追悼:勝谷誠彦先生に捧げる「明るく楽しい日本の作り方」



【出典】勝谷誠彦氏と筆者

勝谷誠彦さんが亡くなった。本人や秘書のT1君には復帰策としてThe Urban Folksに寄稿いただきたい~と相談していたので、本当に残念でならない。ここに追悼文を書きたいと思う。

偉大なるエンターテイメント・コラムニスト。

個人的にはそう恩っている。

勝谷誠彦という異能

・幅広い知識と深い教養
・地学、漫画、料理、軍事、科学・・・うんちくの面白さ
・戦場へ潜入するなどなどの迅速さ、チャレンジと勇気
・自称落ちこぼれだけど物凄い有能なのに、自分を笑い飛ばすセンス
・何にも忖度しない、空気を壊す鋭い発言の数々
・日本の土地、名産品を愛する国士たる精神
・きわどい文化までも価値を見出すその姿勢
・恥ずかしさや既存の価値観すら相対化してしまう生き方・生きざま

まさに、「タレント」である。

時にはかなりの波紋を呼ぶ発言もあったが、人々の心・感情を揺さぶる言葉の数々を言論人として読者や視聴者に投げかけ、届けてきた。

弟の勝谷友宏先生が告別式で話したように
「勝谷しかできない」「勝谷節」
が炸裂した時の爽快感はたまらないものであったなあと今でも思う。

特に、あの日航機墜落を運よく切り抜け、フィリピン・イラク・ウクライナ数々の潜入取材も乗り越えてきた。そして、臨場感あふれる言葉を世の中に伝えてきた。

皆が心をおどらされる発想の数々、「過激な」言動の一方、弱みを見せ、軽口で人を笑わす。その奇想天外なふるまいとキャラクター。ふざけているようだが(実際ふざけていたし)、でもほんと楽しかったと思う。だからこそ、勝谷さんを支えた高橋ヨロン茂さんは言ったように「多くの人に愛された」。

「明るく楽しい兵庫県」

「明るく楽しい兵庫を」という冊子が手元にある。

私は「目標」を掲げます。公約としてはこのひとつだけです。かつてことこまかなマニュフェストを掲げた政党もいましたが、ほとんど実現しませんでした。4年の任期の間には、さまざまなことが起きるでしょう。天災もあるだろうし、県だけではどうしようもない国政の上での変化もあるかもしれません。それらを予測して、いいかげんな「公約」をする勇気が私にはない。
「目標」を掲げようと思います。私が知事にいる間には達成できなくとも、いつかはそこに到達したいという輝く星を掲げたいのです。県民と県職員がみんなでその星を見つめて、あそこに行くのだと思えるような。その間の道のりは厳しいかもしれない。けれども、あなたや、あなたの人生もそうではなかったでしょうか。そして、渋面を作って耐えるよりは「やったるで」と笑う方が辛くなかったのではないでしょうか。だから「明るく楽しい兵庫県」なのです。過程が「明るく楽しく」であり、達成したならば本当に「明るく楽しい兵庫県やで」と、他県や他国の人々の胸を張れる。そんな兵庫県を私は創りたい。

【出典】勝谷まさひこの公約「明るく楽しい兵庫県」より

「渋面を作って耐えるよりは「やったるで」と笑う」というこの姿勢。これこそ勝谷さんの生き方だと改めて思う。

・灘高で「天国の一番底」であった問題児であっても生徒会長に
・文春を辞めても、選挙に負けても、その顛末を文章にするただでは起き上がらない
・テレビ番組を下ろされたことなど色々苦労があってもへこたれない
・毎日、日記を書いて、余計なことまで書きとことんまで自分をさらけだす

経験に裏付けされた言葉の数々。素直に自分の弱さをさらけ出し、「自由に生きる」ことをリアルタイムで体現した生きざまに(陰ながらの努力を対外的には見せなかったが)。多くの人は共感するのだろう。

楽しくないとあかん「明るく楽しい日本の作り方

勝谷誠彦という人物が生きざまで示した「楽しさ」そして「自由」。個人的には、これこそが21世紀の価値観だと思っている。

国民・住民が明るいか?楽しく生きているか?

この社会は不安だらけで、人が相互不信を起こして、他人やシステムへの信頼を失っていて、ますます皆が孤独になっている。生きにくいこの社会を明るくするためには、まずはコミュニケーション、自由を尊重、他人の事情の理解だろう。

このままだとますます
・知らないものへの偏見
・違う価値観への批判
・ポジショントークで広がる本音と建前のギャップ
が社会を覆うだけだ。

皆が相手を理解しようとすること、相手の事情を想像してあげること、弱さを認め、許しあうこと、相手への思いやリが自分をも救うこと、一人一人のちょっとした我慢が全体を救うこと

これは勝谷さんから私が学んだことです。

内田樹さんが言ったように、社会は「他人のごみを拾う人が7%いれば回る」。そして日本社会の強さはそこにあったのだと思うし、勝谷さんが「良民常民」と呼んでいた日本人の市井の方々、先輩・先祖たち。名もない人たちの倫理と日々の暮らしと仲間意識によって支えられてきた。

筆者は
物事を自分の都合のよいように解釈してしまう弱い人間
立場・ポジションや利害に敏感に生きてしまう弱い人間
本当にやりたいことや楽しいことより縛られて生きることを選ぶ人間
をよく批判してしまっているけど、それだっていいじゃないかな。相手の弱さに寄り添えない自分を恥じます。そして、大事なのは自分の弱さを認めることからなのかなと思う。

ね、勝谷さん。

「楽しい」と感じられる場面をいかに増やせるか、楽しさを感じて「自由に」生きていける人を増やすか。そんな社会をどう築きあげていくか。多くの人が多くの面で支えあって社会が成り立っている点を示すことから私は活動を始めたいと思っています。

勝谷誠彦さん、私も微力ながら良民常民の1人として頑張っていきます。あなたは僕の先生でした。最後まで寄り添えなくてごめんなさい。

合掌

尼崎市七松の昭和公園より
心からの感謝と愛をこめて

西村健


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、事業創造大学院大学 国際公共政策研究所 研究員・ディレクター、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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