つではない」問題なので、筆者としては「正解らしい解答」ではなく、多少なりとも他の人たちとは違った内容でのやや多面的な解釈をお示しできればと考えています。

さて、本質を考えるにあたって、いくつかの観点に従って、見ていきましょう。

①インターネット空間は物理的には、どこに存在するのか?

バーチャルなので仮想空間ではあるのは自明ですが、そもそも人間にとって、この空間というのは、どこに、どういう位置づけで存在するのか?ということです。
空間≒世界ということで、我々人間を取巻く空間の中で一番大きい空間は、言うまでもなく宇宙空間、そして一番小さいのは素粒子たちが飛交う原子などの物理学で扱うような空間、ということになり、インターネット空間はその中間に位置する人間の空間、即ち「社会」のそば、もっと言えばリアルな社会と繋がり、それを補完するバーチャルな「社会」と言うことになるのではないでしょうか。そして、このバーチャルな社会(空間)は、リアルな社会(空間)を利するために活用されているということになります。

②ビジネスという概念の中では、インターネットはどういう位置づけなのか?

ビジネスを成り立たせる要素については、経営資源という概念があり、かつては「人、物、金」の3要素といわれていましたが、最近では、これに「情報、時間、知財」などが加えられており、インターネット空間の立ち位置は、上記経営資源の中の「情報」の一部分と考えられます。そして、このインターネットという経営資源は、人であれば「人と仕事のマッチング」、物であれば「EC」「メルカリのようなフリマアプリ」や「オークションサイト」など、そして「お金」であれば「クラウドファンディング」など、主にプラットフォームの活用(マッチング)によって、他の経営資源をリッチ化することが可能です。
つまり、リアルな世界を補完するような新たなサービスの開始により、ビジネスのあり方をリッチにしていると言えるでしょう。企業側から見れば、経営資源が質量ともに拡充、新たな収益チャンスが大きく広がるということになるわけです。

③どう使われるのか、何が達成できるのか?

リアルな社会・ビジネスを補完し、新たなことを達成するわけですから、そのチカラの源泉は何かを考える必要があるわけです。筆者としては、様々な「制約条件」を「超える」ことが可能になるからではないかと考えます。ここで制約というのは、
  ・地理的制約
  ・国境といった人為的な制度に係る境界
  ・国だけではなく、文化、宗教、主義主張、肌の色、その他様々な社会の特性
  ・スピード(時間の節約➞時間的制約)
  ・資金的制約(例えば、ECであれば店舗を構えるコストが不要)
 などのことを想定します。

バーチャルで実体がないことによって「超えて」しまうわけです。透明人間が、どんな場所も括りぬけ、人の目に触れることなく活躍できるのと同じですね。
 
中央集権でなく、かつつながりが重層的に絡み合った空間であるという本来的な仕組みによって、全てが同質化しなければならないといった圧力からも自由になって、各種の制約を軽々と「超えて」しまうわけです。

さて、やや分析的なことはさておき、本質という言葉の中での「意義」、つまり、こうした本性を活用してインターネットが達成できることの内で、今日的な意義について考えてみたいと思います。

筆者は、少し飛躍した発想ではありますが、インターネットの今日的な意義・役割について、「社会的課題の解決」であると言いたいと考えています。
閉塞感の溢れたこの社会の課題を、その軽々と「超えて」しまう可能性によって解決し、より良い社会にしていって欲しいということです。

因みに、筆者の専門の一つである「スポーツマネジメント」の世界においても、現在盛んに言われていることは、「東京オリ/パラを始め、スポーツに多額の投資をする理由は、スポーツには社会的課題を解決する力(例えば、地域の活性化、欧米に対して遅れているビジネス上の発展、スポーツマンシップによる社会性に関連した教育効果)があるからだ。こうした使われてこなかった、したがって新たな解決のためのソリューションになりうる力を社会として認識し、活用していくべきである」というようなことです(このあたりの話は、2016年の文科省主催のフォーラムの中で、筆者もスポーツ庁次長などと一緒にパネラーとして発言しています: https://www.youtube.com/watch?v=kLje7D9u7C4&index=18&list=PLGpGsGZ3lmbDaLh1MA_zmsUXpvV9gujXP )。

インターネットもスポーツも、これまで社会課題の解決のためのツールとしては「ニューカマー」であり、かつインターネットはその「超える」など、これまでのツールでは成しえない方法で(同様に、スポーツでは、その人々に愛されるコンテンツとしての方法で)、旧来のやり方では解決しえなかった、閉塞感の充ち溢れる状況を打開できる可能性があるというわけです。

例えば、地域創生、農業振興などという、掛け声ばかりで実体が乏しい社会的課題に対しても、「アグリテック」(農業×テクノロジー)は可能性のあるものとして期待されているのです(筆者も、大学のある深谷市の産業振興、農業振興に関しては、市の各種委員会委員などにより関与しています)。

前回は、IT巨人のデータ管理に関する負の側面について触れました。
社会的課題の解決といった今日的意義のあるツールであるからこそ、インターネットはデータ漏洩などの粗相を理由に、盛り下がってしまうわけにはいかないのです。

そして、インターネット活用のエネルギーを供給するインターネットビジネスについても、部分的な正常化は必要であるとしても、これまで積上げてきた成功の根幹を変えることは、社会として得策ではないのだと思うのです。「鉄は熱いうちに打て」、今産業界がインターネットを活用して「Industrial 4.0」などと盛り上がっているときに、行けるところまで行けば良いのです。

インターネットビジネスは一面で「プラットフォーム・ビジネス」なわけですが、社会を支え、生活を支え、改善させていくために絶対必要な「インフラ➞プラットフォーム」に既になってしまっているのです。フェイスブックを始めとし、不祥事が頻発し、株価も不安定な現状であるからこそ、本連載は、こうした明るい展望で終えたいと思います。

絶え間なく変容しながら、様々な制約や旧弊、既得権、社会的課題を蹴散らし、「超え」まくって、インターネットが我々人類の可能性を拡げてくれるようなワクワクするような新しいビジネスを創り続けていく未来を、是非見続けたいと思っています。

最後まで、本連載にお付き合いいただいた読者の皆様、そして執筆の機会を与えて下さったTHE URBAN FOLKS. の西村健編集長に謝意を表したいと思います。本連載については、一旦終了しますが、また気が向いたら、GAFAやMS以外の会社・サービスについて再開するかもしれません。

お蔭さまで本連載も好評をいただき、一部の内容については、書き直す形で、下記MOOKに掲載されることになりました。

 タイトル/出版社:洋泉社MOOK『GAFAの未来(仮)』
 発売日:11/28(予定)
 定価:1,296円
 仕様:A5判

執筆者については、著名なプロフェッショナルな方々ばかりなので、浅学の徒としては気後れするばかりですが、百家争鳴の大変面白いGAFA本になりそうなので、ご興味のある方は是非ご購入下さい(宣伝です)。

本連載そのものについても、何らかの形での紙での出版、電子書籍なども現在構想中です。

「インターネットの歴史から考えるインターネットビジネスの本質」連載シリーズ

第1回 「インターネットの始まり及び、この連載の狙い-増殖する生命体
第2回 「マイクロソフト」-変貌するプラットフォーマー(その1)
第3回 「マイクロソフト」-変貌するプラットフォーマー(その2)
第4回 「マイクロソフト」-変貌するプラットフォーマー(その3)
第5回 「マイクロソフト」-変貌するプラットフォーマー(その4)
第6回 「グーグル」-「Don’t be evil.」.(その1)」
第7回 「グーグル」-「Don’t be evil.」.(その2)」
第8回 「グーグル」-「Don’t be evil.」.(その3)」
第9回 「グーグル」-「Don’t be evil.」.(その4)」
第10回 「アマゾン」-「システム屋による建設と破壊」(その1)」
第11回 「アマゾン」-「システム屋による建設と破壊」(その2)」
第12回 「アマゾン」-「システム屋による建設と破壊」(その3)」
第13回 「アマゾン」-「システム屋による建設と破壊」(その4)」
第14回 「アマゾン」-「システム屋による建設と破壊」(その5)」
第15回 「アップル」-「ブランド価値NO.1企業の栄光と苦悩」(その1)
第16回 「アップル」-「ブランド価値NO.1企業の栄光と苦悩」(その2)
第17回 「アップル」-「ブランド価値NO.1企業の栄光と苦悩」(その3)
第18回 「フェイスブック」-「Web上の「ソーシャル」という空間の運営者」(その1)
第19回 「フェイスブック」-「Web上の「ソーシャル」という空間の運営者」(その2)
第20回 「フェイスブック」-「Web上の「ソーシャル」という空間の運営者」(その3)
第21回 「フェイスブック」-「Web上の「ソーシャル」という空間の運営者」(その4)


小寺 昇二
小寺 昇二

埼玉工業大学人間社会学部情報社会学科教授、大学院人間社会研究科情報社会専攻教授
2014年より埼玉工業大学人間社会学部情報社会学科教授、大学院人間社会研究科情報社会専攻教授。授業担当は「e-ビジネス論」「財務管理論」「スポーツ経営」「地域経営論」「現代経済論」「現代経済史」等。ラグビーチーム一般社団法人横河武蔵野アトラスターズ監事、埼玉県深谷市総合計画策定審議会委員。NPO法人日本公共利益研究所コンサルタント。

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