北方領土の不動産と日本の税金


11月14日にシンガポールで行われた、日露首脳会談。会談の後の記者会見で、安倍総理は次のように述べています。

「先ほど、プーチン大統領と日露首脳会談を行いました。その中で、通訳以外、私と大統領だけで平和条約締結問題について相当突っ込んだ議論を行いました。
2年前の長門(ながと)での日露首脳会談以降、新しいアプローチで問題を解決するとの方針の下、元島民の皆さんの航空機によるお墓参り、そして共同経済活動の実現に向けた現地調査の実施など、北方四島における日露のこれまでにない協力が実現しています。この信頼の積み重ねの上に、領土問題を解決して、平和条約を締結する。この戦後70年以上残されてきた課題を、次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つという、その強い意思を大統領と完全に共有いたしました。そして、1956年共同宣言を基礎として、平和条約交渉を加速させる。本日そのことで、プーチン大統領と合意いたしました。(以下略)」

1956年共同宣言では、日本とソビエト連邦(当時)との間の平和条約が締結された後に、歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことが明記されています。これを基礎として、日本とロシアとの間で平和条約が締結されると、歯舞群島と色丹島が日本に返還されることが期待されます。

ところで、いま、北方領土の土地を持っている人は、その土地について日本の固定資産税を払っているのでしょうか?また、そのような土地を相続した場合には、相続税はかかるのでしょうか?北方領土が返還されると、これらの税金はどうなるのでしょうか?

この点について、平成20年に、河村たかし議員(当時)が政府に質問をしています。
北方領土の旧島民の権利に関する質問主意書」という題名で、質問は次の5つです。
①北方領土の旧島民の不動産の権利は、どのように登記されているのか。
②北方領土の不動産には、固定資産税の評価や課税はどうなっているのか。
③北方領土の不動産は、ロシアに占領されて権利が制限されているが、国は権利者に対して何か保障をしているか。
④北方領土の不動産の権利者が死亡した場合、相続税がかかるのか。
⑤北方領土が返還されたら、不動産の権利は復活するのか、またその方法は。

この質問に対して、政府は次のように答えています(衆議院議員河村たかし君提出北方領土の旧島民の権利に関する質問に対する答弁書を基にして、わかりにくい言葉をわかりやすくしました)。

①択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島(以下「北方四島」という。)の不動産は、北方四島から持ち出された当時のままの登記簿、土地台帳及び家屋台帳が、現在も、釧路地方法務局に保管されていて、閉鎖の手続は行われていない。ただし、現在は、北方四島における不動産の登記事務は行っていない。
②北方四島に所在する固定資産に対しては、固定資産税は課されていない。
③国が、不動産の権利者に対して補償を行ったことはない。
④北方四島は、相続税法附則により、当分の間、相続税法の施行地から除かれている。
相続のときに日本に住所がある者は、相続により取得した財産の全部に対し、相続税が課税されるが、租税特別措置法により、相続財産のうちに昭和20年8月15日において相続税法の施行地外にあった財産がある場合は、その財産の価額は、相続税の課税価格の計算の基礎に算入しない。
相続のときに日本に住所がない者は、相続により取得した財産で相続税法の施行地にあるものに対し、相続税が課税される。よって、同法の施行地から除かれている北方四島にある財産については、相続税の課税の対象となっていない。
⑤北方四島における不動産の所有者については、当該不動産が滅失している等の特段の事情がない限り、その所有権は、消滅していないと考えている。」

ということで、北方領土の不動産の登記は、現在も生きているようです。しかし、その不動産を持っている人にとって、その不動産を利用することはできないため、固定資産税はかかっていない。そして、その不動産を持っている人が亡くなって相続が発生しても、相続税の対象にはならない、ということですね。

今後、日本とロシアとの間で平和条約が締結され、北方領土の問題が解決されていくことが期待されます。その結果として歯舞諸島、色丹島が返還されると、こういった、登記や税金などの公的な取扱いの整備も、あわせて対応が必要になりそうです。


平山 哲二


仮想通貨マニア。三度の飯よりも仮想通貨を考えることが好き。10年ほど前から金融商品や海外投資に興味を持ち、リサーチしていたところ、3年前にビットコインに出会う。それ以来、ビットコインやその他の仮想通貨に強く興味を持ち、税務などの観点から仮想通貨を研究している。

平山 哲二の記事一覧