【2020年 私たちの病院選び】「第5回:ユーチューバーと医療広告」


YouTuber(ユーチューバー)と呼ばれる方々による「医療の体験動画」を見かけるようになりました。
体験動画の配信を「医療法における病院等の広告規制について」という視点で考えてみます。
ユーチューバーの体験動画を、医療を選択する私達はどのように見たらいいのかを考えるきっかけになればと思います。

医療広告の制限と罰則について

ユーチューバーが気を付けなければいけないことは、医療機関の広告には制限があることです。そして、広告であれば規制の対象で、広告でなければ規制の対象でないというのも大きなポイントです。詳しくは、厚生労働省の文書「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)等について」を確認するのが良いでしょう。

広告違反の指導及び措置ですが、行政指導、報告命令又は立入検査、中止命令又は是正命令、告発、行政処分とあり、中止命令若しくは是正命令に従わず違反広告が是正されない場合は、医療法73条により6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が適用されたり、施設閉鎖の行政処分もありえます。そして、その対象は医療機関だけでなく、広告媒体や広告(情報)を発信した人も対象となります。

では、医療広告の掲載許可や監視はどのように行われているのでしょうか?

掲載許可は広告する人の申告制となっています。多くは都道府県や政令指定都市の保健所に窓口があります。申告しなければ、新聞・テレビ・雑誌などの「媒体の自主的なガイドライン」が監視役となります。しかし、ネット上の医療広告媒体は十分に監視されているとは言い難い状況だと思います。自主的にガイドラインを遵守する医療機関が多いと思いますが、とりあえず広告をしてみて指導があれば是正をするという対応をしている場合も少なくないと思います。

医療広告ガイドラインを守って配信するか?あまり検討せずに配信してしまうか?は、ユーチューバーさんの良識に委ねられるというのが現状であると思います。

YouTubeで体験動画を掲載しても良いのか?

医療広告においては、患者の体験談の掲載は許可されていません。

ここで再度、厚生労働省の文書「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)等について」を確認してみましょう。

P5に「患者等が自ら掲載する体験談、手記等は、広告と見なさない」とありますので、掲載は可能のように見えます。

もう少し詳しく見てみましょう。

厚生労働省の文書(「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)に関するQ&Aについて」の改訂について)を確認してみると、Q2-11の回答で「医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しません。」と回答されています。

逆に言えば、特定の医療機関への誘引性がある場合には、広告規制の対象となるということです。

誘引性がある場合とは、どのようなものでしょうか。

さらに、Q1-18を見てみますと「医療機関が患者やその家族に(有償・無償を問わず)肯定的な体験談の投稿を依頼した場合は、当該体験談には誘引性が生じます。」とあります。

つまり、お金をもらっていなくても広告と見なされるケースがあり、それに該当すると体験談は広告とみなされ、掲載できないコンテンツになります。

ユーチューバーによる医療体験動画の大いなる可能性

私自身は、ユーチューバーの方々による医療体験動画は、市民のとって有用なコンテンツになる可能性があると考えています。医療機関から依頼や広告費をいただいたり、医療費をディスカウントされて施術を受ける等といった誘引生のあるものでなく、客観的な視点で体験した医療を発信してくれることは本当に貴重な情報です。

「○○手術をしてきました」というだけの説明だけでなく、何をどう治療するのかといった詳細説明があったり、ビフォワーアフターまで見られるのであれば、かなり参考になるのではないかと思います。

一方で「こういった動画が増えると、さらに規制が増えそう」と感じる動画もあります。

たとえば、かなりの再生数がある外科手術の体験動画の中には、医療従事者でない私が見てもヤバイ衛生環境で行われている手術室映像などがでてきます。実際に、医師に確認したところ「あなたが感じたのと同じ」とのことでした。
コメントを拝見しますと衛生環境への心配が書かれており、ネット情報のバランス感覚を感じます。コメントをしっかりチェックする必要がありそうです。

テレビ業界は高齢者番組が元気だと聞きます。ネットでもシニアマーケットは拡大していくのかもしれません。ビジネスモデルには課題がありそうですが、医療系広告にはやり方が多いのも事実です。医療系ユーチューバーなんてのが出てくるのかもしれませんね。


山内真一
山内真一

Webディレクター/コト・デザイナー
1998年テットコム創業。医療・保育・健康・士業等の制約が多い業界を編集し、新しい市場・顧客・人材を創り出す。また、地元のエリアリノベーション事業、茶畑・企業用地・中山間地での自転車レースイベント開催等のサイクルスポーツ推進事業も手がけている。

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