国会法を改正せよ、韓国制裁法案を作れない理由


【出典】フリー素材、ぱくたそ

国会法56条は、法案提出権について、

「議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」

と定めている。自民・公明両党が衆参両院で大勝している現在、与党を除いて法案が提出できる会派は下記の通りだ。

<衆議院>
〇予算付 ・・・立憲民主党・無所属フォーラム
〇予算無 ・・・立憲民主党・無所属フォーラム、 国民民主党・無所属クラブ

<参議院>
〇予算付 ・・・立憲民主党・民友会・希望の会、 国民民主党・新緑風会
〇予算無 ・・・日本維新の党・希望の党、日本共産党

そして、各会派に所属している議員は自らの所属会派の機関承認がなければ慣例上事務局が受け付けない、というオマケルール付きだ。

韓国に対する制裁機運が盛り上がる我が国の現状であるが、与党が動かない場合に実効性がある予算付きの法案を提案できるのは衆議院は立憲民主党・無所属フォーラム、参議院は立憲民主党・民友会・希望の会、 国民民主党・新緑風会、のみである。また、予算の伴わない法案についても会派承認がいるため、本件のような賛否が分かれる内容の法案は提出されることはないだろう。

参議院の維新の会は100本以上の法案を提出して全て審議未了廃案に追い込まれた実績があり、もしかしたら同党が法案1本に絞って政局上の争点化すれば議題に上がる可能性もゼロではないがそれは望み薄だろう。

そのため、現状では永遠に国会で韓国に対する制裁法案に関する議論は行われない見込みだ。

我が国の立法府は国会法の規定と現在の議会構成によって国民が望んでいる可能性がある制裁法案の審議が執り行われない状況となっている。これはルールと言えばルールなのだが、果たして妥当なものと言えるだろうか。

国会法は度々改正されているきているが、日本では議員立法が極めて蔑ろにされて閣法中心の立法作業がなされてきたことも影響し、議員の法案提出権についてはほとんど手つかずの状態で放置されてきた。

比例代表は存在しているものの、小選挙区制度が導入されて二大政党を意図した選挙法改正があったにも関わらず、この制度を維持していることは極めてナンセンスと言える。現状の国会法の規定は立法府が自殺をするための法律だ。大半の野党議員は立法府に存在している存在意義の重要な部分が失われているのだから。

ちなみに、国立国会図書館及び立法考査局の調べによると、先進国では米国・英国・フランスでは議員1名から法案提出権があるとのことだ。(主要国議会の法律案提出手続及び法律の成立状況(資料))立法府の構成員として基本的な権利であり、1人から法案提出権があるのは当然だろう。

現在、多くの国民はなぜ制裁法案に関する議論がまったく行われないのかを不思議に思っているだろう。それは上記の経緯から当然のことであることがお分かりいただけたものと思う。

その原因は日本の立法府が国会法の設計ミスから機能停止に近い状態となっていることにある。国会議員のうち最低1名が法案審議の必要性を感じたとしても、それを国会に提出する権利すらないのが日本の現状である。

本来は通年国会にするべきなど他の論点もあるものの、まずは1名からの法案提出権回復など立法府としての大前提からスタートするべきだろう。

通常の場合、国会の運営など全く興味がない話題であろうが、本件を通じて現在の国会の欠陥を多く人が知ることになれば、それは1つの良い機会になったと言える。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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