官民比較による地方公務員給与・退職金算出は妥当か


東京23区・区長会が区職員の退職手当を引き下げる提案を職員労組らに対して行いました。組合側は当然に退職金引き下げに対して反発をしており、4月以降に予定されている区議会第1回定例会での見直し条例の提出までに政治的な綱引きが行われる状況となっています。

区職員の退職手当の平均3.24%(約75万円)引き下げは国家公務員の退職手当額を平成30年から平均3.37%(約80万円)引き下げる見直しに準拠した処置であり、社会一般の情勢に合わせた措置となっています。国家公務員の退職金引き下げは人事院の官民比較調査に基づく結果を反映したものとなっています。

23区内には日本の屋台骨を支えるグローバル企業の本社が集中しており、それらを含めた地域内の官民給与格差に基づいて23区職員の退職金額を検討することはナンセンスなことは言うまでもありません。労組側は特別区では民間企業の退職金額の調査が行われていないと退職手当引き下げに反発していますが、国家公務員に準拠した形で退職手当を便宜上引き下げることは妥当であるように思われます。

また、民間企業側は熾烈な競争による企業自体の新陳代謝や社内生産性を高める努力が常に行われており、数年前と同じ給与であったとしても総体としての生産性は確実に向上しています。一方、区組織は何年経っても決して潰れることはなく、民間と同程度の設備更新・業務革新を行って生産性を向上させているとは思えません。

したがって、両者の給与額・退職金額の比較を基に地方公務員の給与額・退職金額を算出する行為にはそもそも無理があります。

官民比較に基づく地方公務員の給与・退職金算出方法は、民間企業と行政機関の生産性向上を同一視する非現実な前提によって成り立っており、ドッグイヤーと呼ばれる技術革新速度が向上して組織体ごとの生産性に決定的な差異が生まれる時代において合理性を欠く仕組みであると考えます。

官民比較による給与額・退職金額算出という時代遅れのスキームに代わる新しい給与決定方式の検討が必要であり、時代に合わせた公務員給与の算定方法の見直しが求められています。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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