【マッドなチャイナ政治経済論考】第3回: 中国共産党はプログラマー集団だ!


こちらの寄稿もいよいよ第3回目。こういった実験的連載は序破急的の三部作トリロジーがよかろうと勝手に思っているので、今回で一括りにしようと思いつつ、編集部さんや読者の皆さんからの反響が大きければ、後ろ髪を惹かれつつな秋心で書いてみたいと思います。

これまでの第1回、第2回で、チャイナ全体の空気感(お上と一般庶民の甘酸っぱい関係)やチャイナの起業家勃興と産業育成メカニズムなどを話題にしてきました。今回はチャイナの本丸といいますか、ブラックボックスすぎるし、タブーすぎるし、踏み込むとチャイナウォッチャーにとってはいろんな意味で危険すぎるので表にあまりでてこない「中国共産党」ってものを、あらためて(!)マルっとマッドサイエンティスト的にとらえてみたいと思います。

「真っ赤」に一直線・・・というか実は一本も筋が通ってないのよ。

そもそも、中国共産党って?1921年結党。中国内にマルクス・レーニン主義で共産党のコアな社会運動が始まってコミンテルン影響下でスクスク育ち、抗日戦争突入、この頃には毛沢東が党の最高指導者の立場を得る。大戦終結後、国民党と内戦を繰り広げて劣勢にたったかと思いきやソ連援助プラス農民煽動で地滑り的勝利、中華人民共和国を建国。毛の大躍進政策とぶっこみ過ぎた政局の文化大革命であらゆる国家資源どん底に陥るも、1976年毛主席死亡で党が自己反省しながら毛を神格化して一応幕引き。
権力中枢を引き継いだ鄧小平は改革開放路線、市場経済導入。経済が世界の工場で波に乗って90年代と00年代に急成長、集団指導体制で中継ぎのダブルメガネ指導者がガッハッハ成金で20年間を中継ぎ。ついにハイパースピード昇天成長国家にも経済鈍化がおとずれて、悩める乙女ブルドッグ状態になっていたところで中国版世襲政治一家「紅二代」のXi氏が江派と共青団胡派の漁夫の利パワーバランスで2012年総書記に。Xi王岐山連携プレー反腐敗運動で政敵粛清、強権発動ドーン!2018年まさかの改憲宣言、プロレタリア独裁・永年国家主席爆誕。とりま建国100周年の2049年にアメリカ抜く目標たてちゃったらイイんじゃね?ってことで一帯一路を宣言してゴリゴリ世界覇権拡大してるけど、技術ベースでガチ成長する中国を驚異に感じた米国兄貴ジャイアンからふっかけられた米中貿易戦争かぁら~の、米中世論戦争で、これから数年間はトランプさんの選挙とか任期切れを待っとくか(今ココ)。みたいな状態です。

はい、何が言いたいかって言うと、つまりブレブレってことです。いえ、裏返すと外部と内部環境がどんなに変わっても生き残ることに全力を注いできた。マルクス・レーニン主義とか社会主義とか、社会主義市場経済とか未来に向けたユートピアとか和諧社会(調和の取れた社会)とかいろいろ言われますが、「生存本能に従って」なんでも取り込んじゃえってことなんです。

国家や伝統的イデオロギーをもサブプログラム化してしまった。

徹底的なリアリスト集団、それが中国共産党の本質です。感情的にならずコスパ・益を求める。彼らの組織(党)生存本能は元々イモ臭くてボヤッとしていたけれども、過去100年間の成長過程試行錯誤においてプログラミング・システム化していったんです。今でも実体として彼ら組織は国家の中で生きているけれども、概念上では国家は彼ら組織の従属システムであって、最上位のシステムは彼ら組織であるという位置づけが100年間で確立していった。彼ら組織が上で国家が下。(世界覇権を狙う中華思想という民族的な文化概念の枠内でもない。)

もはや彼らは「中国」でも「共産党」でもなく、東アジアの一部を地場とした成長生存本能むき出しの世界最大のリアリスト組織であって、そのサブ概念として「国家」やら「イデオロギー」やら「漢族の文化」を付帯させているにすぎません。国家システムや社会主義イデオロギー、民族意識といったものは、この彼ら組織にぶらさがっている(彼らという上位組織が活用している)だけなんです。

ですから、このアジア地域で成長を続ける効率化と生産性向上の鬼と化した組織を、ソ連の幻影で染まっている「社会主義国家だ!」などと揶揄したところでナンセンス。50年遅れの概念です。
日本の言論でも「中華人民共和国」という国家システムの問題点、所謂中華思想的発想の排他主義的問題点、「中華人民共和国内の中国共産党」という国内執政党の問題点などを「世界の常識と異なる」と批判されるのを散見します。確かに我々日本人が一般的にもっているオーソドックスな国家や政党といった見方では、たしかに不可解な行動にしかみえないのだと思います。が、それは理解し難いものを非常識と断罪してシャットアウトした思考です。「中国共産党」という相手に対峙をし、分析するためには、その相手のメカニズムを知らなければならない。見方を変えないと。

中国共産党≒新しい概念組織体→その管理下の中国(国家)、という見方でみると、チャイナの動きが世界通念上の常識的なことをやろうとしているのではなく、非常識にチャレンジしてイノベーションをおこそうとしている様子としてみえてくるとおもいます。(それが上手くいくとも、良い手法だとも言ってない。あくまでも見方として。)
この見方によって、一帯一路?そんな覇権主義的なことをなぜ??民主化抑制なぜ?という問いにも、なんとなく彼らの行動原理としての解がみえてきます。

中共指導部メンバー=スターハッカー級のハイプログラマー

概念においては(実体がどうかは別として)、中国共産党とラベリングされているその組織体は、国家システムよりも遥かに複雑な統治システムを内部に持ってしまったし、原理主義的なマルクス・レーニン主義・科学的社会主義を超えたイデオロギーロジックを研究開発しているし、所謂「中華思想」のような民族固着の文化体現を新しく提唱する人類運命共同体として昇華してしまっている。
そう、この組織は「政治哲学システムイノベーター」なわけです。社会主義とは別のイデオロギー政党に生まれ変わったわけでもない(最初からイデオロギー集団でもないけど)。バージョンアップし続ける「何か」です。

もちろん、彼らのコアシステム(ガチガチの社会主義的ロジックと実務的人間統治経験値から下積み構成されたもの)も現時点では完璧とは程遠く、破綻するときは明日にでも一気に破綻するかもしれないし、別の組織(例えば他国や別イデオロギー。民主主義ver2.0とか)からの攻撃によって瓦解するかもしれない。それでも、民主主義のバージョンアップが遅々として進まないなかで(最近は、「民主主義はダウングレード」の様子さえ見られる)、彼らは社会主義というタマゴから育って、ついには社会主義という親をも飲み込んで食べてしまったわけです。確実に政治哲学イノベーター組織として成長しちゃってる。親を捕食した鬼です。

で、このように(中国共産党とラベリングされている)その組織に着目すると、様々な批判(主に、民主主義陣営からの批判)が合致しないことがみえてきませんか。例えば、中国という国家は大衆の不満が~、とか、中華思想をもっているから覇権主義的で~、とか、意思決定が(昔の)党内独裁だから~等々。
合理的に考え続ける超リアリストで生存本能に長けている彼ら組織頭脳自身が、中国の覇権主義が世界各地で嫌がられていることもわかっているし、一党独裁体制(ヘゲモニー政党制)の不安定問題もわかっているし、一般市民による普通選挙がないことによるガス抜きや新陳代謝がおちることもわかっている。これらの諸課題を彼ら組織頭脳は、「民主主義的で、国家という国境を前提とした概念をおいている我々」とは異なった概念上で解決しようとしています(何度も書きますが、それが良いことだとは一言もいってない。)。ICTを手中に収めてからは、その国家マネジメントの卓越性はウナギ登りです。
彼らは、国家リソースマネジメントを100年や10年単位で考えて、効率的に徐々に是正・OSアップデートを内部ですすめています。その意味で、中共指導部というのは最高ハッカー級のハイプログラマー連中。中国共産党は弱肉強食のプログラマー集団とも言いかえられるかもしれないなぁとか、マッドサイエンティストは思いついたりつかなかったりなのです。

まとめ、そして突然降りる緞帳。

まとめ。「中国共産党」は、組織生存本能に忠実に従って、誕生以来100年間、組織瓦解壊死の恐怖に怯えながら高効率高生産を目指し組織イノベーションを起こし続けた結果、「中国(国家)」や「共産党(イデオロギー)」そして「中華思想(民族文化)」を超えた組織(プログラム集合体)になった。このプログラムが中華人民共和国(国家)という巨体ハードウェアを動かしている。昨今の中共指導部はハイプログラマーの鬼神。彼らの国家マネジメントはICTを手に入れたことにより更に超効率に向けて爆進中。
複雑巨大プログラムが故に、なんらかの内部や外部の突然変異に弱い可能性もある。が、末端で意図的にアノマリー(アナーキー性)を発生させて、アノマリーさえシステム化しながら、このままイノベーションをおこし続けたのちは彼ら組織が「何」になるのか不明。
とりあえず目先の近未来としては、「中国共産党」=国家マネジメントの母体プログラム組織。民主的選挙やヒトの寿命(指導者の命)といった「時限装置」を抱えないプロレタリア独裁体制を謳歌して、(所謂)民主主義陣営に対し「時間」の優位性を最大限に活用。究極的にはヒトすら介在しない自己進化型の複数自立AIの中央政治局常務委指導体制による無謬政治システムに進化か?いや、それとも壮大にシステムクラッシュしちゃうのか?

トンデモな雰囲気をかもしつつも、ホントっぽくもある話がノッてきましたが、そろそろこのへんで突然おわりにします。マッドな意見として少しでも頭の片隅においていただければ、チャイナの見方が深まるとは思います。我々日本人にとって強大な競争相手。しっかりとして分析力をもっていきたいですね。
長文にお付き合いいただきありがとうございました!!また次の機会があれば、みなさんお会いしましょう~。本当にありがとうございました!


中川コージ
中川コージ

戦略科学者
SF愛好家で非電源ゲーム(ボードゲーム・カードゲーム・トランプなど)コレクター。ゲームの本質を見極めるため「ゲーム≒戦略」研究の道へ。慶應義塾大学卒業後、英国・中国に留学。北京大学院で日本人初の経営学博士号を取得。日本・中国・米国を中心に世界のAI・ロボット産業、コンテンツ産業、宇宙産業、安全保障サイバー戦略を研究する。中国人民大学国際事務研究所客員研究員。経営学博士。

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