<追加有>日本政府の公式見解を否定するブルームバーグ記事?


筆者が下記記事を書いた後に、The South Korean Ministry of Foreign Affairs confirmed Tuesday that it had received Japanese requests for an apology Sunday and Monday, but didn’t immediately respond to Abe’s latest remarks. の該当箇所がブルームバーグ記事から削除されました。記事を見る限りは韓国の反応によるものだそうです。

なぜそのようなあからさまな嘘が掲載されたかの経緯は不明です。これはあくまで推測ですが、ブルームバーグが何も取材せずに書くインセンティブはないので、韓国政府当局が嘘をついて、それがバレて指摘されたので修正したのだと思います。

以上のように、明確な嘘も含めて徹底的にプロパガンダが流布されるのが国際政治だと思います。このようなデマ情報(好意的に見るなら誤情報)に対して逐次細かく訂正をしていく必要があり、丁寧な無視、のような優雅なことをやっている暇はありません。日本政府は韓国政府の発信する情報に常にカウンターできる体制を構築して対抗していくべきです。

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Shinzo Abe at LDP’s annual convention on Feb. 10.Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

安倍首相が国会で、菅官房長官が記者会見で、日本政府が韓国に対して天皇陛下への無礼な発言に関する謝罪と撤回を要求していた旨を明らかにしたとのことだ。非常に結構なことであるし、日本政府は最低限のことを行っていると評価したい。(もちろん、レーダー照射問題の時に制裁しておくべきだったと思うが。)

さて、この謝罪と撤回要求に関連する記事として、

ブルームバーグが2019年2月12日10時42分の記事(Abe Says Japan Wants Apology for South Korean Remarks on Emperor)で、

“The South Korean Ministry of Foreign Affairs confirmed Tuesday that it had received Japanese requests for an apology Sunday and Monday, but didn’t immediately respond to Abe’s latest remarks. On Sunday, Japanese Foreign Minister Taro Kono had cautioned Moon against making divisive remarks, without publicly demanding an apology.”

と書いている。韓国政府は日本政府から謝罪を求める抗議は日曜日(10日)と月曜日(11日)に受け取ったと述べている。そして、ブルームバーグは日曜日には河野太郎外務大臣は公式に謝罪を求めることなく文議長に注意を促すだけだったとしている。

一部の日本人の中には河野太郎大臣のダバオでの記者会見で抗議として満足した人も居るようだが、海外メディア(事の発端となった)は日本の外務大臣の姿勢をこのように弱腰にも見えるように明記し、それと比べて安倍首相が日本政府が韓国国会議長に謝罪と撤回を求めたことを明らかにしたことをニュースとして報じている。

さて、この記事を読んで筆者は1つだけ「おや」と思った点がある。

それは菅官房長官が同記事が配信される約1時間前に同日12日に行われた記者会見で、

8日に外務省の局長級で申し入れをし、翌9日には長嶺安政・駐韓大使から韓国外交省の第1次官に改めて申し入れた。

と述べた日付と韓国政府が抗議を受け取った日付がずれていたことだ。(一応、ブルームバーグの記事中でも、安倍首相がほぼ同様の抗議を文議長の発言を読んで直ぐに行ったと述べた旨に言及している。)

時差もない隣国のやり取りでそのようなタイムラグが生じるものかは、外交事務手続きに詳しくない筆者はあずかり知らない。しかし、公開された情報を並べただけだと、日本政府が8日・9日に申し入れをした内容を、韓国政府は10日・11日に受け取ったということになる。

実際の申し入れ日と受け取り日に事務上のタイムラグがあるのかもしれないが、重要な抗議の受け取りに2日も日付がずれるような扱いにしていること自体が問題だと思う。そして、その場合でも日本政府はブルームバーグに同記事中に日本からの申し入れ日を付記するべきと苦言を呈すべきだ。

なぜなら、8日に配信された当初の文議長の発言に対する抗議(謝罪と撤回含)が韓国政府が主張するように10・11日に行われたかのような報道では、問題発生時の8日・9日は日本政府から何も抗議は行われていなかったことになるからだ。その結果として、日本政府が10日に一旦形式上の抗議をした上で、同日のダバオでの河野首相の発言に対する国内世論からの批判を受けた結果、11日に慌てて韓国に謝罪と撤回を改めて抗議したように時系列上整理できてしまう可能性がある。

これは8日即日に毅然とした抗議を行ったと主張する日本政府にとっては不名誉なことだと思う。最悪の場合、ぱっと見だけでは、上記のブルームバーグの文章構成では10日段階では河野大臣が謝罪を公式に求めていなかったが、後になって日本が韓国に謝罪を求める抗議を行っていたかのように見せている印象を与えてしまうかもしれない。

このようなことは非常に細かいことであるが、事の発端となったのがブルームバーグであるだけに日本政府としては厳格に対応したほうが良いのではないか。仮に韓国政府が嘘をついているなら、その嘘を訂正させるのも日本政府の地味な仕事の1つとして重要だろう。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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