【TOKYO建築が開く未来:建築家・久保秀朗さんに聞く】「新たな都市の誕生」第1回:六本木ヒルズ


新進気鋭の建築家、久保秀朗さんとともに、東京の建築物を考える企画をスタートさせることになりました。
・一般の人が持つ素朴な疑問
・デザイン1つが持つ意味
・建築デザインが東京にもたらすもの
・建築の奥深さ
について専門家に解説してもらおうと思っています(注:写真はすべて西村健の撮影です)。

まずは久保さんのご紹介。

久保秀朗さん(Hideaki Kubo)
建築家、一級建築士、株式会社久保都島建築設計事務所 代表取締役
【経歴】
1982年千葉県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。EU-Japan AUSMIPにてSint Lucas Architectuur (ベルギー)に留学の後、2008年東京大学大学院新領域創成科学研究科修了。吉村靖孝建築設計事務所を経て2011年久保都島建築設計事務所設立。 主な受賞歴、日本建築学会新人賞、JCDデザインアワード金賞、AR AWARDS2016入賞など。
【ホームページなど参考】
http://kbtsm.com/
http://touron.aij.or.jp/2017/02/3498

第1回は六本木ヒルズです。

六本木ヒルズの基本情報

まずは六本木ヒルズについて紹介します。

竣工 : 2003年
主要用途: 事務所、住宅、ホテル、放送センター、商業施設、文化施設、公共公益施設
階数 : 事務所棟 : 地上54階、地下6階
住宅棟A棟 : 地上6階、地下2階
住宅棟B・C棟 : 地上43階、地下2階
住宅棟D棟 : 地上18階、地下2階
高さ: 森タワ一高さ238 m
参考HP: http://www.arcstyle.com/tokyo/roppongihills.html
https://www.mori.co.jp/projects/roppongi/

☆☆☆建物側の解説☆☆☆
・最もシンボリックな建物である六本木ヒルズ森タワーのデザインは折り紙や鎧兜などをモチーフに、折る、重ねる、明暗をつけるといった、日本の伝統的な要素を感じさせるディテールを用い、幾何学的なデザインに仕上げ、太さがある建物を空に溶け込むような色合いと彫刻的なフォルムで、威圧感なくスマートに表現
・見る角度、時間によって建物の表情が変わる点も特徴的 

【出典】六本木ヒルズHP参考

☆☆☆評価☆☆☆
・オフィスタワーの胴部を曲線状の何枚ものプレートで覆っていること。それは「武士の鎧兜(samurai armor)の層状になっているところからヒントを得た」「西洋人からする六本木ヒルズ森タワーは日本風に感じる」とも

【出典】六本木ヒルズHP参考

建物の設計は、メインタワーがニューヨークの設計事務所KPF、ショッピング部分がジャーディーアソシエイツ、マンションとホテルはテレンスコンランプロデュース、テレビ朝日は槙文彦さん、ランドスケープは佐々木葉二さんなどいわば「オールスター」で設計されたこの建物。その六本木ヒルズの凄さとは何かを探っていきます。

ハイリスクな再開発であった

西村:
六本木ヒルズのどこが凄いのですか?

久保:
そもそもの事業方式が特異なのです。大規模再開発は官有地の土地払下げによる大きな土地を使って事業化するのが典型的ですが、六本木ヒルズは500件もの地権者をまとめあげることで実現したというプロジェクトです。工事着工までに15年もかけたという非常にハイリスクなものです。

森ビルは、裏通り側の地権者と表通りの土地をまとめて開発する「共同建築」という方式で貸しビル業を成長させた企業です。多くの地権者を粘り強く説得して合意をとっていくという、森稔社長の執念と強いリーダーシップによって実現した長期的な開発で、なかなか現代ではあり得ないと思います。

計画にも学ぶべきことが大いにあります。六本木ヒルズは多くの機能が複雑に構成されています。ゾーンごとに完全に切り分けたほうが計画も運営も楽ではありますが、単調な街並みになってしまいます。六本木ヒルズには、住居、文化施設、オフィス、ホテル、商業施設など様々なプログラムが立体的に入り混じっていることが、街としても面白みをつくっています。

また、もっとも賃料が高くステータスの場となる最上階に、美術館を持ってくるあたり、文化を発信するマニフェストや意気込みが感じられます。東京が都市として国際的な競争力を持つことを考えたときに、ヒントになることが多くあると思います。

西村:
確かに、ブランドとして「ヒルズ族」なる言葉も生まれ、今でもそのステータスは凄いものがあります。六本木ヒルズのデザインの特徴はどのあたりですか?

都市の中に都市がある!

久保:
六本木ヒルズにはデザインスタイルの全く異なる複数の建築家が関わっています。森タワーでは、KPFというニューヨークの設計事務所がタワーのデザインを担当し、低層部はジョン・ジャーディーという建築家がデザインしています。ジョン・ジャーディーは博多のキャナルシティを設計した建築家でアメリカ西海岸スタイルのざっくりとした素材の組み合わせと、地形的なグネグネしたデザインが特徴です。片やスタイリッシュな超高層ビルのデザインを得意とするKPFとの異色な組み合わせに、当初は猛反対があったと聞いています。例えるなら、ものすごい仕立ての良いスーツに、ラフなサンダルを合わせたようなイメージでしょうか。

また住居棟はイギリスのデザイナーのテレンス・コンランがヨーロッパ風の重厚感のあるデザインをし、テレビ朝日本社は、槇文彦さんが白とガラスを基調とした、端正な正統派モダニズム建築をデザインしています。国籍もスタイルもまったく異なる建築家を組み合わせたことが、結果的に都市のような多様性を生み出すことができたのだと思います。

西村:
東京の建築を変えるシンボルになったように思えます。「空を支配」するメガシティの象徴になったのでと思いますがどうでしょうか?

久保:
そう言えます。ある意味では、再開発の手法やイメージを根本から覆した事例です。現在でも渋谷を始め大規模再開発が進んでいますが、大きな影響を与えてきたと思います。強いビジョンをもったリーダーがいたからこそ実現できた稀有な事例だと思います。

西村;
昭和とは違う、都市の再開発、新たな時代に新たな時代を拓く哲学が背景にあったというのは驚きでした。前後も知っていますし、近くに住んでいたこともあり、自分にとっても思いいれがある施設。無意識的に何かを感じているのかもしれません。風水的にも見てみたいですね。今回はどうもありがとうございました。


西村健
西村健

人材育成コンサルタント、NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、事業創造大学院大学 国際公共政策研究所 研究員・ディレクター、一般社団法人日本経営協会講師、未来学者。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア入社。 その後、日本能率協会コンサルティングで経営・業務改革、人材育成、能力開発を支援してきた。独立後、人事評価制度構築・運用、キャリアカウンセリングなどのコンサルタントとして活動中。最近はプレゼンテーション向上、モチベーション施策などに注力。

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