THE OTAKU議員・第2回 日本のマンガが海外から児童ポルノ扱いされてきた時代をご存知ですか?


こんにちは。大田区議会議員のおぎの稔です。「THE OTAKU議員」第2回となる今回は、世界も巻き込んで、日本のマンガ、アニメの表現の自由を巡る攻防が行われてきた事と今後の懸念についてお話させて頂きます。

さて、日本のマンガ・アニメは「世界に通用するコンテンツ」「クールジャパン」「日本のソフトパワー」と、政治行政の場でも持て囃されてきました。
本当に、そのまま受け止めてもよいのでしょうか?
前回の記事でも少し触れた「DOUZIN JAPAN」への懸念と共に今回は、漫画、アニメを「犯罪化」しようとした動きがあった事をご紹介します。

コミケ:2020年の会場問題が決着 GWに前倒し開催へ(2017年12月23日 manatan web)

「多くの訪日外国人の方々に同人誌を中心とするオタク文化をアピールするとともに、これまでとは異なる空間も創出することで、日本独自のサブカルチャーを結集し、情報を発信していきたい」としている。

日本のポップカルチャーの持つ多様性、表現の幅の広さが、海外で若者を中心に人気を博している事は間違いありません。しかし、残念ながら価値観の違いなどもあり、特に愛好者以外の方からの批判の的となった事も多々ありました。特に「オタク文化」と呼ばれるものは、アクの強い表現、性的な要素を含むコンテンツも多く、日本においても万人に愛されているわけではない事は皆様、ご認識かと思います。

私自身、オタク文化が好きな区議会議員の一人ですが、その経緯を踏まえたうえで情報発信、啓発にも努めなければならないと思っています。

児童ポルノ禁止法について

さて、そんな日本のマンガ、アニメが海外から犯罪の成果物である「児童ポルノ」と同類のものである呼ばれてきていた事をご存知でしょうか?説明に入る前にまず、国内の関連する法律の一つとして「児童ポルノ禁止法」について紹介します。児童ポルノ禁止法は正式名称を「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」と言います。
法の目的は「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を規制し、及びこれらの行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護すること」となっており「あくまで児童の権利を守る事」が目的です。この事は児童ポルノ禁止法の問題を語る上で重要な事です。

この法律において「児童ポルノ」とは、「写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。」と定義されています。

一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態

二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

ちょっと判りにくいかもしれませんが、簡単には、18歳未満の児童と直接、性的に接触するような、また児童に直接性的行為などをさせるような物は違法だと覚えていて頂ければと思います。法律の成立が1999年、その間、改正議論も何度も行われましたが、法整備は進んできませんでした。
先日、有名漫画家が児童ポルノの単純所持によって摘発、書類送検されたことでも話題になりましたが、この単純所持規制は2014年(平成26年)の法改正によって違法化された比較的最近のものです。児童の権利を守る事が目的だというのに、マンガ、アニメの中からエッチな表現を無くさせようとすることの方に執念を燃やす方々が政治・民間・有識者の側にも多くいたため、議論が実在児童の保護から、漫画、アニメをどうするかに流れてしまった事も要因の一つです。またちょうど自民党と民主党の政権交代、政権交代交代のはざまの期間に置かれ、国会での議論が中断され続けてきた事もあります。
日本におけるこの問題の前進、対策は遅れてきました。

外国からの日本のコンテンツへの「児童ポルノ」のレッテル

先ほど述べたとおり、この法律を巡る議論の中で何度も話題になったのが、「単純所持」についてと、「マンガ、アニメ」等を児童ポルノに含むかどうかです。
2014年の改正では与野党ともに議論が分かれる中で、最終的に「実在の児童の被害者のいないマンガ・アニメなどは、児童ポルノの対象に含まない」上での単純所持規制が導入、また児童の保護の部分への言及も前進した改正法案が成立しました。
この議論の背景には、日本の漫画、アニメが児童への性犯罪を助長しているかのような事実に即さない形での海外からの外圧とも言える動きがあり、残念ながら日本国内にもその動きに同調、また海外を使って日本のマンガ、アニメ、引いては日本の文化、日本人の印象を貶めようとした動きもありました。
では、どのような批判を浴びてきたのでしょうか?


児童ポルノ根絶 世界会議 閲覧も漫画も犯罪(毎日新聞 2008年12月2日)

『子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議』では「漫画やアニメなど『仮想の画像や性的搾取の表現』」も児童ポルノに含まれると規定した」とされ、国際会議で漫画やアニメは性犯罪の成果物かのようなレッテルを張られました。

また、2005年3月11日の読売新聞では「児童ポルノ視察で来日したエセルさん」という記事中のアイルランドコーク大学教授のエセル・クエール博士のコメントとして

「日本では、児童ポルノの販売を禁じる法律が1999年に施行されたが、漫画やアニメは対象外。『アニメは日本が世界に誇る文化。アニメ大国の責任として、幼児ポルノを格別厳しく取り締まってほしい』」

と報道、国連からも日本は同様の指摘をされた事があります。

「6.児童の売買,児童買春,及びコミックにおける児童の描写を含む児童ポルノ 等の組織犯罪を根絶するためにとられた措置を,委員会に報告願いたい。」

児童の売買,児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書※第1回報告審査に関する児童の権利委員会からの質問事項に対する日本政府回答(仮訳) 2010年4月

こういった背景にはそもそもマンガ、アニメのような表現、コミックが海外には文化として定着していない事、そうした表現が日本ほどメジャーになっていなかった事、日本のマンガ、アニメのキャラクターの見た目が比較的幼く見える事、また実在児童に対する海外の事件の多さ、被害の深刻さの違いもあったのではないかと推察しますが、日本人で暮らしてきた私からすると理解に苦しむ想いもありました。

最近の出来事では、2017年3月にイギリスBBCの放映した日本の児童ポルノの実態を追ったとされるドキュメンタリー『STACEY DOOLEY INVESTIGATES:YOUNG SEX FOR SALE IN JAPAN』の中でも事実誤認の大きい内容が報道され話題になりました。

では、マンガ、アニメなどの表現物だけが問題とされたの言われれば、そういうわけでもありません。
実在の日本人女性に対する、根拠に乏しい、ある種のヘイトスピーチのような報告も海外の専門家から行われてきました。比較的最近ですのでまだ記憶に新しい方もいると思いますが、日本の女子中高生の13パーセントが援助交際をしていると報告をされたこともありました。

「日本の女子中高生の13%が援助交際」…国連特別報告者の発言に憤りの声続々
(2015.11.10 産経新聞)

国連の「子どもの売買、児童売春、児童ポルノ」に関する特別報告者が、このほど来日した際の記者会見で「日本の女子生徒のおよそ13%が援助交際に関わっている」と発言し、物議を醸している。日本の女子中学生・高校生の多くが援助交際をやっているような印象を内外に与える発言に、日本政府内からも「根拠のない、ひどい話だ」と批判の声があがっている。
発言は児童の性的搾取問題の専門家、マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏が10月26日に東京・内幸町の日本記者クラブで行った会見で飛び出した。同氏は「日本には多くの性的搾取の形態がある」として、違法とされていないものの深刻な性的搾取につながる危険性の高いものとして援助交際を挙げ「女子生徒の間で流行(はや)っており、およそ13%が関わっている」と述べた。

これは、ある意味日本発になってしまうのですが、毎日新聞の海外版サイト「WaiWai」のコラムの不適切記事を巡る問題もありました。日本の女性、また日本の性に関する事、文化などが海外から奇異の目で見られ、時に批判を浴び、事実と無根の誹謗中傷を受けるという事の一端として「オタク文化」叩きの流れもあったのかもしれません。

オタク文化を日本文化として売り出す覚悟と責任

このように日本の特に「オタク文化」とも呼ばれるポップカルチャーは、犯罪の結果である「児童性虐待の成果物」と同列に扱われるという扱いを一部で受けてきました。オリンピック・パラリンピックも絡み、日本のオタク文化を公的機関も協力する形で発信していくとなれば、こうした問題の再燃も当然起きてくるでしょう。そういった批判を受けた時に、しっかりと説明をしていく準備はあるのでしょうか?
日本のマンガ、アニメやオタク文化は思想信条、性的指向、アウトロー、様々な分野の幅の広い表現を下地に広がってきましたが、それは一方では日本の国内だから出来た事であり、海外から見ると考え方の違い、法律、宗教的戒律、歴史問題他、様々な価値観と衝突をする可能性が高いものでもあり、日本の漫画、アニメ、オタク文化のコンテンツは、海外によっては発売禁止のものもあります。

一部の性的コンテンツの盛り上がりから、HENTAI(変態)と呼ばれることもある日本の文化ですが、海外からは同じHでも、HENTAIではなくHANZAI(犯罪)と批判されていた事も認識を必要があるのです。犯罪行為では決してありません。
オリンピック・パラリンピックという一大行事を前に、外国へのアピール、外国人観光客誘致という話が盛り上がってきていますが、こんな時だからこそ、どのように日本として海外にマンガ、アニメのピーアールをしていくのか、一歩立ち止まって考える必要もあるのではないでしょうか?

実在の児童の被害を無くし、被害児童の権利を回復していく事は大切な事ですが、それとマンガ、アニメを規制するがイコールだとは到底考えられません。
そして、海外からの誤解や偏見を基にした、我が国のポップカルチャーへの批判も甘んじ受けてはいけないのではないでしょうか?皆様、如何お考えですか?

※この選択議定書は、性的搾取などから児童を保護するため、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに係る一定の行為の犯罪化、裁判権の設定、犯罪人引渡し、国際協力などについて定めるものです。2000年の第54回国連総会において採択され、2002年に発効しました。日本は2005年に批准しました。

国内でも2010年にこういった騒動がありました。
東京都青少年健全育成条例改正(非実在青少年)騒動について

マンガで振り返る「東京都の表現規制」、だから都議会は重要だ (政治山)


荻野稔
荻野稔

大田区議会議員
非正規雇用、NPO活動で障害者支援に携わりながら、都議会議員秘書を5年務め2015年より現職(1期目) 表現の自由を守る政治運動にも携わり、2010年、石原慎太郎元都知事の知事提案条例の否決に関わる。

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