新時代の行政改革【第2回】働き方改革こそ行政改革


働き方改革が進んでいる。東京都では時差BIZなども行われているし、地方自治体でも話題に上る事が多い。地方自治体で話をすると、「仕事が多い」「今後も(仕事が)減るわけがない」という話をよく聞く。

確かにそのとおりである。社会の複雑化や個人の価値観の多様化ゆえに、自治体に求められる住民からの期待が増大、結果として、求められる業務量は増加するであろう。人工知能や各種先端技術・IoT技術が対応できたとしても、今後のニーズ増大は避けられない。

話題の東京都に限っても一般行政職に限っても、支給実績(27年度普通会計決算)51,394,307千円、職員1人当たり平均支給年額(27 年度普通会計決算)345 千円、職員1人あたり34万円、月平均にすると2.8万円かかっている。もちろんこれらは税金だ。

事実や時間の把握がされていない現実

そもそも、残業時間は把握・測定されていても、どの業務にどれくらい時間がかかっているのかが「見える化」されていないという問題がある。人ごとに残業時間は把握されていても、どの業務のどの作業にどれくらい時間がかかっているかはわからないことが多い。

さらに、「その業務に何時間かけられる時間‘(リソース)があるのか?」「かかわる職員の業務担当はどのように決めて、途中でテコ入れしてます?」と聞いて、答えられる人がいないことが経験上多い。現実を正確に数字にもとづいて把握することは問題解決の前提なのだが。

そのため、残業削減のための議論はいい悪いの価値判断を含んだ話し合いになりがちである。様々議論しても、建前論と本音が入り混じる中途半端な議論に終わり、お約束程度の実行案しか実行に移されない、ということになりがちだ。

さらに、実際の業務時間と残業として認められた時間の差、いわゆるサービス残業の時間も把握できていない。結果、対処療法的なものになってしまう。

数字にもとづいた議論を

事実や数字に基づいた認識ができれば、原因追求と具体的な対策が企画しやすい。「なぜそう思うのか?」「そもそも仕事の中身を吟味しているのか?」「事業や業務をやめることができないのはなぜか?」を徹底的に考えることが可能になる。

・その職員が業務を担当する理由は適切か?
・その業務に求められるスキルや経験はどれくらいで、担当職員はどのレベルにあるのか?
・その業務の優先順位はどれくらいかのか?
・なぜその業務を行う必要があるのか?
・その業務はどのレベルまでやる必要があるのか?
・レベルを下げること、やらないことのリスクはどれくらいか?
などを考察することができると、道が開ける。

残業のインセンティブをなくす

そして残業することのインセンティブをなくす必要がある。業務時間をかければそれだけ成果は出るものだし(個人の能力の差によって多少変わる面があるが)、職場にいることは職場でのプレゼンスを高め、情報収集のチャンスを増やす。つまり、得なのだ。さらに残業時間が多ければ給与も一定額増えるし、職場でのプレゼンスも上がり(信頼が高まる)、情報も集まる。このことは別の意味でいうと、公正な競争をむしばんでいるともいえる。

遅くまで残業し、休日出勤をしている職員は、状況を知らない他課の職員にとっては「あいつは頑張っている」「重大な業務を任されているのだろう」と見えてしまう。組織風土において「残業が悪」という価値観が支配的になっていない条件下では、残業しないで帰る職員は「偉い」、つまり内部での評判機能は向上するのは当然のことだ。残業を許すことは職員の人事評価上の公平さを棄損する。程度問題であるが。

さらに言うと、命令に従って仕事をする職員に残業をさせることを許す首長はルールのもとの公平な競争(成果を出すという)をしていないともいえる。時間外業務にかかわる人件費も見るべきものだろう(議員さんチェックしてください)。

公正な競争のためにも、問題に対処しなければならないということがより鮮明になったであろうか。

キーワードは「責任分担」と「協力」

他方、残業発生は構造的な問題であり、その要因は複合的だ。単なる課1つでできることではない。全庁の明示的なルールや暗黙のルールが職員の行動に影響を及ぼしているし、その度合いや特徴を見極めたうえで取り組む必要がある。
また、「有給休暇取得率」、日本全体の問題でもあるが、大変低い。自治体の中には20%近いところでさえ結構ある。普段の疲れの休息、家族とのふれあい、自己実現、視野を広めるボランティア活動等々、チャレンジする暇もない。そもそも、自治体職員は地域の公共的な活動に、半強制的、反自主的に参加することも多い。

そうした現状を見て、無理のない「働き方改革」が問われてくる。それが新しい時代の行政改革につながる。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、事業創造大学院大学 国際公共政策研究所 研究員・ディレクター、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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