2019年度インド暫定国家予算案


2019年2月1日、ピユシュ・ゴヤール臨時財務大臣が、現行BJP政権任期としては最後の2019年度インド暫定国家予算を発表。本年5月に下院総選挙を控え、票田となる中所得者・農民向けの各種優遇措置を盛り込み、随所で前コングレス政権と比較しBJP政権が成果を挙げていることを強調した。

予算発表では、同時に10の重点政策ビジョン(社会インフラ、デジタルインフラ、環境対策、地方開発、河川浄化・水源確保、沿岸開発、宇宙開発、食料自給、健康福祉、小さな政府)を掲げ、今後インドが中長期的に5兆米ドル、10兆米ドル経済を目指していくことを述べた。しかしながら、暫定予算は選挙対策予算的な色合いが強く、具体的なビジョン達成のための政策・税制の発表というよりも、集票につながるバラマキ性質の強い発表内容が多かった。

特にその中でも農民向けの施策は多い。農民は総人口の6割程度を占め、インド経済に大きな影響力を持っている。2022年がインド独立75周年となる節目の年を迎えるため、現政権はそれに向けて農民所得を倍増させるというスローガンを掲げ、積極的な支援策を打ち出している。2018年度は既に22の作物に関して、耕作にかかった費用の150%での買取を保証する“Minimum Support Price – MSP“を定めている。“PM-KISAN”というプログラムでは、耕作可能農地が2ヘクタール以下の農家に年額6,000ルピ―の補助金を交付する。驚くべきなのは、その対象となる農家が1億2万世帯にも上るということだ。結果として7,500億ルピーという多額の追加予算を計上している。その他、農民向けの貸付に対し2%の利子の補助を行うことなども盛り込まれた。

個人所得税では、大幅な改正はなかったが中所得者向けの減税策が発表された。所得50万ルピー以下の納税者については、実質所得税負担がゼロになるようリベート額が12,500ルピーまで引き上げられた。また、基礎控除額が4万ルピーから5万ルピーへ引き上げられ、3,000万人余りの給与所得納税者が恩恵を受ける予定である。

現在、インドでは税務申告、税務調査及びその他の問い合わせは電子化されている。各税務当局のポータルサイトを通じて、納税者がオンラインでログインし手続きを行えるようになった。今後所得税の申告書は24時間以内に処理され、還付処理も同時に行われるようにする構想も発表された。また、 無作為に抽出される税務調査対象企業の調査は、今後2年間で匿名の税務担当官により行われるようになる予定である。

2019年度財政赤字はGDP比3.4%を予定しており、2018年度の3.3%を上回る。従来の予定では、財政赤字を圧縮し3%以下にする見通しであったが、むしろ多くの財政支出を伴うバラマキ政策に加え赤字幅が拡大する予算発表内容に、各所から疑問の声が上がっている。

“PM-KISAN”プログラムの初回補助金の支払いは、2019年3月までに行われる予定である。5月の下院総選挙を控え、農民以外の中所得者向けの減税策がどの程度有権者の心理に影響するかが注目される。


鈴木慎太郎
鈴木慎太郎


米国公認会計士。SGC(スズキグローバルコンサルティング)代表。2010年5月よりニューデリー(インド)在住。40社以上のインド拠点設立、100社以上のインド・会計税務にかかるコンサルティングに従事。2016年よりスズキグローバルコンサルティングを設立し独立。日本企業向けにワンストップでインドの拠点設立・会計・税務・法務をカバーする総合コンサルティング事務所を経営。 URL: https://www.suzuki-gc.com

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