2020年大統領選挙、民主党の有力候補者の顔ぶれ



(カマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州選出))

2020年大統領選挙に民主党エリザベス・ウォーレン上院議員が出馬検討を表明したことから、米国民主党内の予備選挙争いが実質的にスタートすることになった。ウォーレンは民主党内左派候補者として良く知られた人物であり、最近では自らのDNAにネイティブアメリカ人の遺伝子が混ざっているかどうかでトランプ大統領と口論になったことで知られる。(DNA鑑定の結果は遺伝子の大多数が欧州系であり僅かにネイティブアメリカ人のDNAが混ざっていたという結果。ネイティブアメリカン界隈からも不確かものとして失笑を買うことになって失速気味。)

日本ではあまり知られていないが、現在最も有力な民主党大統領候補者として考えられている人物はカマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア)である。ハリスはジャマイカ系・インド系にルーツを持つマイノリティ候補者である。キャリアは法律畑であり、カリフォルニア州の地方検事、州司法長官を務めた後に同州の上院議員となっている。2016年に選出されたばかりの1期目の上院議員であるが、カリフォルニアという民主党の大票田を地盤とし、本人が持つバランス感覚とイメージの良さ、民主党指導部とのパイプなどから、各種世論調査では他の潜在的予備選挙候補者よりも頭1つ抜けた存在となっている。仮に2020年の予備選挙で他党内候補者に敗北したとしても、2024年に共和党からの立候補が確実視されているインド系のニッキー・ヘイリー元国連大使に対抗する候補者としては面白そうだ。

二番手はニューヨーク州上院議員のカーステン・ギルブランドとテキサス州で共和党のテッド・クルーズと大接戦を演じたヴェト・オルークだろう。ギルブランドは元下院議員の経歴を持つヒラリー後継の上院議員であり、マティス国防長官の上院承認投票で唯一反対票を投じており、左派系団体からのレーティングでは常に上位に並ぶ筋金入りの左派だ。ヴェト・オルークは惜しくも敗れはしたものの、オバマ2.0と呼ばれて全米から資金調達を実施、きめ細やかな選挙戦術で保守地盤であるテキサス州で共和党候補者と戦った民主党の新星である。オルークはウォーレンやギルブランドと比べると保守票を確保できる可能性があるため、民主党の予備選挙に出てくるならば台風の目玉となる候補者と言えよう。

ベテラン勢力としては、バーニー・サンダース上院議員、ジョー・バイデン元副大統領、コーリー・ブッカー上院議員、そしてヒラリー・クリントンの名前まで挙がっているが、これらの候補者たちが政治的勢いを獲得できるかは不透明である。サンダースはカルト的な人気があるが、実は有色人種票にあまり強いとは言えないという弱点もある。残りの3人はエスタブリッシュメント色が強すぎるため、予備選挙で大きなムーブメントを起こせるかというと厳しいだろう。

一方、大金持ちの潜在的候補者として注目されているマイケル・ブルームバーグやトム・ステイヤーも必ずしも資金面で圧倒的な優位に立てるかというと疑問だ。上記の有力な挑戦者たちは既にオンラインからの献金を大量に収集する仕組みを構築しており、予備選挙の過程で注目を浴びていくことで更に一般党員からの献金額が拡大していくサイクルに入る可能性がある。巨額の自己資金は選挙戦初期の優位を確立するのに役立つかもしれないが、予備選挙終盤においては決定的な影響力を持つものではなくなるだろう。これは名前が挙がっている大手カフェチェーン経営者などの他の大金持ち候補者にも同じことが言える。

以上のように非常に多様な候補者の出馬可能性が指摘されている民主党予備選挙であるが、筆者は上記の候補者ら以外にもアッと驚く候補者が登場することも十分にあり得ると想定している。なぜなら、トランプ大統領は必ずしも選挙に強い候補者ではないので、民主党内の基盤を固めて米国中間層からも得票できる女性の候補者であれば大統領になる可能性が極めて高いからだ。一部の噂話では、ミッシェル・オバマ元大統領夫人の名前すら取り沙汰されている状況だ。

トランプ大統領は民主党候補者を迎え撃つにあたって、早々に共和党内の予備選挙を実質的に終了モードに持っていき、この1年間でイメージを変えていく作業を行うことは必須であろう。一体どのような交渉手腕を見せるのであろうか。今後の展開からますます目が離せない。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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