陰るモディ人気と2019年総選挙の行方


はじめに

10月28日・29日にモディ首相が訪日し、安全保障・経済連携を今後も強化していくことを日印両国で確認した。安倍首相の別荘にも招待されるなど個人的な信頼関係も強調された。今回は、2019年に行われるインド下院総選挙にかかる現状を、2018年5月に行われたCSDS (Centre for the Study of Developing Societies)の調査結果を中心に解説していく。主な争点は親日家とも言われるモディ首相及び政権の信任だ。

2019年下院総選挙

インドの連邦議会は二院制を取り、下院の任期は5年である。前回は2014年に総選挙を行い、BJPが単独過半数を獲得して歴史的な勝利を収めた。前回の総選挙から5年経つ2019年、改めて下院総選挙が行われ、BJP率いるNDA(国民民主連合)が再度政権を担うことができるかが注目される。また、11月12日のチャッティスガルを始めとし、マディヤ・プラデッシュ、ミゾラム、ラジャスタン、テランガナの5州の州議会選挙が、総選挙へ向けた前哨戦の位置づけとして重要になる。

モディ政権を取り巻く状況

調査結果を見ると、インド全国レベルで現政権否定派が47%と、支持派39%を8ポイント上回り、現政権否定の兆候が見て取れる。南部ではその傾向が顕著で、現政権否定派が支持派の2倍以上のポイントを稼いでいる。東部のみ現政権支持派が否定派を上回っており、北部・中央部・西部のいずれの地域でも、僅差で現政権否定派が上回っている。※表1参照

【表1】

現政権に否定的な意見が過半数近くを占めるようになっている背景には、現政権の成果に満足していない人々が増加していることが挙げられる。1年前(2017年5月)の調査時点では、政権の成果に満足と回答している人は64%と不満足の2倍以上いたが、今回の調査(2018年5月)ではそれぞれが47%で、ポイント差は0になってしまっている。
※表2参照

【表2】

次に、個別の政策課題別にモディ政権の評価を見てみる。いずれの課題に対しても、不出来(Bad job)という評価が上出来(Good job)という評価を上回っている。また、上出来という評価は過去1年下がり続け、不出来という評価が上昇している傾向から、人々の現政権への不満もしくは失望が蓄積している様子が見て取れる。※表3参照

【表3】

2019年総選挙の行方

総選挙の行方で最も注目されるのは、現BJP政権率いる国民民主連合(NDA)が引き続き政権与党を担うのか、あるいは野党コングレス率いる統一進歩連合(UPA)が再度政権を奪取するのかという点だ。NDAへ投票する意思を示す割合は、調査を経る毎に減少しており、現時点ではNDA、UPA、その他の3つのグループで票を分かちあう形になっている。※表4参照

【表4】

このNDAの支持率の低下に呼応するようにして、総選挙を戦うNDAのモディ首相とUPAのラフール・ガンディーの評価に面白い変化が表れている。表5は、有権者から見て誰が首相にふさわしいかという調査結果だが、2014年総選挙直後はナレンドラ・モディはラフール・ガンディーと比較して2倍以上のポイントを稼いでおり、圧倒的な人気を示していた。しかし、直近の調査では7ポイント差までその差が埋まってきており、モディ人気の低下とラフール・ガンディーの人気の上昇が見てとれる。

【表5】

また、ナレンドラ・モディとラフール・ガンディーを比較した調査では、「好き」という回答はそれぞれ43%であるが、「嫌い」と回答した割合はわずかながらモディがラフール・ガンディーを上回っている。「好き」の割合から「嫌い」の割合を差し引いた人気では、僅差であるがラフール・ガンディーが4ポイントリードしている。※表6参照

【表6】

最後に

2018年11月の世界銀行の調査において、世界のビジネス環境ランキングで130位台と低迷していたインドが77位に躍進し、外国からは一定の評価を得つつある。また、モディ首相は強力なリーダーシップの元、長らく議論されていたGST導入を断行し、中長期的なインドの発展必要な改革を行い、成果を上げている。

しかしながら、今回のCSDSの調査結果は、5年間という政権任期の中で、インドの広大な国土に分散する多くのステークホルダーが満足するような政策を実行することの困難さを示している。また先日、インド準備銀行の元総裁ラグラム・ラジャン氏は、GST導入と高額紙幣廃止について、インドの経済成長に深刻な打撃を与えた、とコメントしており、実際に世界経済が好調である中で、成長率が鈍化している。また、7パーセント台のGDP成長率は自国労働市場で増加する労働人口を賄うには十分な経済成長ではないと指摘した。

2004年の総選挙の際にも、経済改革を推進していたBJPがコングレスに敗れた歴史があり、今回同様のシナリオになる可能性も否定できない。今後は5州の地方議会選挙と2019年2月に発表される国家予算案で、どれだけ支持を固められるかが焦点となる。


鈴木慎太郎
鈴木慎太郎


米国公認会計士。SGC(スズキグローバルコンサルティング)代表。2010年5月よりニューデリー(インド)在住。40社以上のインド拠点設立、100社以上のインド・会計税務にかかるコンサルティングに従事。2016年よりスズキグローバルコンサルティングを設立し独立。日本企業向けにワンストップでインドの拠点設立・会計・税務・法務をカバーする総合コンサルティング事務所を経営。 URL: https://www.suzuki-gc.com

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