「『技術』が変える戦争と平和」(芙蓉書房出版)を読む


知人からの薦めがあって、道下徳成「『技術』が変える戦争と平和」(芙蓉書房出版)を読んでみたところ、この本は現代に生きる我々にとって必読の一冊であることが分かった。

内容としては当代随一の安全保障の専門家らが現代における技術革新が戦争実務や平和構築に与えるインパクトについて論述したものであり、各パートごとに専門性の高い分析が盛り込まれている形となっている。まさに、同分野における第一人者の講演を一挙に聞くことができたような感覚に陥ること請け合いである。

本書の優れている点は1つ1つの分析の専門性も然ることながら、読者の頭脳の中で各々の議論が相互に紐づいていくように作られていることだ。たとえば、ドローン、3Dプリンター、AIなどの最先端技術の動向が結びついていくことで、新たな戦争形態、として世界秩序の在り方などが自然と脳裏に浮かぶように作られている。これは一人の論者による著作では不可能であり、本書を読むことでしか味わえないものだろう。

筆者が最も印象に残った個別パートは、3Dプリンターが兵站に与える影響を論じた部谷直亮氏による論稿である。古来より戦争の勝敗は兵站管理によるところが大きく、高価な兵器を小ロットで活用する現代戦においては更にその重要性が高まっている。自衛隊においても兵装の部品を十分に揃えられず、同種の兵器間での共食い整備が行われていることは良く知られるところであるが、自衛隊の無謀な兵器購入計画の帳尻を合わせていくのにも有効なものとなるだろう。(また、3Dプリンターの影響で各国間の貿易量が減少し、経済の相互依存体制が崩れる可能性が指摘されている点も興味深い)

日本ではなかなか知ることができない安全保障の最先端の情報に触れることができる良書であり、トランプ政権・米国や習近平政権・中国がどこに向かっているのかを知る端緒になるだろう。国際政治分野に興味がある方は本書を是非手に取ってほしいと思う。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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