下院総選挙へ向け加熱するインド政治情勢


5州選挙で議席数を減らし苦戦する政権与党

2018年12月に結果の出た5州の議会選挙は、現政権与党BJPが大きく議席数を減らした。いずれの州も野党コングレス(Indian National Congress – INC)又は地方政党がBJPを獲得議席数で上回り、事前の調査でも示されていた現政権に否定的な意見が示された結果となった。

以下のグラフで示す通り、ラジャスタン、チャッティスガル、マディヤ・プラデッシュ州の3州は、コングレスが単独過半数の議席数を獲得した。今回の選挙結果で見過ごせないのは、同3州が北インドのヒンディー・ベルト(ヒンディー語又はウルドゥー語を主体とする言語圏、Hindi heartlandとも呼ばれる)を構成する州の一部であり伝統的にBJPの票田であったことだ。本結果は、BJPに2019年総選挙に向けて大きな危機感を抱かせるのに十分であったと言える。





【出典:NDTVホームページ】

5州選挙後の情勢

直近でメディアを大きく賑わせているのは、低所得一般カテゴリー(従来、制度の恩恵を受けてきた下級カースト以外の出身者を指す。)に追加で10%の高等教育機関・中央政府職員枠の留保である。

インドでは下級カースト(SCs, STs, OBC)出身者に対して、高等教育機関・政府職員募集枠の50%近くを留保する制度がある。入学枠や雇用枠の留保はインド独立当初、歴史的に差別を受けてきた下級カースト出身者への補償的な意味が強かったが、現在ではカースト帰属意識を集票につなげる、より政治的な意味が強い。
※SC: Schedule Caste(指定カースト)、ST: Schedule Tribe(指定部族)、OBC: Other Backward Caste(その他後進階級)

BJPは昨年の5州選挙で、従来支持の弱かった下級カーストであるダリット、OBCに力を入れて選挙活動を行ったことが裏目に出て、従来支持の厚かった上級カーストからも支持を得られず厳しい選挙結果となった。そこで上述の上級カーストも対象とした、一般カテゴリーへの追加の留保枠の導入を掲げたのである。尚、本日(1月13日)時点で本法案は既に上院・下院で共に可決されているが、最高裁へ申し立てが行われ判断が待たれている。

今後の選挙戦の行方

BJPは昨年の5州選挙後苦しい状況にある。BJPは今後5月の総選挙へ向けて自身の集票を確固たるものとすべく、一段とヒンドゥー・ナショナリズムと大衆へのバラマキ的な政策を強化してくることが考えられる。よって、改革的な動きは総選挙が終わるまで一時後退するだろう。一方で、コングレスの道のりも容易ではない。現政権否定派として、選挙戦を戦わなければならないが、様々な政党の意見・利害調整に苦労することは間違いない。

来る2月1日にBJP政権として今期最後の暫定国家予算の発表がある。本予算でどの程度集票につながる政策が発表されるのか、多くの利害関係者がその内容に注目している。彼らを落胆もしくは十分に納得させる内容でない場合には、総選挙での議席獲得数に大きく響くことも考えられる。しかし、財政規律の問題も議論されている中、予算の調整は容易でなない。

さいごに

日本企業を含めた外国投資家にとって、2019年5月の下院総選挙は大きな注目を集めるトピックスの一つである。現BJP政権が引き続き政権与党を担うことが可能な議席数を確保できれば、従来の改革路線を踏襲し新幹線などのインフラプロジェクトも順調に進むことが予想される。しかしながら、コングレス政権もしくはその連立政権が誕生する可能性も現時点では否定できず、その場合前政権路線の否定など大きな混乱が生じる可能性がある。引き続き、総選挙までの情勢は注目して追っていきたい。


鈴木慎太郎
鈴木慎太郎


米国公認会計士。SGC(スズキグローバルコンサルティング)代表。2010年5月よりニューデリー(インド)在住。40社以上のインド拠点設立、100社以上のインド・会計税務にかかるコンサルティングに従事。2016年よりスズキグローバルコンサルティングを設立し独立。日本企業向けにワンストップでインドの拠点設立・会計・税務・法務をカバーする総合コンサルティング事務所を経営。 URL: https://www.suzuki-gc.com

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