トランプ大統領に影響力を強めるリバタリアンのランド・ポール上院議員


ランド・ポール連邦上院議員がトランプ大統領のシリア・アフガニスタンからの撤退を支持しており、昨年末から同大統領への影響力が上がったと報道されている。率直に言って、筆者はリバタリアン的傾向が強いランド・ポール議員に強いシンパシーがあるため、それらの報道内容については些か懐疑的ではあるものの、この動きを非常に興味深くみている。

ランド・ポール議員は対外的な米国の介入主義に強く反対する人物であり、内政面においてもオバマケアへの徹底的な反対姿勢で知られている。そのため、同氏の政治姿勢に反対する暴漢に襲われるなど度々危険に晒されることもあり、それでも自らの政治信条を変更しない硬骨の士である。同上院議員は米国においては数少ない親ロシア派の議員とみなされているが、それもロシアに対するシンパシーというよりは対外的な介入主義から撤退するにはロシアとの協調と応分負担が必要という考えから来ているとみなすべきだ。。

トランプ大統領はそのランド・ポール上院議員と最近になって頻繁に連絡を取り合うようになり、自らの外交・安全保障政策について助言を得ているようだ。トランプ大統領がランド・ポール上院議員と頻繁に連絡を取るのは、2017年にオバマケアの見直しで同上院議員が徹底抗戦していた際に直接説得を試みた時以来ではなかろうか。

筆者の見立てでは、トランプ大統領のシリア・アフガニスタンからの撤退決断はリバタリアン的な意思の発露によるものではないと思う。たしかに、同地域における米軍駐留は多額の経費を要する全く間尺に合わないものであるため、撤退決断にコストカットの視点はあることは確かだろう。しかし、同大統領の場合はイデオロギーというよりも実利、そして対中交渉へのリソースのシフトという意志の方が強いように見える。同大統領の政治決断を対外関与からの撤退と考えることは早計であり、理念的なリバタリアンであるランド・ポール上院議員との関係も中東方面における部分的な協調とみなすべきだ。

米国の世論調査上もシリア・アフガニスタンに米軍を駐留し続けることについて、中東にこだわりがある一部の保守派を除いて必ずしも支持を受けているわけではない。ただし、トランプ大統領は自らの支持基盤の中核を占める保守派の人々からの批判を弱める防波堤を必要としている。トランプ大統領とランド・ポール上院議員の接近もトランプ大統領による方向転換のための支持基盤の組み直しの一環に向けた現象だろう。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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